うちのキヨちゃんは、何に対しても一所懸命である。ただそれが裏目に出ることも多々あるのも事実である。そしてその結果、割を食うのはたいてい家族である。
若い頃、父が深酒をし、そのまま同じく深酒をした友人と肩を組んで友人宅に行ったまま、戻らないことがあった。心配なキヨちゃんはオロオロと泣くばかり。子供だった私は勇気を振り絞って、雨降る夜の山道を歩いて捜索に出た。墓地の近くではほとんど泣きそうだったが、ほどなく親戚の家で寝入っている父を発見し、無事連れ戻した。
帰宅してみるとキヨちゃんは、何故かロウソクとコップを持って号泣していた。訳を聞くと、彼女はしゃくりあげながらこう言った。
「お前に行かせたけど、どうしても心配で。(私が母親なのだから)迎えに行かないかんと思って、外に出たけど電灯はあんたと父ちゃんが使って無いし。ロウソク点けたら雨で消える。濡れんようにコップかぶせたら、火ぃ消えたぁぁ!!」
ろくに学校に通えなかった時代なのだから、キヨちゃんに理科の実験の知識はあるまい。
また最近ではこんな事もあった。近頃食の細くなった父に、何とか食べて貰おうと、私もキヨちゃんも必死である。ある日、父は体調が悪くスープやおもゆを希望していた。野菜を潰してスープを作り、出勤間際に粥をミキサーにかけようと、担当のキヨちゃんの鍋をみるとなんと一合も炊いているのだ。一合の粥のミキサー食を一体誰が食べるというのだ。私は小言を言ってから出勤した。 さて戻ってみると案の定粥はあまり減っていない。反省しきりのキヨちゃんはこう言った。
「粥はやっぱり多すぎた。スープは飲めたけど、お前の用意したジュース(野菜くだもの)も一口飲んでやめた。」
そうか、ジュースは好物なのに、よほど体調が悪かったのか・・と私はため息を付いた。そんな私にキヨちゃんは
「今日は少し寒かったし、おなか冷えたらいかんだろ?そう思って、ジュースもレンジでチンってして出したんやけど、やっぱりぬくいジュースはまずかったかなあ?」
と真剣に語るのであった。
いつでも、本当にいつでもキヨちゃんは一所懸命なのである。
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若い頃、父が深酒をし、そのまま同じく深酒をした友人と肩を組んで友人宅に行ったまま、戻らないことがあった。心配なキヨちゃんはオロオロと泣くばかり。子供だった私は勇気を振り絞って、雨降る夜の山道を歩いて捜索に出た。墓地の近くではほとんど泣きそうだったが、ほどなく親戚の家で寝入っている父を発見し、無事連れ戻した。
帰宅してみるとキヨちゃんは、何故かロウソクとコップを持って号泣していた。訳を聞くと、彼女はしゃくりあげながらこう言った。
「お前に行かせたけど、どうしても心配で。(私が母親なのだから)迎えに行かないかんと思って、外に出たけど電灯はあんたと父ちゃんが使って無いし。ロウソク点けたら雨で消える。濡れんようにコップかぶせたら、火ぃ消えたぁぁ!!」
ろくに学校に通えなかった時代なのだから、キヨちゃんに理科の実験の知識はあるまい。
また最近ではこんな事もあった。近頃食の細くなった父に、何とか食べて貰おうと、私もキヨちゃんも必死である。ある日、父は体調が悪くスープやおもゆを希望していた。野菜を潰してスープを作り、出勤間際に粥をミキサーにかけようと、担当のキヨちゃんの鍋をみるとなんと一合も炊いているのだ。一合の粥のミキサー食を一体誰が食べるというのだ。私は小言を言ってから出勤した。 さて戻ってみると案の定粥はあまり減っていない。反省しきりのキヨちゃんはこう言った。
「粥はやっぱり多すぎた。スープは飲めたけど、お前の用意したジュース(野菜くだもの)も一口飲んでやめた。」
そうか、ジュースは好物なのに、よほど体調が悪かったのか・・と私はため息を付いた。そんな私にキヨちゃんは
「今日は少し寒かったし、おなか冷えたらいかんだろ?そう思って、ジュースもレンジでチンってして出したんやけど、やっぱりぬくいジュースはまずかったかなあ?」
と真剣に語るのであった。
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