すずしろ日誌

介護をテーマにした詩集(じいとんばあ)と、天然な母を題材にしたエッセイ(うちのキヨちゃん)です。ひとりごとも・・・。

まなざし

2016-10-22 21:14:04 | じいとんばあ
 たとえば
 ばあやんが 宇宙の言葉しか話せなくなっても
 君たちは まっすぐに そのまなざしを向ける
 ばあやんの言葉を 聞き漏らすまいとするかのように
 静かに じっと傾聴する
 
 たとえば
 じいやんが ご飯をあげ忘れたりあげ過ぎたりしても
 君のスピードで 歩けなくなっても
 君たちは しっぽを振って 精一杯の笑顔を向ける 
 これ以上 愛してるの表現がないくらい
 正面から ぶつかっていく

 意図する事を 汲み取ろうとすればするほど
 固い頭では宇宙言語は理解できなくて
 何となく 話をあわせたり
 自分なりの解釈を当てはめてみる
 
 本当は
 君たちのように 同じ目線で聞いてあげられたらいいのに
 どうしても 分かりやすい言葉に置き換えようとする
 
 君たちのまなざしは
 怖いくらいに澄んでいて
 今度は 私の心を見透かされる

 このまなざしが痛いうちは
 きっと・・・
 まだまだ 君の域にはなれないのだね


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誰よりも味方であれ

2016-08-16 22:06:09 | じいとんばあ
 あなたの心に寄り添いたい
 あなたの苦しみを 取り除いてあげたい
 そう思う心に嘘はないけれど・・・

 私の心が軋む
 辛いな・・・と思った時点で
 自分の無力と 薄情さに嫌気がさす

 誰よりも味方であれ
 そう教えてくれたのは誰だったか
 誰も味方がいない中 自分だけは最後の砦であれと

 けれど
 あなたを信じてあげることは
 そのまま誰かを嘘つきにする事で
 そのまま誰かを傷つける

 どちらにも嘘はないと証明したいのに
 そんな方法はあるはずもなく
 お互いの中の「真実」だけが混乱し
 「どうして分かってくれないの」を繰り返す

 寂しさが無ければ
 もしかしたら解決する事もあるかもしれない
 けれど 孤独だけは他人がどうこう出来ない事もある

 あなたの笑顔を観ていたい
 あなたの怒りや悲しみは
 どこかに 捨ててしまいたい

 けれどどうする事も出来ぬまま
 ため息だけが増えていく

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時の流れ

2016-04-19 21:10:35 | じいとんばあ
 毎日同じように新聞を眺めるあなた
 油断すると 家に帰ろうとしてしまう
 笑顔は昔と変わらなくて
 かつて あなたが介護していたお母さんとそっくりで
 私が新人だった頃
 あなたは 介護する側だったのに・・・

 身体の弱いあなた
 長い間 高齢のお姑さんの世話をして
 自分の時間が持てるようになってから
 あなたは ちょっとずつ 違う世界の住人になった
 お姑さんは まだまだお元気で
 こればかりは 順番通りにいかないな・・・と いつも思う

 畑をしているあなたも
 カラオケが得意なあなたも
 奥さんの手を引くあなたも
 私に エッチな話を教えてくれたあなたも

 みんなみんな むかしのあなたではなくなった

 それが 寂しかったり
 それが 愛しかったり
 多分 他人の私より
 ご家族はもっと そうだろうから

 今 私に出来る事を
 少しでも考える事が大事なのかな
 出会った頃のあなたを思い出すように
 初心・・・思い出せるかな・・・


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鉛色の心

2015-09-08 21:07:50 | じいとんばあ
 むかしむかし その昔
 人が勝手に決めた 「身分」というものがあったとさ
 何の罪もないのに そこに生まれおちただけで
 ずっとずっと 辛い思いをしてきた人たち

 「家がボロだから」
 そう言って 子供の頃 友達を家に呼ばなかったという友人
 それが何故かすごく不思議だった
 「だって家の場所が分かるから」
 随分経って 涙ながらの告白を聞いた・・・

 「あの子と結婚するなら首つって死ぬ!」
 相手の母親に泣かれて 結婚をあきらめた

 それでも 沢山を乗り越えた友人も 観てきたけれど
 乗り越えなくてはならないことが やっぱり理不尽で

 田舎は そしてお年寄りは
 特に 差別意識が根強くて
 まさか・・・と思う人にも 根っこがある

 昨日まで 優しかったのに
 昨日まで 笑顔だったのに
 訳も言わず 門前払いだったと
 それしか・・・思い当る事が無いと
 ヘルパーさんはつぶやいた

 悲しくて 悲しくて 胸が苦しくて
 でも 間違っていても
 それを 正すことは出来なくて 
 代わりに ごめんなさいを繰り返す

 いつになったら 無くなるのだろう
 差別

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並んで座ると・・・

2015-05-19 22:12:30 | じいとんばあ
 エレベーターを使わずに 上から順に降りて行く
 頭の中で 次の仕事を箇条書きする
 小さな長椅子でおしゃべりをするばあやん二人
 小走りに近寄って そっと隣に座ってみる
 まるで自分の孫みたいに 笑顔でよしよしとふざけてくれる
 並んで座ると ほっとする

 いつもは頭が痛くって ねじり鉢巻きで横になる
 今日はお天気の縁側で 薄眼を開けて日向ぼっこ
 「いいお天気ですね」
 ばあやんの話はいつだって愚痴だけど それでも今日は笑える話
 並んで座ると あったかい

