先日、農家の人と話をしていたら、日本人の米の一人当たりの年間消費量は60kg(1俵)を割ったそうである。そんなに少ないものかと、自分の場合を計算してみたら、確かに少なかった。 年間60kgということは、一日に換算して170g。一合強の計算となる。 現代人の米の消費量は驚くほど少なくなっている。
それでは、江戸時代はどうだっただろう?
牢獄の例を見てみる。
囚人ひとりにつき玄米搗五合で、白米にすると一割減の四合五勺であった。これを朝夕の二度に分け、一回に二合二勺五才、盛立ての目方正味八十五匁あたりであった。(中略)副食は味噌汁と糠漬の大根であった。*②より
とある。
囚人でさえこんなに食べていた。
余談となるが、囚人のご飯は大きな丼に盛られ、モッソウ飯と呼ばれた。これが「臭い飯」の語源である。
白石一郎の小説に「元禄武士道」という一風変わった短編小説がある。
そこに大食いの武士が登場する。小説ではあるが、古事を調べた上での内容だと思う。
本人はそれを(大食)を恥じて、人前では決して暴食をしなかったが、一度に七升の飯を喰うという噂であった。真実は、一日に三升の飯を何度にも分けて喰う程度だったが、なまじ本人が隠すので、大食の噂は、かえって誇張されてしまったのである。
三升だって信じられないくらいの量である。主人公星野小五郎は、ばかばかしいとも思える藩同士の意地の張り合いに巻き込まれ、藩命を受けて、一尺あまりの堂々たる鯛27匹、15杯の椀、二升の酒を飲む。*③より
本当にこんなに食べられるものなのだろうか?
振り返って、現代を見てみると、小林尊という人物がいる。
フードファイターと呼ばれる「大食い」の第一人者である。
彼は先日、アメリカで行われたホットドッグ早食い大会で5度目の優勝を自己新記録で達成している。
アメリカの早食いはあくまでも早食いで大食い競争ではないのだが、彼は12分間で53.5本のホットドッグを食べている。回転寿司でもごくわずかな時間に50皿もぺろっと平らげてしまう。時間があったら一体、どれくらい食べられるのか想像もつかない。それでいて、痩躯だから不思議だ。人間は可能性の動物だとつくづく思う。
話がまたまたずれたが、一般の人は米をどれだけ食べていただろう。
1840年の長州藩のものであるが、主食だけで1664キロカロリー摂っていたと記録されている。明治3年の飛騨地区の記録も残っているが似たようなものだ。*①より
カロリーから計算してみると、一日の米の消費量は、三合弱。
囚人は米しか食べられなかったので四合半の米を食べていたことを考えると、米以外のものも口にしていた一般人の場合、きわめて納得できる数字である。
ここ100年で日本人の米の消費量は3分の1になったわけであるが、肥満、糖尿病の人のパーセンテージは激増した。満腹度の割りにはローカロリーな米のことを考えると、当然の結論のような気もしている。
(米の覚書)精米一合は約150グラム
精米一升は約1.5キログラム
米一合は330グラムのご飯になります。 (=590カロリー)
米一升は3.3キログラムのご飯になります。
米はご飯にすると重量で2.2倍、目方(容積)で2.5倍になります。
弁当では少なめでご飯150グラム(生米68グラム)多めでご飯250グラム(米114グラム)
http://www.okishoku.co.jp/siryo.html上記は、沖縄食料HPより
①人口から読む日本の歴史 講談社学術文庫 亀頭宏
②江戸町奉行所辞典 柏書房 笹間良彦(名著です!)
③幽霊船 新潮文庫 白石一郎
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