アンコウ鍋の季節がやってきました。「東のアンコウ 西のフグ」と並び称される茨城県を
代表する冬の味覚です。つぶれたような平たい魚体、大きな頭、巨大な口には鋭い歯が並
ぶグロテスクな魚です。しかし、姿に合わずその味は淡白でコラーゲンたっぷり、肉は脂
肪が少なく、低カロリーなため、女性にも人気です。茨城のアンコウは11月~3月までが
時期ですが、特に肝が肥大する12月~2月が美味しい旬と言われています。茨城アンコウ
の魅力をご紹介します!
アンコウはアンコウ鍋、共酢あえ(とも和え)、どぶ汁(水を使わず野菜やあんこうの水
分だけの鍋)などに料理されます。特に茨城県と福島県の沿岸部では古くからアンコウ漁
が盛んで、表面がヌルヌルで大型のアンコウはまな板の上ではさばきづらく、独特の調理
法である「アンコウの吊るし切り」が有名です。親潮と黒潮が交わる茨城沖は、日本でも
有数の好漁場。 その茨城沖で漁獲された2kg以上のアンコウのうち、「アンコウのブラン
ド化推進委員会」が定める自主管理基準により取扱うものを「茨城アンコウ」と命名し、
アンコウの下あごにタグをつけて出荷しています。
<アンコウの豆知識>
1.アンコウの名は、アンゴウというヒキガエルの方言に由来し、外国でもフィッシング
・トード(釣りするヒキガエル)といわれ、どことなくヒキガエルに似たところがあ
ります。ウロコのない体は、ブヨブヨと軟らかく、海底にへばりつく無精者で、泳ぎ
の下手な魚です。動きが鈍く、英名でアングラーとも呼ばれるように、動かずしてエ
サを釣りあげる妙手をもっています。
2.「アンコウの七つ道具」とは可食部分の7つを挙げて言います。
(1)肉(柳身):3枚におろした身の部分。プリッとした食感と上品な味の白身。
(2)肝:クリーミーな味わい。とも和えなど、料理の幅は広い。
(3)水袋(胃袋):つるし切りの際はここにたっぷり水がたまることから。
(4)布(卵巣):流通しているアンコウは全てメスなので必ず入っています。
(5)エラ:エラを食べられる魚は珍しい。唐揚げなどの揚げ物がおすすめです。
(6)ひれ:ゼラチン質とコリコリした食感がおいしい。骨を抜くと食べやすい。
(7)皮:プルっとしたゼラチン質でうまい。アンコウ鍋では主役級の部位です。
地域によって、尾ひれ・あご・ほお肉(柳肉)などを入れることもあります。アンコウは
骨と眼球以外、捨てるところがない、無駄のない魚です。
3.アンコウの栄養価
栄養価は非常に高く、皮膚や骨、目の老化を防止するコラーゲンや免疫機能を維持す
るビタミンAが多く含まれています。また、血圧やコレステロールの低下、心臓の機
能強化や動脈硬化、脳卒中の予防するタウリンが多く含まれています。他にも、肝臓
には老化現象の進行を抑制する働きがあるビタミンEが豊富に含まれています。
4.アンコウの種類
アンコウは世界中に分布していますが、食用にするのは日本だけのようです。日本で
は北海道以南の比較的深い海に生息し、体長1.5メートルに達します。食用にするのは
キアンコウとクツアンコウという2種類です。一般的にアンコウと言えば口腔内に白い
斑紋があるキアンコウのことで、本県で水揚げされるのはこの種類です。クツアンコ
ウは口の中が黒いので区別することが出来ます。
5.アンコウの吊るし切り
アンコウは身がヌルヌルしているため、まな板の上では、切ることが難しいのです。
(1)アンコウの下あごを鉤(かぎ)にかけ、縄で吊るします。
(2)口から水を入れて、重みで体を安定させます。
(3)胸びれをそぎおとし、あごの下から皮を裂きます。
(4)皮を剥ぎ取り、肉を裂き、肝と腸(わた)を取り出して切り離します。
(5)胃袋を取り出し、身をそぎ、身びれを切り落とします。
<アンコウ漁>
もともと、アンコウは狙って獲る魚ではありません。主に平潟・大津・川尻・久慈
町・那珂湊・波崎の6漁協に所属している、沖合底びき網漁業、小型機船底びき網
漁業によってヒラメ、ホウボウ、ドンコなどの底魚と共に漁獲されます。底びき網
漁業は、水深の約3倍の長さのワイヤーロープ2本の先にオッターボードと呼ばれ
る金属製の大きな板を付けて、海中の漁網の位置をコントロールするとともに、網
口を大きく開いて、中層~低層にいる魚を効率よく漁獲する漁法です。平成17年11月
からは、特定の生産者(底びき網漁業者)によって茨城沖で漁獲されます。アンコウの
漁は産卵を終えた7月・8月が禁漁となっています。以外は年を通じて漁が行なわれて
いますが、秋口からシーズンとなり、冬の寒い時期にはアンコウ鍋の最盛期になりま
す。また、初春から産卵の時期になりますので、産卵前の冬のアンコウの肝はよく肥
えて、肝を味わうには最良の時期であるといえます。
<アンコウ鍋の発祥>
アンコウ鍋は、水戸や平潟が有名ですが、これはもともとアンコウに商品価値 がなか
った頃、漁師が漁船の上で作って食べた「どぶ汁」がスタートです。庶民料理の傑作
です。どぶ汁は、あん肝をほぐしてとろ火で煮詰め、これにあり合わせの野菜とアン
コウを入れて作る濃厚な鍋物ですが、あんこう鍋は、これをだし汁で割って作ります。
味噌、肝汁をだし汁でのばし、あんこうの「7つ道具」と白菜、大根、しいたけ、春
菊、ねぎなどの野菜を入れて煮込みます。7つ道具のそれぞれ違った歯ごたえ、味わ
いもあんこう鍋の楽しみのひとつです。こうして作ったあんこう鍋は、二度炊きが
美味しいです。汁が野菜によくしみ込んで、味に深みが出ます。煮過ぎかなと思う
くらいの熱々の鍋をぜひ味わってみてください。
この他には共酢和えがあります。これは、ゆでたアンコウを酢味噌でのばしたあん
肝につけて食べるもので、淡泊な味わいです。
低カロリーの身や他の部位を、たくさんの野菜と一緒に肝を溶かした出汁で煮て食
べるというアンコウ鍋は、まさに理想の健康食であるといえます。
私の推奨店は水戸市の元祖あんこう鍋「 山翠」です。アンコウ鍋を茨城県内外に広めた立
役者のうちの一つといわれているお店で、昔ながらの吊るし切りで丁寧に下処理されたア
ンコウを、秘伝の焼き味噌で味付けしたお出汁でいただきます。あん肝と味噌を練り合わ
せた焼き味噌が、独特の香ばしい風味とコクを生み出しています。コロナ禍になる前にOB
仲間と共に水戸市内をウォーキングしていた時に予約して入ったお店です。
是非冬の茨城県に来たらアンコウ鍋をご賞味あれ!
3年前の水戸、山翠を思い出しますね