 山の中の一軒家で 年老いた猫と暮らす日々
 「猫が先かな?うちが先かな?」
 食の細くなった猫を心配しつつ そう言って笑い飛ばす
 ありったけのお菓子とお茶を勧めては
 「たまのお客じゃ、食べていけ。」
 並んで座ると 切なくなる

 私に出来る事は何だろう
 私は貰ってばっかりだ
 ヒリヒリと ピリピリと チクチクと
 痛みばかりを感じる日々
 でも・・・
 並んで座ると ちょっと頑張れる・・・

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ふきのとう

2015-02-24 21:30:47 | じいとんばあ
 進行性の病気で 症状は重くなっていく
 ようやく 手を尽くしてくれる先生に出会って
 色々試しても 結果が出るまでには時間がかかる
 生活が 現状が 猶予をくれない・・・
 
 つい先週歩いていた ついこの前笑顔だった
 それが今日 もう歩けない
 突然突き付けられた 看とりと言う現実
 ウソみたいに 早回しの動画のように
 目まぐるしく事態は変わる・・・

 家に帰りたい ただそれだけだった
 寝たきりのおじいちゃんを
 心臓の悪いお婆ちゃんが介護する
 並大抵の覚悟じゃない
 けど
 いつだって二人とも笑顔だ

 どの人も どの家族も
 みんなみんな精一杯
 アタフタするのは プロ失格
 冷静に ちゃんと手助けしていかなきゃ

 思いはあっても 思うようにはいかない
 じりじりする思いと
 ちりちり痛む頭とで
 何から手をつけたらいいの
 冷静さを取り戻そうと箇条書きする

 退院してひと月
 今日初めてお風呂に入れた
 リスクもある 不安だらけのお風呂だけど
 はぁ・・・気持ちええ・・・
 そのため息交じりの笑顔が
 やって良かったと感じさせる

 ふと見ると 石垣にふきのとう
 辛くても 厳しくても
 絶対 春は来る・・・


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鉛色の空と・・・

2015-02-05 21:37:13 | じいとんばあ
 続く時は 続くもんじゃよ
 ほんなもんじゃよ 寒い時期じゃしな・・・

 分かってはいても 訃報が続くと心が重い

 余命を言われた病人でも
 覚悟があっても辛いけど
 予期せぬ訃報はずしりと重い

 渡し忘れた予定表
 忘れたことなんてなかったのに・・・
 1週間すればまた会えるからと
 行かずにいた事が悔やまれる
 もしかしたら それが神様のサインだったのかもしれないのに
 私が見逃したのかもしれないのに・・・

 風も雪も運んで 空は鉛色
 今あなたは どの空にいますか
 

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ココロガ オレソウナ ヒ

2015-01-08 22:49:49 | じいとんばあ
 本人のために 家族のために
 それを考えないわけじゃない
 だけど 思うようにならなくて
 対策は 後手後手で
 一体私は 何をしているのだろう・・・

 イニシアチブは 誰が取るの?
 命にかかわる仕事だよ
 医師の言葉に ぐうの音も出ない

 走り回って 何とかしなくちゃって相談して
 自分のスキルの低さに
 今更ながら落胆する

 一日に何人かのお医者様と話をして
 それぞれ 担当様の相談をする
 「この記録は誰が書いたの?」
 医師の言葉に緊張が走る
 「わ、私です。」
 「そう、良く書けてるね。」
 その一言に救われた・・・

 手立ての見えない時もある
 でも ほんの少しでも光が見えたら
 それを頼りに頑張れる

 残業の末に ようやくパソコンに向かったら
 問題が発生して スタッフや上司が奔走する
 責任の一端のあるスタッフが
 「心が折れそうです」
 そうつぶやいた・・・

 ココロガ オレソウナ ヒ

 この仕事をしていたら 
 みんなぶつかる壁

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寒い雨の日

2014-11-26 21:47:09 | じいとんばあ
 雨の中 山は秋の終わりを告げる頃
 ようやく それらしく色づいてくる
 山の中 本当に空気まで違うような山の中
 狭い狭い コミュニティーで
 寄り添うように 暮らす人々

 みんな それぞれ歳をとって
 みんな それぞれ「自分の中」の真実で生き始め
 少しずつ 少しずつ ずれていく思いたち

 信頼していた人が ある日泥棒になる
 仲良しだった人が ある日裏切り者になる

 みんな真面目な顔で 自分の真実を話す
 そのどれもが 嘘の無い話し方で
 聞いているものを翻弄する

 せめて
 幽霊とか 宇宙人とか 死んでしまった人だとか
 そんな途方もない妄想話をしてくれたら
 簡単に解決することなのに・・・

 助け合って 喧嘩もして 許し合って
 そうやって暮らしてきたはずなのに
 物忘れは 優しさばかりは運んでこない

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どこでもいいってわけじゃない

2014-07-31 21:00:09 | じいとんばあ
 一人では暮らせない
 物忘れも酷くなって ご飯だって食べられなくて
 お薬だって飲めなくて

 でも 行くところが見つからない
 「親子なんだから 家族が看ればいいじゃない」
 そうする事が出来るなら 誰も悩んだりしないのに

 空いてるところがありました
 受け入れ先がありました
 良かったんだけど それだけじゃ・・・
 やっぱりそれだけじゃ・・・

 自分の親だもの 納得行く場所を探したい
 だから 決断できない 決められない
 だけど どこかに決めなくちゃ
 本当に このままじゃ 置けないわけで
 出来るだけ 出来る事を考えても
 なければ空しい説得をしていくしかない

 どこでもいいってわけじゃない
 もちろん
 どこでもいいはずがない

 折り合いをつけるって
 辛い作業だと思う・・・


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