ショートシナリオの館

ボケに抵抗するため、日常生活の中から思いつくままに書いています。月2回・月曜日の投稿を目指します。

初めての整骨院

2018-11-26 07:40:12 | 日記


病院の整形外科へ行こうか?町の整骨院にしようか?とさんざん迷った末に、何事も体験
だと決め、人生初の整骨院の扉をたたきました。

「あら、誰もいないわ」「どうしようかな~」

その時、正面のトイレと思しき部屋の扉が少し開きました。そして犬と一緒に初老の白衣
らしきものを着た男が顔だけをのぞかせて、

「あんた誰?」

「え・・・、(なんと答えたらいいのかな?)一応、患者のつもりですけど・・・」

男はトイレらしき部屋から全身を出すと、瞬く腕組みをして黙って立っています。

「あの・・・、出直した方がいいでしょうか?」

「どうしようかな~」

「腰が痛いので、診てもらいたいと思って、伺ったのですが・・」

「私はあなたを見たことがないよな」

「はい、初めて来た患者です」
(この人先生か?大丈夫かな、ボーっと立ってんじゃないよ!と言ってやりたいな)

「どうしようかな~」

 どうしようかなと言われても困るんだけど・・・)
「あの~、家で安静にしていろと言うのなら帰りますけど。数日前から、右側の腰
 から足にかけてズキンとした痛みが出て、困っているんです。」

「腰から足にかけての痛みか、それはヤバいかもな」

(ヤバいかもじゃないわよ。ヤバいからやっとの思いでここまで歩いて来たのに、
 こりゃダメだ。帰ろかな)
「帰った方がいいなら、帰りますけど」

「まあ、せっかく来たんだから見てみるか。立ってないで入りなさい。ヘルニアだ
 と厄介だよな。手前の2つのベッドは使っているから、奥のベッドで横になって」

(治療してくれるなら、もっとシャキッとした態度と言葉で対応してもらいたいわね。)

それでも促されたベッドの脇にやってきました。

(それにしてもベッドのタオルが汚い感じね。触りたくないけどしょうがないか。
 それにしてもなぜ診療室に犬がいるんだろう。診療室に犬がいるなんてとても衛
 生的とは思えないな)

先生の声が後ろから聞こえてきました。

「そうじゃないよ。うつ伏せになって」

(うつ伏せになりたくないから仰向けになったのにな。腕をあごの下に入れてタオ
 ルに触らないようにしよう)

「腕を前に出して」

(腕を前に出すの?顔がタオルについちゃう。やだな。右腕かな?)

「そうじゃない、右側が痛いんだろう。だったら左の腕を前に出して」

(初めから、左腕と言ってよね、タオルが顔に触っちゃった、やだな)
「はい、これでいいですか?」

「痛タタタタタタ・・」
(始めるなら一言掛けてよ。心の準備が必要なんだから)

「ここか~、これから電気を通すから、30分ぐらいその姿勢でいなさい」

こうして、やっと整骨と電気治療の診療が始まりました。

「終わったよ」

「ありがとうございます。少し楽になったような気がします」
(社交辞令のようなもんだけどね)

「保険証を出して」

「はい、これです」

「2枚もいらないよ」

「ゴメンナサイ、1枚は期限切れの古いやつです」

(わたしまでおかしくなってきたわ、もっとシャキっと話してくれないかな、
 シャキっと)

保険証をコピーしている先生が独り言のように言いました

「鈴木さんね、ご主人の名前は知ってるかもしれないな」

(主人の名前を口に出して言いました。主人が整骨院に行ったことは知っているけど、
 ここに来たのかな?でも、もうこんな話には付き合っていられない)

「あの、いくらお支払いしたらいいのですか」

「ム・・いくらにしようかな?・・・ム・・・いくらにしたらいいのかな?」

(ちょっと、やめてほしいな。患者の私に聞かれても困るわよ)

(少し、間をおいてから)「それじゃ1,300円ぐらいにしようかな」

「わかりました、1,300円ですね。ここに置きましたよ」

「明日、又来てください」

「明日の土曜日は法事があっていけません。」

「それでは月曜日に来てください」

「午前がいいですか?午後がいいですか?」

「どちらでもいいよ」

「わかりました。午前中に来ます」

私は領収書も貰わずに整骨院を出てきました。(もう、こんな所に来るものか)

治療の効果ですか?
朝目覚めた時、前日の朝は痛みで起き上がれなかったのと比べて、シャキっと起き
上がることができたのです。
あの先生、名医なのかしら?
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リンゴ ミカン ナシの誕生秘話

2018-11-12 07:55:01 | 日記


大昔、一本の木に3兄弟の実がつきました。実が小さい時は仲良く養分を分けあって成長し
ていましたが、実が大きくなると、養分の取り合いが始まり喧嘩をするようになりました。
見かねた神様は3兄弟をそれぞれ別々の木に独立させることにしました。

神様:3兄弟よ!よく聞きなさい。これから経験したことがない強い雨と風がやってくる。
   それがお前たちの旅立ちの日だ。この木から離れて別々の地で根を下ろし、そこに
   生きる物たちの糧となる果物を実につけて子孫を残しなさい。

長男:僕たち3兄弟も、とうとう独立する時がきたのだ。僕は暑いのが苦手だからここよ
   り涼しいところへ行きたいものだ。そうだ、北へ向かおう。寒い環境が苦手な果樹
   は多いから、僕が行けばきっと喜んでくれるだろう。

