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ショートシナリオの館

ボケに抵抗するため、日常生活の中から思いつくままに書いています。月2回・月曜日の投稿を目指します。

心浮かれるサクラの季節

2015-03-30 08:21:48 | 日記


桜は北半球の温帯に100種ほどの野生種が分布していて、このうち日本で見られる
のは10種。交配種は野生種の「オオシマザクラ」を元にしたものが一番多く、その他
の組み合わせを含めると日本には600種類以上の桜があると言われています。
今回は私なりの鑑賞ポイントと、最近読んだ興味深いレポートの要約を記します。

1.私の鑑賞ポイント

(1)ソメイヨシノ:お花見の定番
    エドヒガンとオオシマザクラの交配種であるソメイヨシノは日本にある桜の8割を
    占めると言われ、お花見の定番木。成長が早くて大木に育つ。木全体を包み込
    むかのように咲く花は見る者の気持ちを明るくしてくれる。クローンだから同じ気
    象条件の中では、ほぼ一斉に花が咲き、そして一斉に散りゆくソメイヨシノ。
    パッと咲いてパッと散る潔さは誠に魅力的である。公園や土手、さらに沿道で目
    にする満開の桜並木の壮観さ、豪華さは圧巻である。まさに「春爛漫」を実感さ
    せてくれる風景だ。接木で増やすため病気になりやすいこともあり、寿命は約60
    年とされる。戦後生まれのソメイヨシノの行く末が気になるところだ。

(2)人との関わり
    各地にある桜は、その土地の人々の強い愛着に支えられて生きている。ダムに
    沈む運命にあった「荘川桜」を移植によって生き延びさせた話、太平洋から日本
    海まで桜の街道を作ろうと植え続けた「佐藤良二さん」の話。
    地域の人と桜の関わりを知ると、その姿を眺める目も変わってくる。校庭に植えら
    れた桜が心の片隅に育んだ、それぞれの小さな物語は巣立って行ったかつての
    生徒たちの胸の内に、今も生き続けているのではないだろうか。

(3)生命力
    エドヒガンは特に長寿で、樹高20m~30mの大木になるものがあり、その風雪
    を耐え抜いた巨体に見事な花を咲かせる生命力には「すさまじさ」さえも感じる。
    私も度々訪れている山梨県の「山高神代桜」は樹齢2000年、岐阜県の根尾谷
    の「淡墨桜」は樹齢1500年と言われ、日本で最も長寿の桜たちである。
    人類が何代もの世代交代をしているというのに、彼らは一代で、まだ現役である。

(4)一本桜:孤高の魅力
    福島県「三春の滝桜(シダレザクラ)」を始め、岩手県「小岩井農場の一本桜
    (エドヒガン)」、千葉県「吉高の大桜(ヤマザクラ)」、山梨県「慈雲寺のイトザク
    ラ(ウバヒガンの変種)」など人気の高い一本桜は各地に枚挙にいとまがない
    ほど存在する。孤高の巨木に対峙する時、その神々しさに思わず手を合わせた
    くなってしまうのは私だけであろうか。

(5)忘れてはならないヤマザクラ
    野生種のヤマザクラが、若葉色に染まり始めた山のそこここに白い模様を描き
    出す様(さま)は春の象徴的な景色でもある。花と葉が同時に出るのが特徴で、
    登山道で出会うヤマザクラには清楚で自然な美しさを私は感じるのである。

2.昔、桜は秋に咲いていた・・・東京農業大学レポートの要約

   桜はヒマラヤが原産地で、ネパールの寒暖差の少ない地方には「ヒマラヤザクラ」
   という秋に咲く桜がある。この桜と日本で秋に咲く桜(冬桜、十月桜など)が遺伝的
   に近い関係にあることが分かった。この事から、秋に咲く桜は突然の小春日和やホ
   ルモンの変化による「狂い咲き」ではなく、「先祖返り」であること。更に、春に咲く
   ようになったのは中国、台湾、日本へと北上していく過程で、厳しい気候を乗り切る
   手立てとして、冬場に葉を落として活動を止める「休眠」を体得した結果であり、これ
   により気温が上昇する春に花を咲かせるようになった。

膨らみ始めた蕾を見ながら「まだか、まだか」と待ちわびる中、開花情報に心が浮かれ、
満開を喜び、花吹雪の中に立ち、最後は散り敷いた花びらの絨毯の上を歩く。
桜の季節を迎えると否応なしに心が騒ぐ。さて、今年はどこの桜に会いに行こうかな? 

