鶏卵生産量の都道府県別割合をみると、茨城県が1位で8.8%、2位、鹿児島県が7.2%、
3位、千葉県が6.0%、4位、広島県が5.3%です。(令和2年 農林水産省)この内、
2位から10位ぐらいまでは、年次により入れ替わりがありますが、茨城県のトップは
ここ10年以上変わっていません。茨城県は日本で最も安定的に鶏卵生産が盛んな県
なのです。とは言っても国内のシェアが10%を超えることはないのです。このよう
に各県の生産量が横並びになっているのは鶏卵市場の特殊性がよく表れています。
対照的に、鶏肉の9割を占めるブロイラーの飼養羽数は1位が宮崎県(19.6%)、2位
が鹿児島県(18.0%)、3位が岩手県(16.5%)となっていて、上位3県で軽く50%を
超えています。このブロイラーの分野での茨城県はランク外です。日本でトップシェ
アを10年以上守り続けている県内の鶏卵生産者は県内の各地で特色のある卵を市場
に出しています。今回はこの内、鶏卵産出額が日本一の小美玉市の卵を紹介します。
<地産地消で分散された市場>
鶏卵市場の特殊性とは、①取り扱う商品が卵であることから、長距離輸送には適さず、
地産地消の商品特性がある。②国内の養鶏場は大量消費都市を囲うように分散してい
てメガファームは存在しにくい。③小資本でも参入可能である。こうした特殊性は世
界の養鶏市場も同じ状況にあり、最大手のカルメイン・フーズの世界シェアは0.53%、
2位のプロアン0.43%、3位のローズ・エーカー0.35%、そして5位の日本のイセ食品が
0,26%となっており、全てシェアが1%以下の分散された市場であることが分かります。
尚、イセ食品とは日本を代表する国内最大手の鶏卵会社で、非公開の同族会社ですが、
豊田通商と資本提携関係にあります。
<茨城県が日本一の鶏卵生産地である背景>
関東圏での養鶏には大量消費地である東京の郊外にある県が適しています。ですから、
埼玉県や栃木県、群馬県も養鶏業が盛んです。しかし、ランクの上位には入っていま
せん。その理由とは、
(1)茨城県が養鶏に適した気候条件である:鶏は夏の暑さに弱い生き物です。毎年
最高気温を記録する熊谷や館林がある埼玉県や群馬県は、飼育が難しい地
域と考えられます。
(2)飼料工場から農場までの距離関係が近い:関東の飼料工場は茨城県神栖市に集
中しており、茨城県や千葉県に飼料を運びやすいことも養鶏が盛んな理由
と考えられます。
(3)以前は神奈川県や埼玉県にも養鶏が盛んな地域があったそうです。しかし、宅
地化の波で郊外や県外への移転を余儀なくされているそうです。
<たまごの品種>
たまごは親鶏の品種による違いだけでなく、エサや環境などの鶏の育て方によっても
味や見た目に変化が現れるのです。実際に購入できるたまごの品種をまとめています。
1.卵用種
レグホーン(白い卵):イタリア生まれのレグホーンは白い羽毛に立派な赤いト
サカをもつ。世界的に最も普及しており、国内の産卵数も約80%がこの種だ
そうです。卵用種として品種改良が進められ、年間300個近くの卵を産みます。
2.卵肉兼用種
(1)もみじ(赤い卵):純国産種である「もみじ」。卵の色は赤玉。産卵数が多く、
年間約300個近く産卵するそうです。また病気になりにくく、ストレスにも強
いために、比較的飼いやすい品種であり平飼いにも向いています。
(2)さくら(さくら色):純国産の「さくら」。卵の色は濃いさくら色。「もみじ」
と同じで生産性が高く、ストレスに強い安定した生産性を発揮してくれる品種
です。
(3)ボリスブラウン(赤い卵):日本で一番多く飼われている「赤玉系の鶏」らしく、
産卵数も非常に多く餌効率も良いとされています。品種改良が進んでいるため、
警戒心も弱く、まさに養鶏に適した品種と言えます。
(4)会津地鶏(赤い卵):400年以上前から会津地方で飼育されてきた固有種。一度絶
滅の危機にあったものの、増殖に成功し生産されるようになりました。しかし、
その数は決して多くなく今もなお貴重な品種となっています。
(5)アロカーナ(水色の卵):南アメリカのチリ生まれ。世界で唯一の殻の青い卵が特
