ビジュアルと演奏シーンは素晴らしいが…
伝説のギタリスト、ジミ・ヘンドリックスの伝記ドラマ。ジミヘンがスターとなるモンタレー・ポップ・フェスティバル以前の英国での活動を中心に、彼の女性関係や苦悩、知られざる素顔を描いている。監督・脚本は、脚本家、製作者として『それでも夜は明ける』でオスカーを得たジョン・リドリー。
見どころは、ヒップホップデュオ、アウトキャストのアンドレ・ベンジャミンが、徹底的な肉体改造やギタートレーニングを経てジミヘンに成り切っているところ。これはお見事。ところが、ビジュアルと演奏シーンは素晴らしいが、人間ドラマとしては中途半端な印象を受ける。
また、最初にジミヘンの才能を発見したリンダ・キースと彼女の恋人のキース・リチャーズ、アニマルズを辞めてジミヘンのマネージャーとなるチェス・チャンドラー、ジミヘンの才能に驚くクリーム時代のエリック・クラプトン、エクスペリエンスの伝説のドラマー、ミッチ・ミッチェル、そしてブライアン・エプスタインとビートルズ…と、ジミヘンを媒介として次々にビッグネームが登場する60年代後半の英国ロックシーンの裏話は興味深く見たが、映画全体としてはテンポの悪さが目立つ。
そして、ジミヘンの曲の使用許可が下りなかったためか、クライマックスが、67年にサビル・シアターでジミヘンが本家ビートルズを前に演奏した「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」の再現にとどまったのも残念だった。