ケロとチュー太郎のタッグ大作戦

2015-03-23 08:23:21 | 日記



春です。冬眠を終えて目を覚ましたガマガエルのケロくん。地上へ出て行く前に、
ヘビのヌルから自分や仲間たちを守る方法はないものかと考えました。
そして、この森を知り尽くしている赤ネズミのチュー太郎の力を借りることを思いつ
たのです。チュー太郎の仲間と自分の仲間が知恵と力を合わせれば、ヌルをやっ
つけられるかもしれないと考えたケロは直ぐにチュー太郎を探し始めました。
数日後、ケロは池のほとりでチュー太郎を見つけました。

ケロ :チュー太郎さん、久し振りですね。やっと冬眠を終えて地上に出てきましたよ。

チュー:オウ、出てきたか。今年も池のほとりで賑やかな合唱が聞けるな。

ケロ :早速ですが、ヌルを見かけませんでしたか?

チュー:いや、まだ見かけないな~。でも、ケロが出てきたということは、もうヌルが出
     て来ていてもおかしくないな。そろそろミミズや昆虫などが豊富になり、ヌル
     のような危険な奴も活発に動き始めるぞ。暖かくなってくることがいいのやら、
     悪いのやら。冬眠から目を覚ましたヌルの事を考えると、ああ、ヤダ、ヤダ。

ケロ :チュー太郎さん、相談があります。ヌルがこれから僕たちカエルやあなたたち
     ネズミを襲わなくさせる方法を一緒に考えてくれませんか?

チュー:「襲わなくさせる」って、そりゃ無理だろうよ。そんな方法があれば僕たちは安
     心して食べ物探しができるから、うれしいけどな。ヨシ、僕も手伝うぞ。

ケロ :まず、ヌルの弱点を教えてくださいよ。アイツは水の中も泳げるし、木にも登る
     し、枯れ草の山に隠れて急に襲ってきたり、擬態で騙したりすることもできる
     でしょ。僕にはヌルの欠点を全く見つけられないんですよ。

チュー:確かにその通りだ。ヌルに弱点なんてものがあるのかな?まず、体に弱点が
     あるかどうか考えてみよう。奴は僕たちのような手足を持っていない。この点
     は使えないかな?
     そうだ!ヌルは体が大きくなるたびに、着ている皮を脱ぐ「脱皮」という行動を
     とるんだ。この脱皮の最中だけは、絶対に我々を襲うことはできないんだ。
     この時が唯一のチャンスかもしれないな。

ケロ :へ~ェ、脱皮中は無防備だということですか。さすが、チュー太郎さん。
     よく観察していますね。

チュー:ヌルの行動は我々にとっても死活問題だからね。脱皮の最中は無抵抗だとい
     うことがヌルの弱点だと思うが、どうやって攻撃したらいいのかが、わからな
     いよ。

ケロ :もしヌルが脱皮できなくなったらどうなりますか?

チュー:多分、苦しんでもがくんだろうな。悪くすると死んでしまうかも知れないね。
     そこは見たことがないから何とも言えないな。

ケロ :でも、そこに賭けるしかないんじゃないかと思うのですよ。脱皮をさせないよう
     にしたら、降参して僕たちの言うことを聞くと思いませんか?