長です。栄養価も高いと言われています。南米では”幸せを呼ぶ鶏”と呼ばれている
そうです。黄身は青いわけではなく、鮮やかなオレンジであり、手でつまんでも崩
れないほどの弾力性があります。
(6)岡崎おうはん(赤い卵):黒に白いまだら模様が特長の純国産です。原産国が米国で、
日本に輸入されてから100年以上の歴史を持つ「黄斑プリマスロック」と生産性が
非常に優れた「ロードアイランドレッド」の交配種。卵肉兼用種であり高い生産卵
性を持ちます。
(7)烏骨鶏(薄赤く小さめの卵):「烏骨鶏」の烏骨とは「黒い骨」を意味しており、皮
膚、内臓、骨にいたるまで黒色をしています。羽毛は白と黒が存在します。産卵数
が少なく、一般的な鶏卵と比較して非常に高い値段となっています。
(8)天心山の卵(赤い卵):烏骨鶏と黄斑プリマスロックをベースに育成された鶏。
<卵の豆知識>
(1)卵は優れたバランス栄養食品
卵はたんぱく質、脂質が豊富でビタミンA、B1、B2、Dなどのビタミン類もたっぷ
り入っています。鉄分はほうれん草の約2倍、カルシウムも牛乳の1.5倍 とミネラルの
含有率も抜群です。人間の身体に必要な栄養素を多く備え、完全栄養食品といわれてい
ます。しかし、完全とはいっても弱点はあり、ビタミンCと食物繊維に欠けているので、
卵を食べる時には野菜や海草などを組み合わせることを意識して補うといいでしょう。
尚、鶏はビタミンCを体内で合成できるので、卵に保有する必要がないのです。
(同じ理由で牛乳にも入っていない)
(2)「卵=コレステロール」といった悪いイメージがあるようですが、これは誤解です。
そもそもコレステロールは人間の体に不可欠なものであり、細胞膜・神経 線維の成分や、
様々なホルモンやビタミンDの素となる成分です。コレステロールの量は肝臓で調節され
ており、食べ物から摂るコレステロールが多くなれば、肝臓で合成される量を減らすよう
になっています。
(3)賞味期限は「生のままで食べることができる期間」で表示されていますが、これは
あくまで菌増殖の観点から算出した日数です。卵は生鮮食品ですから、産みたての美味し
さを味わうには採卵後2週間以内が推奨されています。
(4)店舗で室温に置かれていても、購入したらすぐに冷蔵庫で保管しましょう。たまご
は温度の変化に敏感です。そして、卵は呼吸をしています。においの強い食品などは一緒
に置かないでください。
(5)キユーピー(株))であつかう卵はなんと、一年で25万トンです。日本の年間生産量
の約10%になります!キユーピーの工場では割卵機が大活躍。キユーピーが独自に開発した
この機械は1分間に600個というスピードで卵を割り、自動的に卵黄と卵白に分けることがで
きます。
(6)濁った卵白って大丈夫?:卵白が濁って、どろりとしているほど、実は新鮮です。濁
りの正体は炭酸ガスで、新しいたまごほど、多く含まれています。炭酸ガスは鮮度を守る効
果があり、時間がたつと抜けていきます。割らずに新鮮さを確かめたい時は、10~13%の食
塩水に入れて、容器の底に横向きに沈んだら鮮度バツグン。丸いほうを上にして底に立てば、
産卵後数日の一番おいしいたまごなのだそうです。
(7)風邪薬と同じ成分も:卵白に含まれるリゾチームは、風邪薬にも含まれている成分。
殺菌効果や有害なウイルスを溶かす働きがあり、免疫力を高めます。生鮮食料品であるたま
ごが長持ちするのは、リゾチームを含む卵白に守られているからです。
(8)固まる温度はどれくらい?:卵黄と卵白は固まる温度が異なります。卵白は固まり始
める温度と完全に固まる温度との間に、20℃以上の幅があり、卵黄は卵白と違って10℃の幅
しかありません。この差を利用して作るのが、温泉卵です。
(9)卵黄の色に違いがあるのはなぜ?:卵黄の色はエサの色で決まります。卵黄の色と栄
養は無関係。トウモロコシが多いと黄色に、パプリカや甲殻類のエサなら赤くなります。色
素を抑えたエサなら色が薄くなります。また、殻の色は鶏の品種で決まります。いずれにし
ても、栄養価にはほとんど差がありません。
<近年頻発する鳥インフルエンザについて>
