田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

「BSシネマ」『フィラデルフィア』

2024-12-03 07:15:07 | ブラウン管の映画館

『フィラデルフィア』(94)(1994.6.27.みゆき座)

 エリート弁護士のベケット(トム・ハンクス)は、エイズを宣告され、会社を突然解雇される。ベケットは解雇は不当な差別だとし、弁護士(デンゼル・ワシントン)を立てて訴訟を決意する。ブルース・スプリングスティーンの主題歌がアカデミー歌曲賞を受賞した。

 エイズという病に対して偏見がないと言えばうそになる。輸血などで感染した人たちには同情を禁じ得ないが、麻薬注射や同性愛などの性交による感染は、乱れ切った現代の社会生活に対する一種の警告のように感じるところがあるからだ。しかも、バスケットのマジック・ジョンソンのように、乱れた性生活の結果感染してしまった者が、病と闘うヒーローになる風潮にも疑問を感じていた。

 この映画は、そんなふうに感じる自分のような者にとっては、一種の啓もう映画であった。この場合、主人公への不当解雇から裁判を通して敵役となる、ウィーラー(ジェイソン・ロバーズ)一派=典型的な差別者たちが、自分自身の鏡だったのだ。

 このように、単に同情するだけではなく、その横に反対し対立する側を置くことによって問題の核を知らせるという手法は、山田太一の脚本によるドラマとよく似ている。

 その結果、エイズが日本よりも深刻な問題となっているアメリカの実情(理解と偏見の対立)を垣間見た気がしたし、社会や家族が、偏見を超えてこの問題を見つめ直す方向に変化していることもよく分かった。

 つまり、たとえ感染経路がどうあれ、死と直面し、病と闘うことによって、本人も周囲も生きる意味を問い直すことになる。その姿が人の胸を打つ。だからジョンソンがヒーローになる、ということを教えられた。

 例えば、エイズまん延の初期に作られたテレビムービー「早霜」(85)では、エイズになったゲイの息子(エイダン・クイン)を認められない父親(ベン・ギャザラ)の苦悩や迷いが印象的に描かれていたが、この映画の家族は、同性愛によって感染した息子(兄弟)の闘いをひたすら応援し、息子の恋人にも偏見なく自然に接している。両作の違いが、ここ10年の変化を如実に表していると思った。

 思えば、フィラデルフィアはアメリカの独立宣言が公布された町であり、ギリシャ語では兄弟愛という意味を持つらしい。つまりこの映画のタイトルは、二重の意味で希望や愛を象徴しているのだ。

 さて、この映画をここまでにしたのは、ジョナサン・デミ監督の演出力に寄るものなのか、だとすれば、彼のことを何でも撮れる職人監督として見直さなければならない。ハンクスの熱演はすごいが、できればこうした演技ではなく、彼の持ち味を生かしたものでアカデミー賞を取ってほしかった気がする。

 いずれにせよ、ベトナム物の次は、こうしたタイプの映画が増えていくのだろう。その意味では、この映画はパイオニアと言えるのかもしれない。


 

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【ドラマウォッチ】「海に眠るダイヤモンド」(第6話)

2024-12-02 14:00:43 | ドラマウォッチ

「とてつもなく幸せな回だったからこそ次が怖い」
「いろんな人の考察を読んでなるほどとなることが多いからまた1話から見直したい」

https://tvfan.kyodo.co.jp/news/topics/1455444

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「BSシネマ」『はじまりのうた BEGIN AGAIN』

2024-12-02 07:07:37 | ブラウン管の映画館

『はじまりのうた BEGIN AGAIN』(13)

【ほぼ週刊映画コラム】『はじまりのうた』
「音楽は平凡な風景を真珠の輝きに変える魔法を持っている」
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/21ab1ef824d57c7bc0c76a402c88bc62

『はじまりのうた』『フォックスキャッチャー』のマーク・ラファロに注目
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/6439df5787ea864480bcd12517d871db

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【ドラマウォッチ】「バントマン」(第8話)

2024-12-01 19:12:38 | ドラマウォッチ

「ヒーローの『人間たいがいめんどくさいって』という言葉に救われた」
「毎回ハッピーエンドなのがいいですね」

https://tvfan.kyodo.co.jp/news/topics/1455421

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「金曜ロードショー」『アナと雪の女王』

2024-11-29 20:10:47 | ブラウン管の映画館

『アナと雪の女王』(13)

ディズニー創立90周年記念
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/543b98c7180580b285741551aca34f26

『アナと雪の女王2』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/7dd0368c85d090926f2b7ba2022f7133

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【ほぼ週刊映画コラム】『ドリーム・シナリオ』『ザ・バイクライダーズ』

