アニメの効用
原作は大今良時の漫画。製作は京都アニメーションで、山田尚子が監督している。
視覚障害のため、いじめを受ける少女・硝子と、いじめの中心人物として周囲から孤立する将也。高校生になって再会した二人の動静を中心に、彼らと同級生たちの、孤独と友情、後悔、絶望と希望、愛と憎しみなどの二律背反が描かれる。
不器用でもどかしい少年少女たちの青春像だが、かつての自分にも思い当たる節があり、思いのほか入り込めた。孤独な将也の心象表現として、クラスメートの顔にバッテンを貼り付けるというアイデアも秀逸だ。
とは言え、初めのうちは、現実感のあるストーリーと現実感の薄いアニメキャラとのギャップに違和感を憶えた。ところが、慣れてくるとこのミスマッチが妙味へと変化し始め、やがて、この話を実写で生身の俳優が演じたらそれはそれで見るのがつらいだろうなと感じるまでになり、最後は、なるほど、アニメの効用とはこういうところにあるのかと改めて気づかされた次第。
『君の名は。』と並んで今年のアニメ映画の収穫と言えるのではないだろうか。