すずしろ日誌

介護をテーマにした詩集(じいとんばあ)と、天然な母を題材にしたエッセイ(うちのキヨちゃん)です。ひとりごとも・・・。

言い放し(バックナンバー)

2007-01-31 16:18:20 | うちのキヨちゃん
 キヨちゃんは友達を作るのが得意である。もともと明るく話好きであるため、キャラさえ把握していれば、楽しい時間が過ごせる。
 しかし、娘の私がまだ驚くことがあるのだから、友人知人に到ってはその何倍もあることだろう。
 ある日共通の知人に呼び止められた。
 「ちょっと、お宅のキヨちゃんっちゃ!」
あ、何かやらかしたな・・・と思いつつ話を聞いた。
 その日キヨちゃんは店先で熱心に花を見ていた。声をかけてきた知人にキヨちゃんはつぶやく。
 「きれいけどなあ、なんぼ(いくら)するんだろ?」
 「ほな、聞いてきてあげるわ。」
そう言って彼女は、親切に花の値段を聞きに入り、戻ってみるとキヨちゃんがいなくなっていたというのである。そう。そのわずかな間にバスに乗って帰ってしまったのである。
 「ごめんよ。お母さんはいつも言いっぱなしなんよ。」
そうなのである。だいたい耳が遠いこともあり、こっちの答えは待っていないことが多いのだ。我が家で質問を投げかけられ、答えようとすると姿がなく、
 「おーい。言い放しかい」
と突っ込むことは日常茶飯事である。
 父の通院に付き添ったりすると、ドクターの説明に誰よりも熱心に大声で
 「はあ!へえ!そうですかあ!」
と受け答えするのだが、実のところ全く聞こえていない。
 家でいても夜トイレにしても風呂にしても、入っていると必ずと言っていいほど電気を消される。一応いるかどうか
「おるん?」
と声掛けはしてくれるのだが、答えは待たずにパチンとやるのだ。
 こっちも十分承知しているものだから、キヨちゃんの気配を感じるとすぐに
 「入っとるよ、入っとるよ。」
と叫ぶのである。そうすると決まって
 「知っとるわ。うるさいなあ。」
と言われてしまうのである。全くどうしろというのだろう。


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崖っぷち犬に群がる軽薄ミーハー!!!

2007-01-29 21:48:50 | ひとりごと
 今日、友人からメール。

「ニュース見た?崖っぷち犬の引き取り手に109人応募。11人が抽選会に来て、当然10人は外れる。泣く人までいたのに、崖っぷち犬の姉妹犬の引き取り手は、誰もおらんかったんで!信じられない!同じような犬で、同じ境遇なのに!」

 メールを観て、私も絶句した。109人、おそらくほとんどがミーハーで、有名になったあの犬を欲しかっただけだろう事は予想が付いた。そうでなければ、近所の保健所でも貰えるのだから。しかし、そうは言っても、全員がそうではなかろう。「ミーハーに任せられない、私が責任を持って!」と考えた人も一握りはいるはずだ。なら、外れても、これをご縁に、姉妹犬、もっと言えば違う犬も貰ってくれるかも・・・と考えていた。

 ふざけるな!!!と叫びたいくらいだ!ニュース映像を見て、自分たちの姿をちゃんとみられるの?恥ずかしくないですか?抽選に当たった人がどんな人か分からないが、ちゃんと育ててくれることを、強く願う。他の犬よりとてもとてもデリケートで、大変なはずなのだから。

 かつてある友人は、人に傷つけられて、誰も信じられない成犬を拾った。それは本当に大変だったようだ。犬好きの私ですら、全く受け入れてはくれなかった。それを愛情込めて、根気よくねばり強く、彼女は愛し、育てた。傍目にも分かるほど、その犬は野良犬の顔から穏やかなペットの顔になっていった。私が行くと、私が寝静まってからこっそりとのぞき見るまでにはなった。あまりに人間のしてきたことがひどくて、懐いてはくれない。彼女だけを愛して生きている。
 
