常陸牛と並ぶブランド力を誇るのが「奥久慈しゃも」。銀座の有名焼き鳥店「バードランド」
で採用されて一躍人気となりました。この奥久慈しゃも、「久慈」なので岩手県久慈市産かと
勘違いされているかたも多いのですが、正真正銘、茨城県の名産品なのです。
漢字で書くと「軍鶏」と書くとおり、しゃもは闘鶏で使われるほど闘争本能の強い鶏です。そ
のため,肉質の締まりが良く,美味しさが凝縮され、ブロイラーなどの普通の鶏肉では味わえ
ない野趣あふれる旨味と歯応えを楽しめます。特に奥久慈しゃもは低脂肪でヘルシーなのに加
え、肉の旨味が濃く,都内の料理人から指定買いされるほど美味しいと評判です。じっくりと
時間をかけて育てた、とびっきりの美味しさがつまっています。今回は茨城県が誇る「奥久慈
しゃも」を紹介します。
<日本3大地鶏とは>
農林水産省では「地鶏」とは、日本の在来種の血を半分以上継いでいる鶏と定義されています。
現在全国に38種が認定され、 飼育内容まで厳密に管理されています。この中で、日本を代表す
る3大地鶏と称されるのは、茨城県の「奥久慈しゃも」、秋田県の「比内地鶏」、愛知県の「名
古屋コーチン」、鹿児島県エリアの「薩摩地鶏」あたりです。
<食用しゃもの定義>
しゃもは、闘鶏用、観賞用、または食肉用の鶏の一品種です。江戸期にタイからの輸入種と伝え
られていますが、日本国内で独自の改良育種を施され、1941年には日本特有の畜養動物として、
国の天然記念物に指定されています。また、日本農林規格においては、鶏の在来種という扱いに
なっています。しゃも(軍鶏)という名前は、もともと鶏のオスを戦わせる競技である闘鶏専用
の品種であり、オスの闘争心が非常に強いことが由来です。見た目の特徴としては、三枚冠もし
くは胡桃冠で首が長く、頑強な体躯を持っています。羽色は赤笹、白、黒などさまざまで、身体
の大きさによって大型種、中型種、小型種に細分化されます。元々闘鶏用だったため、闘鶏で勝
てないオスは食用に回されていました。このとき食べられていたのは軍鶏鍋というものであり、
こちらの料理によって軍鶏肉の美味しさが認められ、他の地鶏と軍鶏を掛け合わせた“シャモオト
シ”という品種も、軍鶏鍋に使用されるようになりました。闘鶏用の軍鶏には肉が硬いという特徴
があり、通常の鶏が持つ肉質の柔らかさを得るために、通常の鶏と軍鶏の交配は盛んに行われてい
ます。例えば、地鶏として認められている品種で、軍鶏の血が入っているものには、主に以下が挙
げられます。
・青森ロックシャモ・川俣シャモ・やさとしゃも・奥久慈シャモ・栃木しゃも・タマシャモ・彩の
国地鶏タマシャモ など
つまり、しゃもは地鶏が成立するための鶏の一品種であり、しゃもの名を冠している地鶏も多い
ことから、地鶏というカテゴリーの中の1つと捉えることもできるということです。
<しゃも肉の味の特徴>
大きな特徴といえば、やはり強い旨みが挙げられます。脂分は少なめでサッパリとしていますが、
濃厚な味わいが出るため、スープで楽しむ料理や、野菜をふんだんに使用する料理との相性は抜
群です。また、肉に締まりがあり、コリコリとした小気味良い食感が楽しめるのも魅力です。ち
なみに、江戸時代に流行した軍鶏鍋は、農家などが副業で飼育していた食肉用のシャモオトシ
であり、意外と現在の地鶏肉に近かったのではないかと言われています。
<奥久慈しゃもの豆知識>
1.「軍鶏」闘うニワトリ・しゃも
しゃもは、江戸時代にシャム(現在のタイ)から輸入されたニワトリの品種で、原産地名が名前の
由来です。しゃもは、闘鶏用ニワトリであるため、気性が荒く、群れで飼うのは難しい種ですが、
肉・卵ともに味がよいため、そこで闘争心を抑え、繁殖力があるよう茨城県養鶏試験場で改良を加
え、できたのが「奥久慈しゃも」なのです。肉質は低脂肪で歯ごたえがあり、ブロイラーの水っぽ
い歯ごたえのない肉とは違い、煮て良し焼いて良しです。「肉の味を最高に、産卵率・育成率を高
く」という目標を掲げて誕生した奥久慈しゃもは、この地域特有の血統を持つ地鶏です。
2.こんなところにこだわっています。
奥久慈しゃものこだわりは飼料です!飼料はすべて「奥久慈しゃも生産組合」で管理され、安定し
た品質の鶏肉をみなさんにお届けしています。飼料はおいしさを追求して研究を重ねられているほ
か、近年では地元のお米も転嫁され、さらに安全・安心なお肉の生産を目指しています。
3.昔のしゃもの味が残っている
「脂肪分が少なく緻密でしっかりとした歯ごたえ、ジューシーで深いコクのある味わい」奥久慈し
ゃもの肉質を評する言葉は一貫しています。一般的な鶏(ブロイラー)と比べ、脂質は約40%、カ
ロリーは約80%と、低脂質、低カロリーは数字にも表れており、その肉質の良さから多くの料理人
