熊本の竹屋さんからの注文で、1枚の写真が送られてきた。雑誌に載っていた亀甲編みのバッグを見て、「こんな感じのものが欲しい」との依頼であった。
亀甲編みというのは目の積んだ編み方で、強度もあるので盛皿など平面的な作品に使うことが多いのだが、バスケットのように立ち上がって立体的にするには大変手のかかる編み方である。
勉強のため、ということで引き受けた。工房のミーティングで「誰かこの依頼を勉強するつもりでやってみるか?」と問いかけてみた。若い「E」君が「私、やります。」と名乗りを上げた。
最初の試作品というのは、以前私のブログで「犬のキャリーバッグ」を作った時にも書いたのだが、普段の仕事の3倍くらいの時間と労力を使う。今回も編んでは解き、縁を付けてはやり直し、手をつけるにも何回も何回も付け直した。やっと出来上がったが、試作1作品目ではどうしても 彼は気に入らないのだろう。「もう少しヒゴを薄くして編み目を細かく作り直したい!」と言う。ここは彼の良い所だ。
右が最初に作った作品、左が目を細かくして作った2作目である。職人の立場で見ると左の方が編み目も細かく作るのに大変と判っているのだが、面白いことに、工房の女性陣に「どちらが好き?」と聞いてみると、5人全員が右を選んだ。彼女たちにしてみれば、作る大変さより、自分が持っているところを想像すると右の作品が良いと言う。こんなところが売れる作品になるのか?ならないのか?のヒントがある。