散歩道ルートのブルーベリー園が今年も開園しました。散歩ルートという狭いエリアに
2ヶ所もブルーベリー園があります。報道で2000年ごろから目に良いとされる成分「ア
ントシアニン」を多く含むブルーベリーに目をつけた農家が、新規参入していると報道
されていましたので、確かに広がりを見せているのだなと実感できます。もともと茨城
県は、県南地区であるつくば市、かすみがうら市、小美玉市がブルーベリーの地として
知られていましたので、同じ県南の土壌環境であるわが散歩道周辺も栽培環境としては
ベストだし、栽培のノウハウも入手しやすかったのでしょうね。ところで、一般的なブ
ルーベリー摘みのシーズンは6月~9月頃までとされていますね。食べた瞬間に口の中に
広がる、甘さとほどよい酸味は確かに絶品ですが、実はブルーベリーにはいくつかの種
類があるため、それによって微妙に旬の時期が異なってきます。ですから、ブルーベリ
ー摘みを検討しているのであれば、気になる農園へ事前に問い合わせをしておきましょ
う。今回は茨城県・県南地区が主産地であるブルーベリーを紹介します。
<ブルーベリーとは>
ブルーベリーとは、ツツジ科スノキ属に分類される北米原産の低木性果樹です。果実が
濃い青紫色に熟すことからブルーベリーと名付けられました。発見されてからの歴史は
まだ浅く、日本では1970年代に栽培が盛んになり、日本中に広く知られるようになりま
した。果実は生で食べられるほか、ジャムやソースなどの加工品としても活用され、食
卓に並ぶ機会も多いですね。成熟した果実は濃い青紫色をしており、「アントシアニン
色素」と呼ばれる水溶性の色素が含まれており、健康を気遣う方から注目を集めている
果実です。
<世界生産量ランキング>
OREGON CHERRY GROWERSの統計値によると、2020年のブルーベリー(ワイルド、カル
チベイト、ビルベリーを含む)生産量のトップ5は①中国、②アメリカ、③ペルー、④
チリ、⑤カナダで、始めて中国が世界トップになり、アメリカとカナダは異常気象などに
より生産量を落とし順位を下げています。日本は15位となっています。異常気象による国
別順位の変動はありますが、ブルーベリー生産量はどの国も右肩上がりで、世界的に需要
が伸びている果物です。
<国内生産量ランキング(2018年)>
国内では1位が長野県で178.5(t)11.7%、2位は以外にも東京都で9.2%、3位は群馬県8.9%、
そして9位が茨城県4.0%でした。茨城県は前年まで2位、3位をキープしていたのです。順
位落ちはそれだけ他県の耕作面積が急激に増えているということです。そして東京の生産
量が多いのは、ブルーベリー発祥の地であることが大きいのでしょうね。
<ブルーベリーの種類と品種>
栽培用ブルーベリーには大きく分けて2種あり、他に自生種がある。
- ハイブッシュ系ブルーベリー:北部系(ノーザン)と南部系(サザン)がある。
- ラビットアイ系ブルーベリー
- 自生種のブルーベリー
(1)ノーザン・ハイブッシュ系:寒冷地向けの品種改良から生まれました。自家受粉で
も良いが、異品種で授粉させた方が結実が良くなります。大粒で皮が薄く、舌触
りも滑らかです。味は甘みのなかにほのかな酸っぱさがあり、最もブルーベリー
らしい味覚を楽しめます。日本では長野県~北海道南部の冷涼な地域での栽培に
適しています。最も普及しているので品種も多い
(2)サザン・ハイブッシュ系:ノーザンを暖地向けに改良した品種で、元はノーザンと
同じ品種です。ですから、こちらも自家受粉より、異品種で授粉させた方が結実
が良いです。ノーザンと比べると、酸味が少なくて、誰からも受け入れやすい味
覚です。
