ご注文の提濫もついに最後の仕上げまでやってきた。波網代の一番細かい網目で、この大きさの作品を作るのは初めてのことである。網目が細かいと言う事は、それだけ薄いヒゴで編まないと目が詰まない。しかし、それでは強度が出ないので、裏側に補強をするなど、いろいろと課題や試行錯誤の連続であった。
私の所では、漆を2回掛けている。1回目で下地を作り、2回目で仕上げの漆と白い埃の様に見えるが、蝋のパウダーを降り掛け、刷り込んでいる。この為、網目が浮き出たような模様をかもし出す。上品な質感と艶を出してくれるのだ。
最後の漆がけは、女性に例えれば化粧の様なもので、仕上げが悪いと品が無い。「良い所へお嫁に行ってくれます様に!」と思いを込めて漆塗りをするのだ。もちろん、どんなに化粧が旨くても、元が悪いとどうしようもないのだが。
漆を塗っていく度に、表情がどんどん変わり美しくなっていく、手間は掛かるが出来上がった作品を手に取るとニコッとするのだ。