田中雄二の「映画の王様」

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『ザ・ビートルズ EIGHT DAYS A WEEK The Touring Years』

2016-09-27 09:28:30 | ビートルズ



 1970年の『レット・イット・ビー』から46年、『ザ・ビートルズ・アンソロジー』から21年ぶりのアップル公式作品。63~66年、英リバプールのキャバーン・クラブ時代から米サンフランシスコ・ジャイアンツの本拠地、キャンドルスティックパーク公演まで(日本武道館公演もちらりと映る)のツアー活動期を中心に、4人や関係者、著名人のインタビューを交えながら構成している。

 監督のロン・ハワードは、ビートルズを媒介にして60年代を描こうと試みている。その点ではいささか物足りないものがあるが、ウーピー・ゴールドバーグやシガーニ―・ウィーバーが、まるで少女に戻ったかのように夢中になってビートルズを語る姿は感動的。ウーピーが語る「彼らは黒人でも白人でもない。そんなこととは関係のない“ビートルズ”だったのよ!」という一言が印象に残る。

 ライブシーンは、世界初公開映像といううたい文句の割には、すでに見たことのあるものがほとんどだったが、今回はデジタルリマスターで音と映像がクリアになり、ビートルズのライブバンドとしての質の高さを改めて感じることができる。それだけでもこの映画を見る価値はある。特にリンゴのドラムが素晴らしいことに気づかされた。

 それにしても、今よりもずっと粗悪な音響設備の中で、よくぞここまでのクオリティ(歌と演奏)を保ったものだとつくづく思う。すさまじい歓声の中で、お粗末な1本のスタンドマイクに顔を寄せ合いながら必死にハーモニーをつける、ジョンとポール、ポールとジョージ、ジョージとジョン…その姿を見ているとなぜか切なくなってくる。

 本編終了後に、ニューヨーク・メッツの本拠地、シエイ・スタジアムでのライブ映像が流れる。こちらは、77年に『THE BEATLES/シェアスタジアム』として「マジカル・ミステリー・ツアー」と同時上映された時以来の再会。本編同様に、音と映像は一部加工も加えられて驚くほどクリアになっていた。

 薬のせいなのか、もはやライブに嫌気がさしていたためか、目の下にくまをつくり、驚くほどやつれた表情で演奏するジョンとポールの姿が印象的。何度見てもラストの「アイム・ダウン」はぶっ飛んでるぜ。

コメント
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