 そんな覚悟があるのだろうか?「これ、例の崖っぷち犬ですの!」と自慢なんかしないでほしい。マスコミもそっとしておいてほしい。あの犬が騒がれることで、他の不幸な犬たちも少しは里親が現れるかも・・・と思ったから、過熱報道も痛み分けと思ったけど、こんな情けない結果が出ると、お粗末すぎて笑うことも泣くこともできない。

 いえ、抽選会に来られなかった100人近い人の中には、近所の保健所や「里親を探す会」なんかに足を運んでくれたのだと、信じたい。そして、外れたことのショックから「姉妹犬」にまで気がまわらなかった人たちも、いずれ本当の意味で、犬の救済を考えてくれると信じたい。
 そして、このばかげた大騒ぎを傍観している多くの人たちも、考えるいいチャンスを貰ったと思うのだ。みんな!もっと優しくなろうよ。もっと命について考えようよ。
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手Ⅱ(バックナンバー)

2007-01-26 23:51:57 | じいとんばあ
    手Ⅱ

 立ち止まったまま
 ふっと 虚しくなることがある
 仕事が嫌いなわけじゃない
 手応えのなさに 嘆いているわけでもない
 介護に関係のない 雑多な人間関係や
 耳を塞ぎたくなるような噂や
 口にするのも汚らわしい話や 
 目を覆いたくなるような事実
 
 何でこんなことに
 心を煩わされなきゃならないの
 小さなささくれがささくれを呼んで
 ある日 心が血を吹き始める
 もう嫌だ もう嫌だ
 毒づけば 少しは心が軽くなる?
 
 「なあ・・・」
 思いがけず 握られた手
 その手は 私を必要としていた
 ああ
 この手の為に
 もう少し頑張ってみようと思う

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ハッピーバースディ

2007-01-25 19:29:00 | うちのキヨちゃん
 本日はうちのキヨちゃんの誕生日である。何をプレゼントしようか、悩んだ結果、ものすごく軽い素材のベストにした。化繊綿だがダウンなみに暖かく着てる感じがしないくらい軽い。
 あまりに良かったので、つい誕生日でもない父の分まで買ってしまった。ああ、私の服を買う日は遠い・・・。
 おめでとうと伝えると、自分の誕生日はすっかり忘れていたようで、びっくりしていた。さっそくお揃いで着てみる。なかなか似合っていた。本人もご満悦。
 「父ちゃん、うち自分の誕生日や忘れとった。うれしいなあ・・・。」
そう言って喜んでくれたので、私も嬉しかった。
 その時しみじみカレンダーを見ながら、キヨちゃんはこう言った。
 「うちも今日で満25歳かあ・・・」
しばしの絶句の後
「厚かましいにも程があるぞ!!」
と思わず大声で突っ込んでしまった。たぶん25日とまぜこぜになったに違いない。
 大笑いしながら彼女は
 「えっと、で、うちは何歳にんるんだっけ?」
 まだまだ長生きしそうなキヨちゃんである。
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霜柱・・・

2007-01-23 12:12:33 | ひとりごと
 この暖冬ですっかり忘れていたけれど、子供の頃よく踏んだ「霜柱」はどこへいったのだろう?もっとも、今は田舎でも道が舗装されていて、道がぬかるむとか、霜柱がたつなんてありえないのかもしれない。
 今の子供たちは「霜柱」を知っているのかしら?
 小学校の頃、授業で霜柱を習った気がする。サツマイモとジャガイモの根と芽の出方の違いも、教室で実験したし、ジャガイモの植え方も畑でやった。横浜の友だちに話したら驚いていたから、全国ではなかったのかな?
 つららも普通に軒下に下がっていたし、水の流れ落ちるところには氷柱と言った方がふさわしいりっぱなのもあった。誰がいちばん長いつららをゲットするか、競ったものだ。
 寒いのは嫌だけど、季節独特の風情が無くなるのは何とも寂しい。
 みなさんは 「霜柱」 ご存じ????
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正義(バックナンバー)

