今回の新宿伊勢丹でのお向かいさんは「薩摩切子」の薩摩ビードロ工芸。独特の重みのある工芸品である。江戸切子とよく比較されるが、江戸切子より厚みがあり、ガラス精製からしている処が大きな違いである。ガラスの溶解から色被せ、成形、徐冷の行程が非常に大変である。ガラスの場合は陶芸の様に焼く時だけ、窯に火を入れるのでなく、24時間絶えず火を絶やさないように燃やし続けなくてはならない。その分、カットだけの江戸切子とは値段が違ってくるのは当たり前の話である。色被せにしても、自分の工房でコバルトや金を混ぜて色作りしていくのである。
江戸切子の方が軽快な繊細な模様を切り出すのに対して、厚いガラスを深く切り込んでいくので、ぼかしの模様が作り出せるようである。どちらが良いか?というもんだでは無く、「訳あって、このお値段でス!」と言うところを判ってもらえるか?どうかであろう。営業の坂本さんが「職人が続かないのですよ!一人前になるのに15年かかりますから」と。
120年間薩摩切子は作られていなかった。1851年に薩摩斉彬によって誕生させられたが、「薩英戦争」によってたった10年で途絶えてしまったそうだ。仕事場が無くなった職人達が大阪や江戸に渡り、現在の江戸切子などの下地を作ったようだ。
昭和60年に復元された薩摩切子。2年前には黒切子のカットにも挑戦し、見事作り出している。光を通さない黒のカットには熟練の技術と経験が必要である。