「竹鈴」この小さな小さな作品を見るたびに、ある一人の人を思い浮かべる。今はもうお亡くなりになってしまったが、別府市内の「川上キミ」さんだ。竹業界では知らない人はいない有名な方だ。長年、別府竹製品卸協同組合の理事長をされていた。とても小さな方で身長は150cmも無かったであろう、しかし、存在感は充分。
「竹鈴」は直径2センチほど、たった6本のヒゴで出来上がっており、組み上げたボールの中に小さな鈴を入れ、紐を付けてぶら下げるようにした可愛い鈴である。値段は1個、180円。
この「竹鈴」には経営ノウハウが詰まっている。昭和20年代から30年代に、この竹鈴で一代の財を成したのだ。当時は1個10円くらいで売られていたのか?たいした金額では無い。しかし、この鈴を全国の土産物のルートに乗せ販路を作り、また、主婦の内職仕事として、生産体制を作り上げ、毎月、毎月、何十万個と出荷していった。「竹ヒゴを調達して、生産管理し、販売ルートを作って行く。」文字にすれば、たったこれだけの事であるが、その中には、悲喜こもごもな物語が詰まっている。
自分で企画した作品がどんどん売れる様になって行き、規模が拡大されて行く、鈴に付随して、他の竹製品も販売するようになり、数年後には、別府でも有数な竹問屋に成長していったのである。
私も、この鈴を見ながら「私にとっての竹鈴を育てて行こう!」と。