新聞の地方版概要です。「茨城県龍ケ崎市の蛇沼のほとりにある大正時代に建設されて、
現在は廃屋となっている赤レンガ西洋館が、「旧竹内農場赤レンガ西洋館及び竹内家文書」
の名称で龍ケ崎市の市民遺産として1月に認定され、4月から自由に見学ができるようにな
りました。建物の保存を求めていたNPO法人は、西洋館の竣工100周年を記念した冊子を
制作。7日から無料配布を始めた」、この記事と掲載されていた赤レンガ西洋館の写真を
見た時、あの廃屋の赤レンガ西洋館が壊されずに保存されることになったのだと、思わず
拍手をしてしまいました。
昨年(2019年7月22日)のブログで「環境破壊で甦った、大正時代の竹内農場西洋館」と
題して、この赤レンガ西洋館の存在を紹介しました。内容としては竹藪と樹林の中に埋も
れて、ほとんど人の目に触れることがなかった赤レンガ西洋館を、新たなウォーキングル
ートを探求するために、あえて樹林に分け入った時に偶然発見したおとぎ話のような出会
い、そして、昨年、隣接地にメガソーラーができたことで、西洋館の敷地にも手が加わり、
覆い隠していた竹藪や樹木の一部が取り払われて、簡易的な整備がなされて森の中からそ
の一部の姿が現れた様子を記しました。あれから1年近く経過しました。報道でこの西洋
館が取り上げられるのは久し振りです。内容は心配していた「撤去」の報道ではなく、逆
に市民遺産として認定されて、この地で保全管理されることになったことの紹介でした。
長い年月、忘れられた存在としてひっそりと藪の中で佇んで、ただ朽ちていくのを待つだ
けの状態だった、大正時代建設の赤レンガ西洋館の廃屋が、蘇って陽の目を見ることにな
ったのです。こうした形でこの西洋館が存続されることを望んでいたので嬉しいニュース
でした。
建物の保存を求めて活動してきたのはNPO法人「龍ケ崎の価値ある建造物を保存する市民
の会」の皆さんで、西洋館の竣工100周年を記念した冊子を制作して無料配布しています。
西洋館は一部2階建て。農場を開設し、建設機械大手「コマツ(コマツ製作所)」などを創
業した竹内明太郎(吉田茂元首相の兄)が1920年(大正9年)に別荘として、この地に建
てたものです。赤レンガは渋沢栄一が設立に関わった日本煉瓦製造の工場(埼玉県深谷市)
で生産され、同じレンガが東京駅丸の内の駅舎にも使われています。報道によると市が竹
内家の親族から譲り受け、同家から寄贈された農場の庭園設計図や西洋館完成時の写真な
どの資料とともに市民遺産に認定され、自由に見学してもらおうと、建物の周辺にフェン
スを張って説明版を立て、駐車場も整備して今年の4月から公開されたとのことです。
記念冊子はNPO法人が市の調査を踏まえ、農場の歴史や西洋館の建築様式、現状などを1年
がかりでまとめたもので、前田理事長は明太郎の出身地・高知県宿毛市を訪ねて足跡をた
どり、竹内鉱業は傘下の遊泉寺銅山跡(石川県小松市)を調査。明太郎が炭区を拡大した
茨城無煙炭鉱の遺構(北茨城市)をメンバーらと調べた結果も詳しく載せている。又、戦
前から戦後にかけ、西洋館を借りて住んだ女性の貴重な証言も紹介している。
私は報道を読んで直ぐに住まいから歩いて、この旧竹内農場赤レンガ西洋館に向かいまし
た。5000歩ほどの距離です。西洋館に行くのは随分と久し振りです。途中及び近隣に見る
べきものがないので、足がなかなか向かわなかったのです。西洋館は廃業したガソリンス
タンドの脇を左に曲がると、遠くに大きな森林があり、その樹林が目隠しとなり、外から
は人の目に触れずにひっそりと佇んでいるはずです。私は目印としている廃業ガソリンス
タンド脇を左折しました。そこで目を疑いました。遠くに見える森林の一角が伐採されて、
曲がり角の立ち位置からでも赤レンガ西洋館の姿が見えたのです。なるほど、市は市民遺
産となったことで力を入れて、建物の周辺をきれいにしたようです。
廃屋の西洋館の正面に到着しました。敷地内はきれいに整備され、駐車場ができていまし
た。建物も新しいフェンスで囲われていました。そして、建物の内部に目を転じると、建
物の周辺や内部にまで自生していた巨木が切り払われていました。この建物を背景とした
当時の写真が残されています。その写真を思い出した時、大正時代にこの西洋館で働いて
いた人々、住居として住んでいた方たちの姿や当時の空気感が思い浮かびました。
この旧竹内農場赤レンガ西洋館の詳細については、NPO法人発行の冊子に詳しく記載さ
れています。(前報のブログでも触れていますし、ホームページも参照)
街づくりにおいて、保有する伝統芸能や歴史遺産を大切にすることは、その町の文化レベ
ルの尺度を測るバロメーターになると思う。我が街がこうしたことに力を入れてくれるこ
とは本当に嬉しいことです。
※龍ケ崎市の市民遺産は、市が後世に伝えたい「お宝」を条例に基づき認定する制度で、
2015年から始めた。現在①ダンゴ塚祭り②「龍ケ崎とんび凧」③宮渕町千秋盆綱
④ほおずき市⑤豊田町の水神祭り⑥鈴木草牛の屏風画⑦屋代城址五号土塁⑧三條實美
揮毫「長興学校」扁額及び飯塚古登頌徳碑⑨若柴八坂神社の祇園祭⑩八代富士神社の
初山⑪山岡鐵太郎筆「龍崎学校」⑫女化神社の親子狐の石像」⑬旧竹内農場赤レンガ
西洋館及び竹内家文書など13件が認定されている。