竹とんぼ

家族のエールに励まされて投句や句会での結果に一喜一憂
自得の100句が生涯目標です

小半刻外人墓地に秋の暮 流伴

2017-09-15 | 
小半刻外人墓地に秋の暮



横浜は故郷だ
身は都会に住んでいて
故郷は懐かしい句さの匂いがするのが普通だが
私は逆に田舎に現在住んでいる

時折ヨコハマを訪ねるが
外人墓地、港の見える講演は外せない
秋の夕べ小半時は動けない

原句
外人墓地ひとつひとつの秋日影

石畳のひとつひとつに濃い影を発見したのだが
あまりにも句意が平易でおもしろくない
時間の経過を表現しようとしたところ
季語を変えることとなった

秋霖や粗石の列ぶ殉死の墓(き) 流伴

2017-09-14 | 
秋霖や粗石の列ぶ殉死の墓





日光には多数の寺院がある
諸般の大名を祀った寺もあって
その寺の門外に粗い石が並んでいたりする
身分の低い家臣の殉死者の墓である
しとしとと秋の長雨は
彼らをやさしく慰めているかのようだ


原句
首塚や木の葉時雨のしとどなる
首塚を殉死の墓(き)に
木の葉時雨を秋霖とした

知りたるを神妙に聴く菊の酒  流伴

2017-09-11 | 
知りたるを神妙に聴く菊の酒




老いては子に従えは名言だ
幼い子供らに話したり教えたことを
その子供が一生懸命に語っている
初めて聞くふりをして感心してみせる
こんな時の酒は格別な味わいでもある

陰暦9月9日の節供。
五節句の一つ。九の数は陽とされその九の重なることをめでたいとした。
この時群臣に賜る酒を「菊の酒」といい、季語とされる

原句
菊の酒知ってても知らぬふりの知恵

句意は同様だが表意を工夫してみた

黄落の走り根つづく奥の院  流伴

2017-09-10 | 
黄落の走り根つづく奥の院



日光の奥の院は眠り猫の脇から狭い道を上る
この急な坂の風情が四季おりおりになかなか良い
冬の雪道も良いがやはり秋が最も味わい深い
走り根を踏みながら黄落を身に受けてすすむ
行きつくとあっけないほど粗づくりの奥の院がある

原句

走り根の階のぼる紅葉やま


紅葉山を具体的な地名にした
奥の院は日光の外にも共通するだろう

菊花展拍手の外の鼻ほじり 流伴

2017-09-09 | 
菊花展拍手の外の鼻ほじり




菊花展は丹精の菊鉢を持ち寄っての悲喜交々のドラマがある
表彰式では得意の人、失意の人があきらかで切ない

てれかくしの鼻ほじりの彼は得意か失意か
原句
ぽつねんと鼻ほじりなど菊日和

鼻ほじりの人を
菊鉢の出品者にしてみたら面白くなった

龍神の総身はいかに鱗雲 流伴

2017-09-08 | 
龍神の総身はいかに鱗雲



秋天の鰯雲には懐かしい少年期が蘇る
少年時代に補注網を持って
走り回っていた頃の空の記憶だろうか

鰯雲より厚ぼったい鱗雲
いつも竜の鱗のように感じる
空をゆうゆうと泳ぐ竜も澄み切った
秋空の空気を満喫しているようだ
茜色の鱗雲には息をのむ

原句
龍神に空はせまさう鱗雲

「空はせまそう」があまりにも平易だったようだ

間をおかず鷺の降り立つ刈田かな 流伴

2017-09-07 | 
間をおかず鷺の降り立つ刈田かな




窓から見える一面の苅田
昨日の朝はまだ重い稲穂があったのだが

もう稲香に誘われた白鷺が来ている
田圃は鷺にとっては職朝の貯蔵庫だ

稲刈りを済むのをどこかで見張っていたかのように
間をおかずにやってくるのは毎年の事だ


原句

櫓田に間合ひの妙や鳥とりどり

刈田は3日もすれば櫓田に変わる
その頃になると鷺だけでなくたくさんの種類の鳥がやってくる
序列のあるごとく
争うことはない

下向いていよいよ重く秋日傘 流伴

2017-09-06 | 
下向いていよいよ重く秋日傘



写真は句意とは離れてしまったが
夏の日差しを遮る日傘は軽く元気に見えるのだが
秋になるとその日傘は重く感じらられる
黄落の中の日傘は見る目に美しいが
日傘のなかの顔は沈んでみえる
その日傘は主人公の内面を受け止めていよいよ重い

原句

石畳ひとつひとつに秋日影

下向いて石畳の坂道を歩く景
秋の日差しが小さな石畳のひとつひとつに
はっきりとした影をつくっている

秋日影を
秋日傘にしてみたら句全体があたらしくなった

蛇まつりや祖父報恩の奉献旗  流伴

2017-09-04 | 
蛇まつりや祖父報恩の奉献旗




隣町小山市の南端は間々田地区で長村合併以前は間々田町であった
遺跡がたくさん出る地域で江戸時代は日光街道の宿場町として栄えていた
その名残の旧い旅館が残っている

句友はその地域のボスで毎年の「蛇まつり」を仕切っている
彼の祖父の納めた奉献の旗がいつも秋空にたなびいている

原句
古宮に奉献の旗鰯雲
ただぼ報告だったものを
句友の祖父をイメージさせてみた

神の子に吾子のかがやき宮相撲 流伴

2017-09-03 | 
神の子に吾子のかがやき宮相撲




稲の収穫が終わると
豊年の感謝をこめて
神社で宮相撲が行われる風習が残っている

神官が行事を務めるところも多い
もともと相撲はこの神事が始まりだった

子供相撲が中心になる
親たちは神の子になったような我が子がまぶしい


原句
爽やかに白き幣束宮土俵

宮土俵は相撲の傍題だと注意された
爽やかもあって季重ねになっていた
句意も単純すぎていたようだ

鶏頭花無為無聊という力み  流伴

2017-09-02 | 
鶏頭花無為無聊という力み



鶏頭の容は決して美しいとは思わないが
どこか妖艶で何やら不満げな面持ちを感じる
その無為無聊には力み冴え感じられる

原句
鶏頭や無為無聊と云ふ力み

や切れを外した方が句意に素直だと思ったが

スクランブルくの字への字に鳥渡る 流伴

2017-09-01 | 
スクランブルくの字への字に鳥渡る



鳥の輪たる季節である
渡良瀬遊水地にはたくさんの野鳥が生息している
季節ごとに主役は入れ替わる

秋空に編隊飛行の鳥の群は
信じられないほどの距離を超えて飛来する

原句
渡り鳥スクランブルは先ずくの字

鳥の渡りの形をなんとか表現したい
推敲してみたが変わり映えしていない