の方々に選ばれています。また、奥久慈しゃもはブロイラーと掛け合わされていないことから、
「昔のしゃもの味が残っている」という、日本を代表する地鶏の最高傑作のひとつと評価されてい
ます。
4.オスとメスでは肉質が異なる
オスとメスでも肉質は大きく異なります。大子の割烹料理店・弥満喜のHPには「オスは、奥久慈し
ゃもの特徴のひとつである歯ごたえが、一層しっかりとしています。それに比べメスは、もっちり
とした適度な弾力が魅力です。試行錯誤した結果、弥満喜の料理にはメスの肉の方が合うとわかり、
いまはメスのみを使用しています。また肉は生の新鮮なものにこだわり、冷凍ものは使用しません」
とかなりのこだわりが記述されていました。
<食用しゃもの生産地>
東京都・茨城県・千葉県・青森県・秋田県・高知県のみが、しゃもの正式な産地とされています。こ
の内、茨城県は常に上位3位の生産量をキープしています。「しゃも」として認定されるのには厳密な
査定をクリアしなければならないので、自ずと生産地は限られてくるようです。
< 「奥久慈しゃも」ってどんな鶏>
奥久慈しゃもを生産している茨城県の奥久慈地方とは関東平野の外縁にあたり、阿武隈・八溝の2つの
山系に囲まれた山間地域です。自然豊かで清澄な環境ですが、斜面が多く大規模な農耕には適さない
土地柄という地理的な理由もあり、古くからしゃもの飼育が行われてきました。昭和50年代に入り、
大子町の有志により、茨城県畜産センターの技術協力のもと新たな鶏の品種の育種が始まりました。
気性が荒く、長期間の飼育が困難といわれるしゃもの中から、少しでも群れ飼育が可能なやさしい性
格のしゃもを選び出し、その中から食味の良さを引き出したオス系を選抜し、一方では、肉付きが良
く味に定評がある名古屋コーチンと、生産性の高いロードアイランドレッドを掛け合わせたメス系の
交配種を作って、オス系と交配させる研究が進められました。その結果、闘争心を弱めて群れで飼え
るようになり、この奥久慈地域で飼育されるようになりました。この交配は前例がなく飼育方法は手
探りで始まりましたが、生産組合が飼育研究を重ね、独自の生産方法が確立されました。こうして誕
生した地鶏が「奥久慈しゃも」なのです。
<育て方が違う>
寒暖の差が大きい奥久慈大子で、1㎡あたり10羽以下のゆったりした飼育密度で、気性の激しいしゃも
の野性味を上手にコントロールし、ストレスをかけずに育てています。飼料には動物性タンパク質を使
用せず、穀物や青菜を中心に、ヨモギなどの滋養成分や海藻由来の天然ミネラル等を配合した低カロリ
ーの専用飼料を与えています。ブロイラーは飼育期間約50日で3kgほどに育ちますが、奥久慈しゃもは
オス120日で2.6kg・メス150日で2.1kgと比べ物にならないほど手間暇かけ、充分な運動をさせながらゆ
っくりと育てています。地鶏と呼ばれるものは全国に100種以上いますが、ブロイラーとのかけあわせ
のものが多く、飼育期間もほとんどが80日以内で、100日を越えるものは奥久慈しゃもや比内鶏など数
えるほどです。生産者が手間を惜しまず、良質で立派なしゃもをつくるために重ねてきた工夫が、現在
の奥久慈しゃもの評価につながっています。
<鶏としては日本で初めて、「地理的表示(GI)保護制度」に登録されました>
昭和60年(1985年)には本格的に生産、販売が開始され、生産量も徐々に安定し、料理人を中心に高い
評価を得るようになり、昭和63年(1988年)には、「全国特殊鶏(地鶏)味の品評会」で全国10種の地
鶏の中で、第1位に選ばれました。現在でもその評価は衰えることなく、レストラン等を格付けするミシ
ュランガイド東京でも、食材として高く評価されています。平成30年(2018年)には、鶏としては日本
で初めて、「地理的表示(GI)保護制度」に登録されて、日本を代表する地鶏となりました。
※地域には,伝統的な生産方法や気候・風土・土壌などの生産地等の特性が,品質等の特性に結びついてい
る産品が多く存在しています。これらの産品の名称(地理的表示)を知的財産として登録し,保護する制度
が「地理的表示保護制度」です。
奥久慈の大子町には、『奥久慈しゃも』を味わうことができる飲食店が多数あります。大子町内の飲食店
・旅館等が奥久慈しゃも料理で地元をあげて盛り上げようと発足した「大子よかっぺ倶楽部」。育ちのよ
さは味に出る。を合言葉に、鍋や親子丼など多彩なしゃも料理を提供しています。是非、観光で大子町へ
お越しいただきたいですね。また、グルメ探訪スタンプラリーやイベントでのよかっぺ倶楽部の出店など
もありますので要チェックです。「奥久慈しゃも」のその特徴を活かすには、「すき焼き」のように濃い
だしで煮炊きするのがいちばんです。
これからの季節ですね。「奥久慈しゃも」の美味しさを、ぜひ家族そろって味わってください。