女の性を描きながら終戦を見つめるという視点は新鮮
1945(昭和20)年、終戦間近の東京、杉並で母と共に暮らす19歳の里子(二階堂ふみ)は、妻子を疎開させた隣家の銀行員、市毛(長谷川博己)の世話をするうちに、“女”としての本能に目覚めていく。高井有一の原作を基に、脚本家の荒井晴彦が監督。里子の心情を象徴するものとして茨木のり子の詩「わたしが一番きれいだったとき」が挿入される。
同時公開中の『日本のいちばん長い日』と同時期の日本を描きながら、戦場でも国家でもなく、女の性を描きながら終戦を見つめるという視点は新鮮。しかも、耐えないヒロイン、空襲のシーンなどの切迫感の薄さ、食事のシーンが多い、雨のシーンがある…など、これまでの終戦直前を描いたものとは異質の感を抱かせる点がユニークではあるが、その分、時代色が薄まった感があるのは否めない。
短期間で少女から大人の女性に変わっていく里子役の二階堂、インテリの中年男が持つ色気やいやらしさを巧みに表現した長谷川が共に好演を見せる。ただ、二階堂の妙なセリフ回しに違和感を覚えた。彼女は「小津安二郎や成瀬巳喜男映画の女優たちを参考にした」と語っているようだが、だとすればそれをうまく消化し切れなかったということなのか。
一方、長谷川は市毛を演じるに当たって森雅之の演技を、荒井監督も庶民の生活を描く際に、成瀬巳喜男の『山の音』(54)や『驟雨』(56)を参考にしたという。今や古い映画は昔の生活を知るためのよすがなのだ。
二階堂ふみへのインタビュー記事あり。 ここです↓
http://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/interview/1010024