チュー:確かに、脱皮に失敗することはヌルにとって大きな痛手になるかもしれないか
     らね。でも、どうやってヌルが脱皮しているところを見つけるか。
     どうやって脱皮の邪魔をするかが問題だね。

ケロ :チュー太郎さんの仲間に声を掛ければ、脱皮を始めたヌルを見つけることがで
     きるんじゃないですか。脱皮を妨害するいい方法があります。任せてください。

こうしてヌル退治のためにカエルとネズミの共同作戦が組まれました。それから程なく
して、チュー太郎の仲間から、池のほとりでヌルが脱皮を始めるかもしれないという情
報が入りました。直ぐに勇気のあるカエルとネズミたちが集められ実行に向けた会議
が開かれました。ケロは自分の考えをみんなに伝えました。
みんなも納得です。いよいよ作戦開始です。

チュー:サァ、ヌルが脱皮を始めたぞ。今なら無防備だから近づいても襲われる心配は
     ない。ヨ~シ、みんな!始めるぞ!!

ケロ :チュー太郎さん、皆でヌルの体に乗っかり、器用な手を使って、皮が今以上に
     破けないように押さえつけてください。僕たちは自分の体から出るガマの油を
     ノリのように塗って、皮が脱げにくくなるようにします。

チュー:よし今だ!全員でヌルの体に上って、皮が脱げないように抑えつけろ。

ケロ :ヌルの動きが止まったぞ。僕たちも全員でガマの油をたっぷり塗りつけろ。

ヌル :ナ、ナッ、何だ、お前たちは!俺の脱皮を邪魔しようというのか。
     やめろ!脱皮できないと俺は大きくなれないし、下手をすると死んでしまうで
     はないか。やめろ!

ケロ :そうはいかないよ。これまでに何度も僕たちの仲間を襲ってきただろう。
     今日はこちらが攻撃する番だ。

チュー:お前には我々の仲間もいっぱいやられた。今日はこれまでの恨みを晴らすぞ。

ヌル :コラ、どけ!降りろ!何を塗っているんだ。ヤヤ、皮が脱げなくなったぞ。
     このままでは死んでしまう。こんなに大勢で体を押さえつけられたら動けない。
     ダメだ。もう、降参だ。何でも言うことを聞くからどいてくれ。脱皮させてくれ。

ケロ :それでは、これからはカエルやネズミを襲わないと約束するか?

チュー:ヘビは何度も脱皮して大きくなることを知っているんだぞ。今、嘘をついても、
     次の脱皮の時にはもっと大勢で押さえつけて、今以上に脱皮の邪魔をするか
     らな。

ヌル :分かった。降参だ。決して君たちを襲わないことを約束するよ。だから、早くどい
     てくれ。苦しくて、苦しくてたまらないよ~。本当に約束するよ。もう襲わない。

ケロ :ヌルが約束したぞ。みんな、もういいだろう。押さえつけるのをやめよう。
     ガマの油もみんなで舐めて、早く取り除いてやってくれ。

チュー:みんな、もういいぞ、ヌルの体から離れてやってくれ。

こうして、自由になったヌルはやっとの思いで脱皮を終えると、「これからは何を食べて
生き抜いていけばいいんだろう?」と考え込みながら、スゴスゴ、ニョロニョロと森の中
に消えて行きました。
チュー太郎たちのチュー、チューという勝利の雄叫びとケロたちのゲロゲロという歓喜
の歌声が森の中に響き渡りましたとさ。


梅の木と動物村の仲良し3人組

2015-03-16 08:28:53 | 日記





動物村のはずれに大きな梅の木がたくさん生えています。春の到来を告げるだけでは
なく、その熟した実は、ほんの短い期間ですが、動物たちにとって珍しい食べ物になっ
ています。今年も白・赤・ピンクの花をいっぱい咲かせ、周りには芳しい香りが漂ってい
ます。そこに仲良し3人組が集まっていました。

ミミ :アァ~、いい香り!私、この香りが大好きよ。満開に咲いてくれて嬉しいな。

ポン吉:今年の「梅の実落とし」は僕たちのグループが担当することに決まったん
      だってね。

コン太:ウン、そうらしいよ。僕たちがしっかりと役に立つんだってことを、大人たちに
     示す絶好のチャンスだ。猿のエン坊が上手に木の枝を揺すってくれるから、
     ひとつも残さずに収穫できるさ。