採卵鶏の飼養羽数が全国一の茨城県は、今シーズン鳥インフルエンザの発生が相次ぎ、飼養
羽数が100万羽超える3か所を含めた6か所で鳥インフルエンザが発生し、これまでに400万羽
以上が殺処分されています。殺処分の様子はテレビ画面に頻繁に映し出されました。なぜ近
年は発生頻度が高いのかを調べると、専門家から「鳥インフルエンザウイルスが変異してい
る」との報告がありました。鳥インフルエンザは主にアジア方面から日本に飛来してくる鳥
たちによって運ばれてきます。過去の事例では鳥インフルエンザに罹った鳥は日本に到着前
に死んでいましたが、鳥インフルエンザウイルスの変異で、罹っても死なない鳥が日本に飛
来してきている。これからは過去の数年に一度の流行では収まらず、毎年の流行になるので
はないかと警鐘を鳴らしていました。こうした背景から今の高値の卵パックの価格は下がる
ことはないだろうとのことでした。茨城県の大井川知事は2月の記者会見で「可能な限りの防
疫措置をしているにもかかわらず、各農場で感染が出てしまったという状況で、様々なことを
組み立てていかなければならない。大規模な事業者については、それなりの備えを責務として
考えてほしく、努力義務ではあるが、鳥インフルエンザが発生した時に、その処分がしやすい
ような構造の養鶏場の設備に変えていっていただくということをお願いしたい」と話していた。
何としても安定供給対策を構築してほしいものです。
<小美玉市が鶏卵生産量日本一>
小美玉市で鶏卵の生産が盛んな理由は、近くに航空自衛隊の百里基地があり、基地の周りは
畜産農家が多い。また、鹿島港の開発が進んで、エサ工場が集まりました。そして、出荷先
の東京の市場とエサの物流距離が短いこと、暑くもなく寒くもない気候という好条件により、
小美玉市で養鶏業を営む人が増えていったそうです
全国の市町村別比較の鶏卵産出額は1位が小美玉市で153億6000万円、2位は鹿児島県南九州
市の94億1000万円で、小美玉市は約1.5倍の産出額です。3位は広島県庄原市の86億1000万円
です。
小美玉市の一日の出荷量は約350万個。茨城県民全員が1個ずつ食べても余裕がある量です。
毎日出荷されるたまごは、スーパーなどで販売される他に、菓子の材料として出荷されるも
のもあります。市内の養鶏場では、さまざまな種類の卵が生産されています。PR作戦として、
「空の駅 そらら」では、玉子王国まつりを開催するなど「たまご」をメィンにしたイベント
の開催、そして、母子手帳を交付した方へ「初たまご」をプレゼントするなど、「ダイヤモ
ンド・エッグ」としてブランディグし、新たな小美玉市民の誕生を祝っています。
<茨城おみやげ大賞「おみたまプリン」>
小美玉市は個性豊かな「たまごプリン」で町おこしをしています。小美玉市のたまごは、日本
の食卓を支えているだけでなく、美味しいスイーツにも変身しています。ここでは小美玉市内
のプリンを代表して、おみやげグランプリに輝いた「おみたまプリン」を紹介します。常陸の
台地で元気に育った平飼い卵と、風味が豊かなノンホモ牛乳を使用。焼く過程でクリームとプ
リンが2層に分かれ、濃厚な卵のおいしさとなめらかでしっとりとしたクリームの風味を堪能
できる贅沢な一品です。4個入り 2,060円(山西商店)
おみたまプリンの販売店は県内に4件あります。小美玉市内に3件、(①空の駅そらら、②茨城
空港、③不二家小川店(有)すがなみ、水戸市に1件(茨城味撰倶楽部)今ではもっと増えてい
ると思います。
日本のプリンに明確な定義はありませんが、大きく分けると2種類に分かれます。たまごが持つ
「熱を加えると固まる」特性を生かした「カスタードプリン」と、ゼラチンなどで固める「ケミ
カルプリン」です。小美玉市内で作られているプリンの多くは、たまごを使うカスタードプリン。
小美玉市内では7種類(①タマゴぷりん、②七福プリンアラモード、③ながいのやすらぎプリン、
④おみたまごプリン、⑤でせ~るふらん、➅おみたまプリン、⑦なめらかプリン)のカスタード
プリンが食べ歩きできます。鶏卵日本一の街ならではかもしれません。
鶏卵産出額日本一の小美玉市の卵を是非ご賞味あれ!