2024-11-29 08:19:29 | ほぼ週刊映画コラム

共同通信エンタメOVOに連載中の
『週末映画コラム』

今週は
怪優ニコラス・ケイジの面目躍如『ドリーム・シナリオ』
アウトローたちの栄枯盛衰『ザ・バイクライダーズ』

詳細はこちら↓
https://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/column/week-movie-c/1455123

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「BSシネマ」『ロイ・ビーン』

2024-11-29 07:35:40 | ブラウン管の映画館

『ロイ・ビーン』(71)

『西部の男』と『ロイ・ビーン』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/255f8c199bd273450ad11ce521f5586d

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『I Like Movies アイ・ライク・ムービーズ』

2024-11-28 10:56:51 | 新作映画を見てみた

『I Like Movies アイ・ライク・ムービーズ』(2014.11.27.オンライン試写)

 カナダの田舎町で暮らす高校生のローレンス(アイザイア・レティネン)は、映画が生きがいで、ニューヨーク大学でトッド・ソロンズ監督から映画を学ぶことを夢見ている。社交性に乏しい彼は唯一の友人であるマットと毎日つるみながらも、そんな日常が大学で一変することを願っていた。

 そして、高額な学費を貯めるために地元のビデオ店「Sequels」でアルバイトを始めたローレンスは、かつて女優を目指していた店長のアラナ(ロミーナ・ドゥーゴ)らと出会い、奇妙な友情を育んでいく。だが、ローレンスは自分の将来に対する不安から、大事な人たちを決定的に傷つけてしまう。

 レンタルDVD全盛期の2003年のカナダを舞台に、他人との交流が苦手でトラブルばかり起こしてしまう映画好きな高校生の奮闘を描いた青春コメディ(という割にはちょっと苦いが…)。監督・脚本は、本作が長編デビューとなるチャンドラー・レバック。自伝的なストーリーだが、主人公の性別をあえて男性に変更して撮り上げたのだという。

 ローレンスにとって映画は希望であり逃げ場でもあり、唯一熱中できるもの。だがそれを他者と共有できず、独りよがりになる様子は、映画好きの者からすると、自分の一部を見せられているように感じるところもあるだろう。だから彼を心底憎むことができないのだ。

 自分を大きく見せたいために他人を見下すローレンスの突っ張る姿が痛々しくて、見るのがつらくなってくるところもあるが、そんな彼を突き放さず、優しい目線で描いているところに救いがある。ただ、ローレンスの変転を見せるラストシーンは果たしてハッピーエンドなのかという気がした。

 スタンリー・キューブリックについてなど、映画ネタが満載。特に『パンチドランク・ラブ』(02)『マグノリアの花たち』(89)のことが気になって見たくなるかもしれない。店長役のロミーナ・ドゥーゴもなかなか魅力的だった。

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『キノ・ライカ 小さな町の映画館』

2024-11-28 10:21:23 | 新作映画を見てみた

『キノ・ライカ 小さな町の映画館』(2014.11.27.オンライン試写)

 フィンランドの鉄鋼の町カルッキラに、映画監督のアキ・カウリスマキと仲間たちが誕生させた町で初めての映画館キノ・ライカ。深い森と湖、そして現在は使われなくなった鋳物工場しかないこの町で、住民たちは映画館への期待に胸をふくらませ、映画について口々に語り始める。

 カウリスマキと共同経営者の作家ミカ・ラッティが2021年に映画館をオープンさせるまでの様子や、住民たちがインタビューに応じる姿などをヴェリコ・ヴィダク監督がカメラに収め、カウリスマキが自ら館内の内装や看板設置などの作業に勤しむ姿も映しだす。

 映画館が完成するまでの様子を緩い感じで追っていくドキュメンタリー。さまざまな町の住民たちに加えて、カウリスマキ監督の『希望のかなた』(17)に出演した人々や『枯れ葉』(23)に出演した女性デュオ、盟友ジム・ジャームッシュ監督らも登場し、カウリスマキとの思い出や映画への思いを語る。現地に移り住んでいる日本人による日本語の歌も流れる。

 こうして住民たちが映画館に期待を寄せる姿を目にすると、改めて映画館の存在意義について考えさせられるし、北欧らしいデザインで建てられたこの映画館に行ってみたくなる。


『枯れ葉』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/a2ba83e384b497f5e9d859d4fc2f257b

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「午後のロードショー」『レッド・オクトーバーを追え!』

2024-11-28 07:38:43 | ブラウン管の映画館

『レッド・オクトーバーを追え!』(90)

コネリーだけではありません
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/d5eb5819e196e3322230e09b112cb417

 

 

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