ミミ :そうね。エン坊がいるから心強いわ。話は変わるけど、疑問があるのよ。
     梅の花が咲いている時期は蜂さんを見かけないのに、どうして実ができる
     のかしら。

コン太:花の妖精たちに呼ばれた蜂たちが花粉を運んだ結果、実ができるんだと
     教えてもらったけど、蜂がいなければ実ができないはずだよね。
     確かに不思議だな。

ポン吉:僕にもわからないな。あとで長老に聞いてみようよ。

タイミイングよくやって来た長老を、3人組は呼び止めました。

ミミ :ネェ、長老。今、梅の花が満開だけど、蜂さんたちがいないわ。どうやって花粉が
     運ばれて梅の実ができるのか、教えてくださいな。

長老 :いいところに気がついたな。ここは梅林と言ってな、たくさんの梅の木がある
      じゃろ。よく見てごらん。色や大きさが違う花を咲かせた梅の木が並んでいる
      ことに気付かないかい?一ヶ所に密集して、いろんな種類の梅の木が生えて
      いることが大切なんじゃ。
      梅は自分とは違う種類の花粉と結ばれて実ができるのじゃが、その花粉は
      主に風が運んでくれるのさ。ここは昔、人間たちが住んでいた場所じゃ。
      しかし、ず~っと前にどこかへ行ってしまって、誰もいなくなったんじゃ。
      だから、わしらがこうして悠々と暮らせる場所になった。ま、言ってみれば、
      人間たちの置き土産である梅林がわしらの役に立っておるということじゃな。

ポン吉:風が花粉を運んでくれるんだ。花の妖精たちの音楽で蜂を呼ぶ必要はないん
      だね。

長老 :いや。君たちが気付いていないだけで、体の小さいハチたちはもう飛んでいるよ。
      ただ、この時期は蜂の数が少ないから、どの程度、貢献しているかはわからな
      いな。それに、鳥たちも飛んでいるぞ。ホラ、きれいな緑色の鳥が梅の花の中
      に頭を突っ込んでいるのが見えるかな?あれはメジロという鳥で、梅や椿の花
      が好きらしいな。鳥だって蜂と同じように花粉を体につけて動き回り、花粉を運
      ぶんじゃ。

コン太:ヘェ~、蜂だけでなく、風や鳥も花粉を運ぶのか。初めて知ったよ。

長老 :ところで、どうして君たちはここにいるのかな?

コン太:今年の「梅落とし」の当番になるらしいので、花付きの様子を見に来たんだ。

長老 :そうか、よろしく頼むぞ。ひとつ注意しておくが、梅の実が青いうちは決して食
     べてはならんぞ。種が十分に成長するまで鳥や動物に食べられるのを防ぐ
     ために、毒を持っているからな。
     種がしっかりと成長した時には実が熟して色が変わる。それが「もう食べても
     いいよ。食べたあとはフンと一緒に排泄して種を撒き散らしてくれ。」という合
     図なんだ。ただし、食べ過ぎてはイカン。絶対に忘れるなよ。

長老が立ち去ったあと、入れ替わりに猿のエン坊が目をこすりながら、近づいて来ます。

ミミ :アラ、泣いているのかしら?エン坊さんどうしたの?

エン坊:やあ、3人組も来ていたのか。別に泣いているんじゃないんだ。目が痒くてね。

ポン吉:そういえば、去年も目を真っ赤にして痒がっていたね。今年も始まったのかい?

エン坊:そうなんだ。この時期だけは、目ん玉を取り出して洗いたい気分だよ。今年は
     「梅の実落とし」の当番だって聞いたから、気になって来てみたんだ。
     花の数が多ければ梅の実もいっぱいできるだろうからね。3人組も様子を見に
     来たのかい?