(3)ラビットアイ系:アメリカ南部の温かい地域に自生していた野生種の品種改良から
生まれました。実が成熟する前に赤くなり、その姿を「うさぎの目」に例えて、
ラビットアイと名付けられています。異なる品種から受粉しないと実がなりませ
ん。暑さに強い品種で、関東より南の地域での栽培に適しています。収穫の時期
が遅い「晩生種」であり、7〜9月頃に旬を迎えます。果実はハイブッシュ系と比
べると小粒ですが、甘みの強いことが特徴です。やや果皮が固く、生食よりもジ
ャムなどの加工に向ます。木は大きく育ち、長い期間での多収穫が期待できます。
(4)自生種系:原産地の北米や北欧には、自生種のブルーベリー(またはその近縁種)
が植生しています。栽培が難しくて大量生産できなかったり、生食に向いていな
かったりと、様々な理由がありますが、日本ではほとんど栽培されていません。
しかし、ジャムのような加工品や、サプリメントの材料になったりと形を変えて
日本に入ってきています。代表的なものを紹介します。
①ローブッシュ系:米国北部やカナダ、北欧に広く自生する「野生の」ブルーベリーで
「ワイルドブルーベリー」とも呼ばれています。樹高は15〜40cmと低く、果実は
ブルーベリーの仲間で最も小粒で、濃い青紫色が特徴です。酸味が強いため生食に
は向かず、主に加工品として消費されます。加工品としての実績はめざましく、ジ
ャム、ジュース、ドライフルーツ、ケーキ、お菓子、ワインに使用されるブルーベ
リーのほとんどがこの系統です。
②ビルベリー系:同じ品種ですが、主に北欧で自生する種が「ビルベリー」で、北米で自
生するものは「ハックルベリー」と呼ばれています。果実は小粒で、内部まで濃い
赤紫色をしています。栽培が難しく、果実は柔らかくて傷みやすいので、生の状態
で市場に出回ることはありません。酸味が強い品種であることから、主に加工品と
してジャムやケーキ、料理など幅広く利用されます。ビルベリーは、アントシアニ
ンの含有量がブルーベリー類の中でもひときわ高く、「目のサプリメント」として
広く知られています。温暖地では冬も落葉しないので、植え込みに適。秋の紅葉も
美しいです。
<ブルーベリーの育て方>
繊細で栽培が難しい果樹というのがブルーベリーを育てるうえでの大前提です。「酸性土
壌を好む」が、もっと大切なのは「水はけ」です。ですから、家庭で育てる場合ではピー
トモスに赤玉土や鹿沼土を混ぜることで、排水性の良い土壌にした鉢植えがおススメです。
また肥料については、ブルーベリー専用の肥料を園芸店などで購入することをススメます。
そして、苗木を買っても、2年くらいは実を付けさせずに(摘花、摘果してしまう)、とに
かく生育させることだけに専念させる必要があります。美味しい果実を口にするには、あ
る程度時間が必要なのです。
<ブルーベリーの豆知識>
1.東京小平市はブルーベリー栽培発祥の地:日本にブルーベリーを広めた人物が、当時
の福島県園芸試験場の岩垣駛夫氏です。 同氏は、1964 年に東京農工大学の果樹学
教授として赴任し、以来、ブルー ベリーの生産開発に取り組み、その功績から「ブ
ルーベリーの父」と呼ばれます。彼が1968年(昭和43年)、ブルーベリーの栽培に
最適な土地として、小平市にブルーベリーの木が植えられたのが、日本のブルーベ
リー栽培の始まりだとされています。花小金井駅南口には「ブルーベリー栽培発祥
の地こだいら」という標柱が建てられています。
2.アントシアニンの効能効果:アントシアニンはポリフェノールの一種である青紫色の
天然色素。植物を有害な紫外線から守る働きをしています。アントシアニンを含む
ポリフェノールは、体内でつくることができません。食事やサプリメントなどで摂