次男:もうこの木に残ることはできないのだね。僕の弱みは暑さより寒さが苦手なこと、
   でも兄や弟が嫌う潮風は気にならないのが強みだ。そうだ、ここより南へ行こう。
   そして海が見渡せる場所を探そう。海岸に近いところなら、潮風が苦手な樹木は来
   ないから、太陽の光を遮る邪魔者も少ないだろう。暖かい光を独占できるぞ。

三男:僕はどうしよう。兄さんたちは自分の体の強みと競争相手が少ない環境を考えて行
   き先を選んでいる。賢いな。僕は暑いのも寒いのも苦手だし、それに競争相手の少
   ない特別な環境で生活できるほど丈夫じゃない。僕はここの環境が好きだから、遠
   くへ流されないようにここで踏ん張ることにしよう。兄さんたちがいなくなるから、
   ここの環境は僕が残って守ってあげなきゃいけないよな。

神様:3兄弟よ、行き先が決まったようじゃな。自分の希望する土地に落ち着いたら、そ
   こで「助け人」を待ちなさい。「助け人」はお前たちがその土地に合った果実を実
   につけて子孫を残すことができるように手助けをしてくれる。お前たちの幸運を祈
   るぞ。

それから間もなく、大嵐の日々が続き、3兄弟の実も振り落とされ、濁流となった水の流
れに乗って旅に出たそうです。

<長男の旅路>

長男 :ここはどこだろう。気持ちの良い涼しさだ。どうやら目的の土地に来られたよう
    だ。草花が思っていた以上に咲いている。これなら蜂たちもいるだろう。この涼
    しさは冬の寒さの厳しさを予感させるけど、僕は大丈夫だ。ここで助け人を待とう。

助け人:お前は誰じゃ!もしかして、南からやって来ると聞いている果実とはお前の事か?

長男 :ハイ、私は長旅をしてやっとここにたどり着きました。ここで助け人を待つよう
    に言われたのです。

助け人:ワシが「助け人」じゃ。出会えてよかった。見ての通り、この寒冷の地では草花
    は咲くが大きな果実をつける樹木がいない。私はこの地で大きな果実を実らせて
    くれる樹木を育てたいのじゃ。お前が来るのを待っておったぞ。

長兄 :「助け人」に会えて嬉しいです。なぜ大きな果実が必要なのですか?

助け人:この地に生きる物たちは雪の降る間は冬眠するものが多いのじゃ。だから冬眠前
    の夏の終わりから秋にかけて大きな実をいっぱい実らせて、冬眠前にお腹いっぱ
    い食べさせてあげてほしい。

長兄 :わかりました。冬眠から目覚める春にピンクの花を咲かせて、夏の終わりから秋
    にかけて、甘酸っぱくて、よく目立つ大きな赤い果実を実らせましょう。

助け人:よく言ってくれた。お前の希望通りの果実ができるように、ワシも精いっぱい手
    伝うぞ。だからここでしっかりと根を下ろしてほしい。

答えはお分かりですね。そう、この果実は「リンゴ」になったのです。現在、リンゴの収
穫量は青森県、長野県、岩手県で7割を占めています。

<次男の旅路>

次男 :ここは海辺だ。海の見える場所に来られたのだ。太陽がまぶしくて温かい。ここ
    はいいぞ。ここで助け人を待つことにしよう。

助け人:見つけた。見つけた。お前がワシの助けを待っている果樹ではないのかな?

次男 :「助け人」さんですね。潮風の香りに誘われてここまでやってきました。

助け人:ハッハッハ!その潮風の香りはお前をここへ呼ぶために私が出したものだよ。お
    前が潮風に耐えられる強い体力を持っているのか確認したかったのだ。合格だ。
    この海を見下ろせる山間の傾斜地にお前の住む場所を見つけておいたぞ。でも、
    潮風をあなどってはならん。果実は小ぶりにして、果皮は厚めにして防御してお
    くことが肝要じゃ。こんな温暖な地でも冬は食べ物が少なくなる。寒い冬の時期
    にいっぱい実をつけて、みんなを助けてあげてくれ。

次男 :わかりました。僕は黄色い果実を実らせたいです。黄色はここではとても目立ち
    そうなので、みんなが見つけて寄ってくれると思うのです。「助け人」さん、よ
    ろしくお願いします。

答えは分かっちゃいましたね。そう。この木の実は「みかん」になりました。現在のミカ
ンの収穫量は和歌山県、愛媛県、静岡県の3県で全国の約5割を占めています。

<三男の旅路>

三男 :ここはどこだ。僕は流されながらも直ぐに大岩の隙間にしがみつくことができた
    から、生まれ故郷からは遠く離れていないはずだ。ここにも「助け人」はいるの
    かな?

助け人:おいおい、ワシが見えぬのか?お前の「助け人」じゃ。この地に残ってくれたと
    は嬉しいぞ。誰もいなくなったら困るところじゃった。お前は大きな実をつける
    体力を持っていると聞いている。

三男 :はい、3兄弟で一番大きな果実をつけることができます。僕は兄たちとは違って、
    春に大きな果実をつけたいと思っているのです。

助け人:それはできない。同じ樹木から生まれた3兄弟には果実を作り出す共通の性質が
    あって、春に実をつけることはできないのじゃ。春に果実を実らせるのは他の果
    樹に任せるしかないな。

三男 :仕方ない。でも兄さんたちより大きくて、違う食感の果実をつけたいな。

助け人:その希望は叶えることができるぞ。この地で秋の味覚として喜ばれるのは、「み
    ずみずしさ」と「しゃきしゃき感覚」じゃ。そんな味覚の果実ができるように、
    ワシが手助けをしよう。

また、答えが分かっちゃいましたか。そうです。この木の実は「ナシ」になりました。
梨の収穫量は千葉県。茨城県が1位、2位です。

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