コン太:ウン。ちょうど今、「僕たちのグループにはエン坊がいるから、ひとつ残らず落と
     せるね。」って、話していたところだよ。頼りにしているからな。

エン坊:木を揺するのは任せてくれ。この痒さも収穫の頃には収まっているはずだ。
      たくさんの花が咲いているから実もいっぱいできそうだね。楽しみだな~。

ミミ :チームワークで頑張りましょうよ。エン坊、早く痒みが収まるといいわね。

エン坊はひとしきり梅の花の様子を見たあと、目をこすりながら帰って行きました。
3人組も帰ろうとした、その時、少し離れた場所の土が盛り上がったと思ったら、
ポコポコと小山を作りながら何かが近づいて来ました。

ポン吉:何だ、何だ?土の盛り上がりが、ドンドンこっちに向かって来るぞ。

コン太:あれはモグラさんだよ。春が近づいたから活発に動くようになったんだね。

ミミ :ア~、ビックリした。アラ!顔を出したわよ。

モグラ:君たちの声が聞こえたから、ちょっとだけ顔を出してみたよ。何をしているの?

ポン吉:梅の花がどれくらい咲いているかを確認しがてら、香りを楽しんでいるんだよ。

モグラ:香り?クンクン、確かに匂う。だけど変な匂いだな。春が近づいて土の温度が
     上がってくると、土の中は素敵な香りが漂うんだよ。
     そっちの匂いの方が断然イイね。

コン太:梅の香りより土の香りの方がイイだなんて、変な奴だな。

ミミ :モグラさんはずっと土の中で生活しているから、香りの感じ方が私たちとは違う
     んじゃないのかしら。「変な奴だ。」なんて失礼よ。

ポン吉:アッ、アカネズミさんだ。今、モグラさんの掘った穴に入ったぞ。

モグラ:アイツは僕が掘った穴を勝手に利用する「チャッカリ屋」なんだ。
     ちょっと行って文句を言ってくるよ。じゃ~な。

ミミ :じゃ~ね。アラアラ、慌てて行っちゃたわ。私たちも帰りましょ。

数ヵ月後、梅の木にはどれくらいの梅の実が成るのでしょうか?
よく熟してから食べてね。

日本橋界隈の歴史探訪

2015-03-09 09:15:36 | 日記



首都圏に住んでいる高校時代の同級生3人が喜寿を迎えたことを期に、魅力に富
んだ歴史探訪の街歩きをすることになりました。
その第1回目の場所として選んだのが「日本橋」。

ノブ : 今日は日本銀行の内部見学が目玉だ。事前申込みをしておいたから、期待
    してね。

ヒデ : 集合場所を「橋」の中央に決めたってことは、橋の説明から始めるのかい?

ノブ : その通り!最初にここに橋が架けられたのは1603年。家康が江戸に幕府を
     開いた一ヶ月後だったから、江戸の町にとって、いかに重要な橋だったかが
     分かるよね。現在の橋は花崗岩製の二連アーチで、明治44年に架けられた
     ものだよ。

ヒデ : ってことは、関東大震災や第二次世界大戦にも耐え抜いたって事?スゴイな。

ヤス : 初めて聞く話だ。明治時代の技術力って素晴らしかったんだね。僕はあそこ
      にあるデパートで何度も買い物をしているけど、歴史という視点でこの街を見
     ることは無かったよ。今日はいろんな事を教えてもらえそうだな。

ノブ : この獅子と麒麟の像がカッコいいだろ。獅子は江戸の守護、麒麟は繁栄のシン
    ボルらしいよ。江戸時代は五街道の起点、その後は全国の道路の起点になっ
    ていることはよく知られているよね。ちょっと、ここから上を見て欲しいんだ。

ヤス : オ~、あれは何だ?高速道路の上下線の間に空間があって、そこに塔のよう
     なものが立ってるじゃないか。支えている4本の脚みたいなものの長さが微妙
      に違うね。

ヒデ : いかにも、苦労してくっつけたって感じだな。

ノブ : 今度は、その真下を見てごらん。丸いプレートが見えるかい?