2007-01-20 21:24:48 | じいとんばあ
    正義

 法律だぁ?
 人が目の前で 死にそうなんぞ
 そこに医者も看護士もおらんのやぞ
 助けるやろ 普通
 医療行為がどうやとか
 責任がどうやとか
 人 目の前にしたら 考えとれるか
 出来るだけのこと してやったらええんじゃ
 それで 捕まるんなら
 笑って 手ぇ後ろに回されたらええんじゃ

 あなたほどの勇気も
 あなたほどの柔軟さも
 私にはないけれど
 あなたの言葉は 
 心強かった
 ああ・・・
 あなたのような人が
 もっと いてくれたら・・・

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お猫さまのスケジュール

2007-01-18 13:00:28 | ひとりごと
 うちの猫は自由気ままに生きているようで、実は結構時間通りだ。私の勤務状態で、ままならない場合もあるが、それ以外はおおむね同じスケジュールだ。
 まず日中はほとんど寝ている。時々起きては近所を見回る。後はのどが渇いて水を飲む以外はひたすら寝ている。
 困るのは夜だ。私の就寝が何時であろうと起床が何時であろうと、必ず1時~1時半の間に起こされる。「おなかすいたよ~」攻撃である。
 前にも書いたが、とにかくあきらめない。起きるまで、カーテンを引っ張ったり風鈴を鳴らしたり私の顔を叩いたり・・・。で、ご飯を食べたら今度は3時~3時半に「遊びに行くから戸をあけて」攻撃である。そして、5時半~6時「ただいま~!戸を開けて!」攻撃である。
 不規則に慣れているとはいえ、けっこう毎日厳しい。早朝の仕事の時はさすがに「いいかげんにしろ!」と怒ってしまう。今起こされると中途半端なんだよ~と。
 猫でこれだもの、子育てしてる親御さんはすごいな~と思ってしまう。子供の場合起こされてもミルク作ったり、寝るまであやしたりするわけで・・・。
 尊敬します!世のお母さんお父さん!
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魚の目(バックナンバー)

2007-01-15 21:06:24 | うちのキヨちゃん
 長い間、キヨちゃんは足の裏の魚の目に悩まされていた。場所が悪いのか薬を貼ってもすぐにずれてしまい、なかなか完治しないのである。
 ある日仕事から戻ると、父がいつになく真剣に
 「母ちゃんを病院へ連れていけ。」
と言うのである。何事かと問うと、どうやら足の親指に鉄板を落とした為、骨折しているかもしれないというのだ。見るとキヨちゃんの足は真っ青でパンパンに腫れ上がっている。それでも「ことうない(大事ない)ことうない 」と言っていたが、私は無理矢理病院に連れていった。
 何故怪我をしたかというと、父とふたりで鉄板を運んでいたとき、石に乗り上げた魚の目が飛び上がるほど痛く、うっかり手を離したというのである。可哀想だがおまぬけな話である。
 病院でレントゲンを撮って貰うと、案の定骨折していた。
 「これは痛いでしょう。」
と医者(せんせい)が問うと、
 「ええ、前からこの魚の目が。」
とキヨちゃん。
 「ああ、いやいや魚の目じゃなくてね、骨がね、折れてるんですよ。」
さらに説明する医師に、さらに彼女はこう言う。
 「いやあ、骨は別に。痛いのは魚の目で。」
ついに説明をあきらめた医師はギプスを勧めた。しかしキヨちゃんは
 「そんなもんしたら、長靴はけん。畑仕事できん。」
と断ったのだ。
 「いや、痛くてどっちみち仕事にはならんかと・・・。」
医師も困りながらも根負けした。
 結局キヨちゃんはギプスもせず、休みもせず、父と私に止められながら畑へも出て、今に到っている。そして今でも痛いのは魚の目だったと語っている。
 この魚の目には後日談があって、ついに魚の目にも我慢できなくなったキヨちゃんは県立病院を尋ねた。そこのドクターが何をどう勘違いしたのかレントゲンを撮ったのである。彼女の名誉のために断って置くが決してキヨちゃんのせいではない。彼女は「魚の目が痛い」と言ったのだ。当然魚の目だからレントゲンに写るはずもなく。
 「う~ん、これは皮膚科に行って貰おうかな。」
と言われ、千二百円をぼったくられたのである。
 つくづく魚の目には悩まされるキヨちゃんであった。
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じいやんとコロ