取する必要があります。強い抗酸化作用を持ち、目や身体の老化防止に欠かせない
栄養素です。加齢に伴う老眼や白内障、加齢黄斑変性等の眼病や、視力低下の予防
に効果を発揮します。また、アントシアニンには、血流を促進して目の毛様体筋の
緊張をほぐす効果・効能があります。目の酷使による眼精疲労(目疲れ)の症状は、
毛様体筋の緊張によるピント調節機能の低下が原因となるため、アントシアニンの
摂取による改善が期待できます。
3.その他の栄養素:
(1)食物繊維で便秘解消:ブルーベリーは、多くが不溶性食物繊維で、便秘予防に効果
があると言われています。なぜなら水に溶けにくい不溶性食物繊維は、水分を吸
収すると数倍にカサが増し腸を刺激することで排便が促進されるためです。なお、
ドライブルーベリーの方が生のものより約5倍もの不溶性食物繊維を含みます。
(100gあたりで比較)
(2)ビタミンEで美肌に:抗酸化作用が強いビタミンEも豊富です。ビタミンEは、LDLコ
レステロールの酸化を抑えるため脂質異常症の予防に役立ちます。さらに、抗酸
化作用があるビタミンEは老化防止にも役立つため、ブルーベリーは美肌効果にも
期待できる食材と言えます。
4.美味しいブルーベリーの見分け方:ブルーベリーは最初淡い緑色の果実を実らせ、次
第に赤紫色⇒濃紺といった具合に完熟の度合いが進みます。ですから、全体が青黒
く変わっているものが食べ頃のサインです。さらに完熟になりますと実を少し引っ
張るだけで簡単に採れるようになります。その状態が一番甘くおいしいものです。
色が青黒いものでも簡単に採れないものは熟してはいますが、食べ頃まではもう少
し時間が必要です。
5.保存方法;2~3日の間に食べるならラップして冷蔵庫に。長く保存する場合は、ポリ
袋などに入れてすぐに冷凍にするか、ジャムにすることをススメます。
<ブルーベリーの一年>
品種による違いはありますが、ブルーベリーの木は2〜3m位の高さにまで成長します。
春先は:ブルーベリーの開花時期である4月上旬から5月上旬にかけて白い釣鐘状の花を咲
かせます。可憐な小花が10個位にまとまって咲く姿は、とてもチャーミングです。
夏は:ブルーベリー収穫の時期で、花が咲いた後にはいよいよ収穫を迎えます。6月上旬か
ら9月上旬にかけて、実は緑色から赤へ、そして最終的には青紫色へと変化していま
す。実の大きさは品種によって異なりますが、1〜4gほどです。観光農園で「ブルー
ベリー狩り」が開催される時期でもあります。
秋は:収穫を終えて秋を迎えると、ブルーベリーの葉は紅葉の時期を迎えます。意外に思
えるかもしれませんが、鮮やかな紅葉に彩られ、「紅葉狩り」まで楽しめるのです。
こちらも品種によって時期が異なりますが、10月中旬から年明けまで満喫できます。
冬は:この時期は葉が落ちて寂しくなりますが、やがて新緑が芽生え、開花の春先を迎え
ることになります。
県内で先駆けてブルーベリー栽培をはじめたのがつくば市でした。そのきっかけとなった
のは、まだ開学間もない頃の筑波大学。学内にブルーベリーの苗が植えられ栽培研究が始
まり、そして、1979年から一般市民向け公開講座でもブルーベリー栽培が取り上げられま
した。そこから現在のつくばブルーベリー協議会が立ち上がり、耕作地が広がって行った
のです。ですから、つくば市は産学官が育てた、国内有数のブルーベリー産地なのです。
寒冷地向け品種、暖地向け品種は概ねりんごとミカンの栽培地と重なります。そのため、
両方を栽培できる県南地区はどちらの品種も栽培できるので、品種を変えて長い期間ブル
ーベリー摘みが楽しめます。
県南の太陽が育む、夏の味覚「ブルーベリー」を是非ご賞味あれ!