ヤス : 車の往来が激しくて見にくいけど、アッ、見えた、見えた。

ノブ : あれが「日本国道路元標」のプレートなんだ。向こう側の橋のたもとにレプリカが
     あるから、後で見に行こう。こちらの橋の袂には「日本橋魚河岸跡」の石碑があ
     るよ。江戸時代から関東大震災までの300年間、ここに「朝だけで千両の金が
     落ちる」と言われた魚河岸があったんだ。今は築地で、そのうち豊洲に移転す
     るけどね。

ヒデ : この辺りに鰹節、海苔、佃煮を扱う老舗が多いのは魚河岸があった名残りなん
    だな。

ノブ : ウン。この周辺は見所が多いから、今日は橋の北側エリアの探訪だけに絞るよ。

3人は橋を後にして、老舗が軒を連ねる「むろまち小路」にやって来ました。

ノブ : この小路には鰹節の「八木長」と「大和屋」、練製品の「神茂」、佃煮の「日本橋
    鮒佐」、海苔の「山本海苔店」、書画用品「有便堂」など創業100年~300年とい
    う老舗が並んでいるね。
    ホラ、ここには「三浦按針」の屋敷跡を示す石碑がある。彼は家康のもとで武士
    になったイギリス人だよ。中央通りにある「三越」は1673年(342年前)創業だ。
    時代の変化に適応しながら生き延びるのは並大抵のことではないよ。経営者た
    ちの努力の賜物だな。

ヒデ : 「三越」は江戸時代でも奉公人が600人もいて、同時代では世界一のスケール
    だったらしいね。

ヤス : あそこにあるライオン像は戦火を免れた古いものだと聞いたことがあるよ。

ノブ : 1914年製で、ロンドンにあるネルソン提督像を囲むライオン像がモデルらしいね。
    それにしても、あの垂れ幕は傑作じゃないか。「越後屋 お主も春よのう」だってさ。

ヤス : ハハハ、お見事じゃ。

日本銀行本店にやって来ました。3人とも初めての訪問です。受付を済ませて建物内に
入った一行はガイド嬢の案内による銀行内の見学を終えて、満足そうに建物から出てき
ました。

ノブ : 業務紹介のビデオとガイド嬢さんの説明がわかりやすかったから、日本銀行の役
    割が理解できたね。僕は銀行と官庁だけが利用できる銀行だと思っていたけど、
    交通違反金などを国へ収める時には、一般の人でも利用できるってことを初めて
    知ったよ。

ヒデ : この建物を設計した辰野金吾さんは東京駅も手がけたんだよね。東京駅・丸の内
    側のドームとそっくりなドームが銀行内にあったけど、本当に素敵なデザインだな。

ヤス : 赤い絨毯、旧式なデザインのエレベーター、歴代総裁の肖像画など歴史を感じさ
    せる調度品と重厚感漂う石造りの建物内部も見ごたえがあったよ。それに当時使
    われていた金庫の中を覗き見ることができたのも良かった。いざという時は保管さ
     れている札束が川の水で満たされる設計になっていたのには驚いたね。
    すごいのは金庫の扉で、行員二人がかりじゃなきゃ開けられない程の重さと大き
    さだったね。堅牢さと危機管理の行き届き方はさすがだな。
    コンピューター時代になって、あの金庫に現金を保管する必要がなくなったから、
    金庫の中を見せてもらえるようになったんだね。

ノブ : 僕は1億円の札束や15kgの金塊を持ち上げたのが一番印象に残ったね。それに
    しても見学者が多かったな~。特に外国の方が多いのにはビックリしたよ。

次に、3人は常盤橋を渡って「渋沢栄一の像」の前にやって来ました。

ノブ : 渋沢栄一は日本の「資本主義の父」と言われた人で、明治6年に日本初の銀行
    「第一国立銀行(現みずほ銀行)」を設立したんだ。彼の評価が高いのは実業界
    に身を置きながら「私利私欲を追わず公益を図る」という考えを大切にして、渋沢
    財閥というものを作らずに、社会貢献に熱心だったからだと言われている。
    彼は多くの地方銀行の他に東京ガス・東京海上火災保険・王子製紙・東京証券
    取引所・キリンビール・帝国ホテル・東洋紡績など多様な企業の設立に関わり、
    その数は500社以上らしいよ。

