国家から見た大日本帝国の葬式
この映画の監督は『独立愚連隊』(59)など戦争アクションを得意とした岡本喜八。どこかアナーキーな雰囲気を漂わせる監督です。その彼が、国家の側から見た終戦を、重厚なドキュメンタリータッチで描いているので、ちょっと意外な取り合わせという感じを受けます。
タイトルは、米英中が発したポツダム宣言を受けて、御前会議で降伏を決定した昭和20年8月14日の正午から、ラジオの玉音放送を通じて天皇がポツダム宣言の受諾を国民に知らせる8月15日正午までの24時間を指しています。
この間、どういう形で降伏するのかをめぐって閣僚たちは延々と会議を続けます。「なにしろ大日本帝国の葬式だからな…」というセリフも吐かれます。ここは、阿南陸軍大臣役の三船敏郎ら、東宝が誇る“軍人役者”たちの独壇場です。その一方、戦争継続を叫び、軍事クーデターを目論む青年将校たちは、終戦を告げる放送をさせてはならじと天皇の言葉を録音したレコード盤を探します。こちらは若き日の黒沢年男らが狂気を含んだ大熱演を見せます。
東宝はこの映画のヒットを受けて「8.15シリーズ」と銘打ち毎年戦争映画を製作していきますが、ほとんどが国家や軍人から見た戦争という視点で描かれ、一般市民はあまり登場しません。
一方、この映画を撮りながら「何かが違う」と感じた岡本喜八は、国家ではなく一兵士から見た終戦としてATGで『肉弾』(68)を撮りました。日本人にとって太平洋戦争とはなんだったのかを知る意味でも対で見ることをお薦めします。
All Aboutに「60年代のおすすめ戦争・歴史映画【邦画】」で書いたものを転載
http://allabout.co.jp/gm/gc/419893/
TV fan Webに連載中の
『ほぼ週刊映画コラム』
今週は
戦後70年を迎えた今だからこそ見るべき映画
『日本のいちばん長い日』
今週の名セリフは↓
「日本は滅びるものか。勤勉な国民だよ。必ず復興する」
by阿南惟幾陸相(役所広司)
詳細はこちら↓
http://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/column/week-movie-c/1011656
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