テレビ画面には空港で別れを告げる人達の姿が映っている。
山口で自衛官になるために故郷を出るバスケ部主将だったと云う若者には沢山の後輩部員が涙。
神奈川の大学へ進学する若者には「絶対逢いに行くからね」と云う彼女。多分浮気はするなよと云うトドメの一言だ。
送る側には涙がみられるが、送られる側は別れの辛さと同時に未来へ向けての緊張と不安が交錯している。
自分の別れの時はどうだっただろうかと過去を振り返る。
「行くからね」と声を掛けた時、母は来客中で、「気を付けて」と云った笑顔は少し強張っていた。
昔はキャリーバッグなんて便利なものは無くて、自分で詰めたのだろうか。かなり重いボストンバッグを2つ持ち、10分程の所にある駅まで歩いた。
いつも喧嘩して泣かせてばかりいた姉は駅のホームまで送ってくれ、列車が動き出した時の目は潤んでいた。
そんな姉に私は「じゃぁね」と云うように一度だけ軽く手を上げて目を逸らしたのは私も泣きそうで恥ずかしかったから。
色々なものを捨て去るように車両の速度が増すと、見慣れた街が後ろへ流れた。
線路の分岐ポイントを車輪が越える振動が自分の行く末を変えているようで、未来への不安を煽っていたっけ。