ヒデ : 「STAP細胞はあります」で有名になった理化学研究所の創設者のひとりだよね。

ノブ : もとは幕臣で、明治になって大蔵省に入った人だと聞いたことがあるよ。

その後、江戸通りに出て、関東大震災後の復興小学校である「常盤小学校」に着きま
した。

ノブ : 昭和4年に震災復興事業として建てられた鉄筋校舎だ。公園を隣接させて、装
    飾にもこだわったところに、震災復興後の都市造りについての考え方がよく出
    ているよね。
    これから行く十思公園も旧十思小学校に隣接して作られた公園なんだよ。

ヒデ : 震災復興のシンボルとして、立派な小学校作りに取り組んだんだね。

3人はその後、点在する老舗と明治から残る看板建築の傑作を見ながら、「時の鐘通
り」を歩いて十思公園の「時の鐘」の下に着きました。

ノブ : 江戸時代の「時」は江戸城で太鼓を打ち、それを聞いて、この鐘を打って市民に知
    らせたそうだよ。移設されたけど、鐘自体は当時のものだね。今でも大晦日の夜に
    は、この鐘を撞くんだってさ。
    この辺りは小伝馬町処刑場跡で、1859年の安政の大獄事件では高野長英・吉田
    松蔭など50余名が獄に収容されていたんだ。

第1回目の友だちウォークは約1万歩でした。これまで歴史探訪にあまり興味がなさそう
だったヤスも次回が楽しみになってきたようです。次の訪問先はどこになるのでしょう。

雛人形たちの祈り

2015-03-02 08:38:53 | 日記



茶箱の中に収められていた雛人形たちが一年振りに取り出される日がやって来ました。
この家の奥様の手によって、お顔や手を包んでいた薄手の和紙が一枚ずつ剥がされ、
整然と段上に並べられた人形たちはとても晴れやかな表情をしています。

男雛:やれやれ、やっと定位置に戻ったぞ。虫に食われたところは無いか?

女雛:私は大丈夫。衣装にもほころびはありません。ですが、何年経っても樟脳の匂い
    には苦しめられますね。十二単(じゅうにひとえ)の中にまで染み込んで、匂いが
    抜けるのに幾日もかかってしまうのですよ。

三人官女:確かにこの匂いは鼻に付いて仕方がないのですが、樟脳のお蔭で私たちも
    無事です。五人囃子さんたちも元気に手を振っていますから、ご安心ください。

男雛:何よりじゃ。全員が揃って、今年も会えたことを嬉しく思うぞ。

女雛:いつものお部屋に飾って頂いたということは、この家のサトちゃんも元気なんです
    よね。一年でどれくらい成長したのでしょう。早く会いたいですわ。

ところが、雛飾りが置かれた部屋にサトちゃんや家族が集まったのはわずかな期間でし
た。雛人形が飾られた数日後に、サトちゃんは病気で入院してしまったのです。
その日から、この部屋に家人が集うことはなくなりました。

男雛:間もなく3月3日の「ひな祭り」がやってくる。何とか、その日までにはサトちゃんが
    戻って来てはくれぬかのう。このままでは私たちの存在価値が無くなって、来年
    からは箱から出してもらえず、永遠に暗い茶箱の中で過ごすことになるかも知れ
    ないぞ。我々の力が試される時じゃ。何とかせねばなるまい。知恵を出し合おう
    ではないか。

女雛:今朝、こちらの奥様が「サトちゃんの手術が無事に終わった。」と話しているのが
    聞こえましたよ。経過が良ければ戻れるかもしれませんが、どなたもこの部屋に
    顔を出さなくなったので、状況がよくわかりませんね。

三人官女:本当にサトちゃんのことが心配で、心配で。私たちにできることはないので
    しょうか?

五人囃子:私たちもお手伝いしますよ。といっても、お囃子を奏でることしか、できない
    のですが・・・

男雛:皆の気持ちは嬉しいぞ。何かできるはずじゃ。しっかりと考えてみよう。このまま、
    あの娘がいない部屋で「ひな祭り」の日を迎えると思うと、つらくてたまらない。

女雛:そういえば、うろ覚えではありますが、私たちをこの世に送り出してくれた人形師
    さんが、一心不乱に何かを称えながら心を込めて書いたものを、あなたに託した
    ような気がするのです。私の記憶違いでしょうか?

