動物村は一面の銀世界です。氷結の森の洞窟で氷の精・チルノンから、雪だるまを作ればレイニーに
逢えると教えてもらった仲良し3人組は、早速、雪だるまを作り始めました。
ポン吉: ヨイショ、ヨイショ。どうだ、こんなに大きくなったぞ。でも、手が冷たいな~。
ミミ : 張り切って大きな雪玉を二つ作ったけど、こんなに大きくては私たちの力で頭を胴体の上に
乗せるのは無理じゃない?頭を削って小さくしましょうよ。
コン太: オイ、オイ。途中で、もっと大きくしなくちゃ・・と言ったのはミミだぜ。
ミミ : アラ、そうだったかしら?なんとか、この大玉を重ねる方法を考えましょうよ。
コン太: よく言うよナ~。ちゃんとした考えがあって、ここまで大きくしたんだと思ったのに。
そうじゃなかったのか。ミミも結構いい加減だな。
ミミ : ゴメン、ゴメン。ネェ、ポン吉はさっきから黙っているけど、いい案はないの?
ポン吉: ウ~ン。難しいな。そうだ!このまま、顔と胴体を横並びでくっつけて、仰向けで寝ている
雪だるまにしちゃってもいいんじゃない?
ミミ :ポン吉、スゴ~イ!!仰向けに寝ている雪だるま・・・それ、いいわね。
3人組は二つ並べた雪玉の片方に、持ち寄った枯れ枝や石ころで目・鼻・口を作り、更に、葉っぱの帽
子をかぶせました。胴体のほうにもいろいろなものをくっつけて大きな雪だるまを完成させました。
そして、大声で「レイニー、レイニー・・・」と呼びかけました。何回か呼んでいると、仰向けになっ
ていた雪だるまが突然、ブルブルと震え始めました。次には、ゆっくりと頭と胴体が起き上がり、やが
て、まっすぐに立ち上がったではありませんか。
レイニー: やあ、みんな、暫くぶりだったね。僕の体を作ってくれてありがとう。
コン太: レイニーだよ。レイニーが戻ってきてくれたんだ。
ミミ : レイニー、また逢えてうれしいわ。
ポン吉: ネェ、レイニー、聞いてくれる?僕ら、氷結の森の洞窟に行ったんだよ。そこで、チルノンか
らレイニーの話が出て、急に逢いたくなったから雪だるまを作ったんだ。
レイニー: 君たちがそこへ行ったことは知っているよ。洞窟の中はきれいだっただろう?
ミミ : エェ、太陽の光が洞窟の中の氷筍や氷柱に反射して、虹色に輝いたの。スッゴク幻想的だったわ。
レイニー: それは良かったね。だけど僕はね、この場所でも氷結の森に負けないくらいの幻想的な世界
をつくることができるんだ。見せてあげようかな?
コン太: ホント!見たい、見たい。でも、ここは一面の銀世界で氷柱も氷筍も何もないよ。
ポン吉: こんな場所で虹色の世界をどうやって作るの?
レイニー: それでは僕と並んで座って向こうの方にある暗い森を見てごらん。背景が暗い方がきれいに見
えるんだ。さあ、降り出した雪をしっかりと見ていてね。雪がだんだんキラキラと光り出すぞ。
ミミ : ホントだわ、キラキラと輝き出した!ワ~ッ、きれいね。
コン太: すごいぞ。どんどんキラキラが増えてきた。スゴイ!
レイニー: これはダイヤモンドダストと言って、気温が急に冷えてくると、雪が小さな氷の粒になるんだ。
もうすぐ雲の隙間から太陽の光が射してくるぞ。これからが一番良いところだから、しっかり
見てね。
コン太: オッ、光だ。光が氷の粒に反射しているよ。
ポン吉: ワ~ァ、太くて大きな虹の柱ができた。きれいだな~。氷結の森に続いて、またすぐに、こんなき
れいな景色を見ることができるなんて、思ってもいなかったよ。
3人組はしばらくの間、キラキラと虹色に輝くダイヤモンドダストの柱に見入っていました。そして、太陽光
が陰り、その輝きが失われた時、3人組はレイニーに抱きついていました。
レイニー: 満足してくれたようだね。それでは、もう一つ、面白い体験をさせてあげよう。僕のお腹に扉を
付けておいたから、その扉を開けて中に入ってごらん。
コン太 :これは僕たちが作った雪玉だよ。あんな小さな扉に僕らの体は入らないよ。
レイニー: いいから、いいから、騙されたと思って、扉を開いて中を覗いてごらん。3人組が入れる広さは
十分にあるからね。
ポン吉: レイニーが言うなら、そうする。まず、僕が扉を開けてみるよ。アレ?近くに来たら急に扉が大き
くなった。扉が開いたよ。中は明るい。さあ、入ってみるぞ。
続いて、ミミとコン太が入りました。どうしてだかわかりませんが、雪玉のお腹の中に3人共、簡単に入れて
しまったのです。お腹の中は空洞になっていて足元には雪がなく、背丈の低い若草が生え、そこから小さな
花芽がいくつも顔を出しています。
レイニー: どうだい、僕のお腹の中は、もう春だよ。びっくりしたかい?
ミミ : レイニーの声だわ。姿が見えないけど、あなたからは私たちが見えているのね。お腹の中は冷たい
のだけれど、見える景色は春のようだわ。
ポン吉: 本当に、この中は春のようだ。外の雪景色とは全く違うよ。
レイニー: 外で降っている雪が止むとまもなく、君たちが今、僕のお腹の中で見ているような景色になるよ。
そうなれば冬眠している友達たちとも再会できるね。
コン太: レイニーはこの景色を俺たちに見せて、春が近いことを教えてくれているんだね。
レイニー: みんなが見ているのは雪の下の景色なんだよ。春はこうして雪の下でじっと出番を待っているのさ。
寒い冬も、もうすぐ終わるよ。あと少しだ。
雪だるまのお腹から出てきた3人組は、目の前に広がる一面の銀世界を見つめながら、動物村の住民全員が広場
に集まって行なう盛大な「春祭り」に思いを馳せるのでした。
水の精・レイニーのやさしさに触れ、彼との友情がさらに深まったことを実感した仲良し3人組ですが、それと
同時に、春への期待が一気に膨らんできたようです。