2007-01-13 21:50:09 | むかしむかし
 むかしむかし、あるところにとても偏屈なじいやんが住んでおった。じんやんは人付き合いがとても下手で、いさかいも度々じゃった。家族にすら素直になれず、じいやんはいつも不機嫌そうにしておった。
 そんなじいやんも、唯一素直になれるものがおった。それはじいやんが拾ってきた犬のコロじゃった。
 もともとじいやんは大変動物好きじゃった。あれほど人間に距離をおいておったじいやんじゃが、鯉ににわとりに犬に・・・と動物には笑顔で語りかけ、それを家族に見られては気まずそうにしておった。
 そんなじいやんも齢90を迎えた頃から、徐々に体調を崩していった。何度も何度も死を覚悟するような事態に陥り、その都度奇跡的に回復しておった。
 不思議なことに、じいやんと共に年老いたコロもじいさんが寝込むと必ず飯を食わなくなった。そしてじいさんが回復すると同時に飯を食うようになったのじゃった。
 じいやんと同調したのは犬ばかりではなかった。
 1度目じいやんが危ないとき、池の鯉が訳もなく血塗れで浮いておったそうじゃ。2度目はにわとりがイタチに食われてしもうた。そして、そんなことがあるたびに、じいやんは奇跡的に生還しておったのじゃ。まるで身代わりになったようじゃっだ。
 コロはその中でも一番じいやんと同調しておった。髭という髭は真っ白になり、歯はほとんど無いに等しく、昼こんこんと眠り、夜狂ったように暴れた。まるでそれはぼけてしまったじいやんそっくりじゃった。
 いよいよ、じいやんがこの世を去ろうという時、じいやんは突然正気を取り戻し、家族に笑顔とも泣き顔ともつかない顔で、感謝の言葉でお別れを言った。
 そして、じいやんがこの世を去って初七日の夜、コロも静かに20年の生涯に幕を下ろしたのじゃった。
 寂しがりの、本当は寂しがり屋のじいやんの、最後のわがままなのかもしれん・・・。



 以上、久しぶり「むかしむかし」の実話です。本当はとても優しい人でした。
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目(バックナンバー)

2007-01-11 22:14:35 | じいとんばあ
      目

 真夜中 あなたは天井を睨んだまま
 息を止めていた
  まだ 暖かい まだ 心臓は止まってない
 生きて お願い 生きて
 体を揺すって 声をかけて 脈をとって
 もうすぐ 看護士さん来るから・・・
 
 必死の私の目に
 あなたの目が 語りかけた
 もう・・・ほっといてくれ
 もう・・・死なせてくれ

 ひとりで生きて 
 ひとりで死ぬと決めていたあなた 
 悲しいくらいに あなたの目は澄んでいた

 生きるって 何だろう
 死ぬって 何だろう
 生きているから幸せなんて言えない 
 死が不幸とも言えない
 それでも
 目の前で消えそうな命の火を
 吹き消せる人がいるだろうか
 できれば 守りたい

 あるいは 静かに見守りたい

 厳しい現世(うつつよ)を生き抜いた
 あなたの目は
 私のおせっかいを 受け付けなかった
 あなたの目に
 射すくめられた私の手は
 ぴくりとも動かせなかった

 人をひとり見送る度
 いつも 思う
 何をしてあげるべきだったの 




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