いよいよ、川下りの始まりである。最初は緩やかな流れに乗って気持ちが良い。暫く進むと流れが速く波うった所に突入である。思っきりセールを漕いでいたほうがボートが安定しているそうだ。体が上下に振り回されて落ちそうになるが、必死にセールを漕いで何とかやり過ごす。無事、誰も落ちることなく通過だ。
ガイドの兄ちゃんはガキ大将がそのまま大きくなって来たような感じである。お客を意識して丁寧な言葉使いをする訳でなく、自然体である。真っ黒に日焼けして、何処に目があり、口があるのか?解らない。淡々とした話方には好感が持てた。それと、彼らはエンタティナーでなくては為らない。約3時間のコースの間、我々を次から次へと楽しませてくれるのだ。
木船の船頭さんは急流を避け、舟を転覆させない様にするのが仕事だが、彼らはいかに激しい流れに突っ込みボートを転覆させるのが仕事である。
今回も、何回、ボートが転覆して放り出された事か?でも、楽しい。他のボートに飛び蹴りをして、他のボートの人を落としたり、我々を油断させといて岩に激突してびっくり、とか、でもあくまでも彼らの範疇の中で安全を確保した上での事だろう。
暫く、急流と緩流の中を進んで行くと相当ボートにも慣れてくる。激しい所では1mくらいボートが飛んでいる。悦子もクルムもシンラも大喜びである。遊園地のジェットコースターより、断然迫力もあり面白い。
次に着いた所はダイビングポイント。高さ約7メートルの所からザブーンと川に飛び込むのである。岩場の上に上がってみると、「高い!」「ホントに此処から飛ぶのかい?」 考えてみると7メートルと言えば、ビルの3階の高さがあるのではないか。恐ろしい。上から見ると7m+自分の身長がプラスされるので9m近くあるのだ。高所恐怖症の大川さんや多田さんにも(そういえばどちらも藍染屋さんだな?)飛ばせて遣りたいな!
こんな所から飛ぶのだが、まずは自衛隊チームが次々と飛び込んで行く。彼らは日頃から、こんな事ばかり遣っているから良いのだが、我々は上から覗くと足が竦む。悦子は最初から無理と下から高見の見物である。(低見?)
まず、クルムがあまり躊躇せず飛び込んでいった。次にシンラの番であるが、怖気付いて中々飛び込めない。順番を代わって、私が飛び込むことに。覗くと確かに高い!出来る事なら私も止めておこうかでも、男は辛いよ!息子の手前、此処で怖気づく事は出来ない、何事も無いような顔をして「それー」とは行かない。やっぱー怖わー。1回躊躇する。心の中で、いろいろと葛藤がある。短いホンの数秒の内に、「男として、父親として、でも怖い、もう止めておこうか?デモでも、それでは立場もないし」などなどと考えたのだろう。そして、ザブーン。水から顔を出した時は、さも当たり前に跳んだかの様な顔をして。
何人か順番を後にして、いよいよシンラも意を決して飛び込む番だ。飛び込もうと意識するのだが、最後の一足が出ない。2回、3回、と躊躇している。彼の気持ちの中が良くわかる。4回目、ついに飛び込んだ!「ザブーン!」勝ち誇った様な顔をして、水から出てきた。ちょっと、満足げだ。こんな小さな事だが、恐怖に打ち勝った自分があるのだ。
つづく
竹工房オンセ