俳優の演技力で見せるファンタジー
ニューヨークの下町ロウアー・イースト・サイドの片隅で小さな靴の修理店を営む、ユダヤ系の平凡な男マックス(アダム・サンドラー)。行方不明となった父(ダスティン・ホフマン)の代わりに、隣の床屋(スティーブ・ブシェミ)が何かと彼の世話を焼く。
ある日マックスは、先祖伝来の旧型ミシンで修理した靴を履くと、靴の持ち主に変身できることを知る。変身を楽しむマックスだが、やがて街を揺るがす地上げ騒動に巻き込まれていく。
『扉をたたく人』(08)を監督し、『ミリオンダラー・アーム』(14)の脚本を書いたトム・マッカーシー監督作。特撮ではなく俳優の演技力で見せるファンタジーという設定は好ましいが、肝心の人物描写やディテールが雑なところが残念。
また本作は、ウディ・アレンの諸作同様、ユダヤ人たちの風俗習慣が色濃く描かれ、興味深くはあるのだが、日本人には分からないところも多い。コメディーとして楽しむにはそこがネックになる。
ところで、ニューヨークの下町を舞台にしたファンタジーで、同じく地上げ屋の存在を描いた映画として、スピルバーグ製作の『ニューヨーク東8番街の奇跡』(87)を思い出した。これを機に、久しぶりに見直してみようかな。