男雛:そんなことがあったかのう。しばし待て。思い出してみよう。ウ~ン、私が持ってい
    るのは「笏(しゃく)」と「刀」だけだが・・・。オォ!そう言えば、この「笏」だ。私が
    手に持っている「笏」に人形師が何やら文字を書き込んだように思うぞ。
    人形師は私たちを作る際に、私たちと縁が結ばれる娘の健康と幸せを願う強い気
    持ちを込めたから、その文字には何らかの力が備わっているのではないだろうか。
    そうだ!この「笏」を娘の枕元に置くと「病が退散する」と言っていたのを思い出した
    ぞ。こんなに大切な事を忘れておったとは、まことに恥ずかしい限りじゃ。

女雛:そういうことでしたか。でも、その「笏」を病院にいるサトちゃんに届けて、枕元に置
    いてもらう方法はありますか?

三人官女:ここから動けない自分たちが情けなくもあり、悔しくもあり・・・アァ・・・

五人囃子:家の人をここへ呼び寄せるために、私たちがお囃子を演奏してみましょうか?

男雛:なるほど。まずは、誰かにこの部屋へ来てもらわぬことには話にならぬからのう。

女雛:ここに呼び寄せても、「笏」に気付いてもらい、さらに、病院へ持って行ってもらうの
    は、かなり難しいのではありませんか?

男雛:考えてみよう。先ず、お囃子を聞いて誰かがこの部屋に入って来たら、目の前で
    私が「笏」を手離して下へ落とすのじゃ。その人は多分、「笏」を拾い上げて、私
    の手に戻そうとするだろう。その時に「笏」に書かれた文字に気付いてもらえると
    良いのじゃが。わしらには何と書かれているのか分かりようもないが、その文字
    を見て病院へ持っていこうという気持ちになってくれることを祈るしかあるまい。

女雛:とにかく、すぐにやってみましょう。少しでも早く病院へ「笏」が届けば、3月3日ま
    でにはサトちゃんが退院できるかもしれないわ。人形師さんの心を引き継いだ私
    たちがサトちゃんを厄災から守るために力を発揮すべき時は、今を置いて他には
    ありませんことよ!

三人官女:お囃子を聞いてこの部屋に人が現れたら、すぐに私たちが踊り始めます。
    きっと、何かを感じて、私たちの近くまで来てくれますよ。

五人囃子:ヨ~シ、腕によりをかけて最高のお囃子を奏でるぞ。さあ、始めよう。

段飾りの上で賑やかなお囃子が始まりました。暫くすると、廊下に足音が聞こえ、障
子がス~ッと引かれたかと思うと、この家の奥様が現われました。間髪を入れず、
三人官女は大げさな身振りで踊り始めました。すると、雛人形たちのいつもとは違う
雰囲気を不思議に思ったのか、奥様が段飾りのすぐ前まで近寄って来たのです。

奥様:この部屋から音楽が聞こえたように思ったんだけど、誰もいないわね。

男雛:よし今だ。「笏」を離すぞ。お願いだ、気付いてくれ!

奥様:まぁ、男雛の「笏」が落っこちたじゃないの。元に戻さなくっちゃ。
    あら?これは文字のようね。今まで気付かなかったけど「喜」という字が二つ
    くっいて並んで、なんとなく縁起が良さそうな文字だわ。そうだ、病院で退屈
    しているサトちゃんに持って行ってみましょう。これを見たら、雛人形さんたち
    に会いたくなって、回復が早まるかもしれないわね。

男雛様、この「笏」をしばらく拝借しますよ。

こう言って、奥様は文字の書かれた「笏」を持ち、部屋を出て行きました。雛人形た
ちは「ヤッタ~、ヤッタ~」と大喜びです。雛人形たちの心からの祈りが届いて、サト
ちゃんが3月3日までに退院できるといいですね。
祈りよ、届け!