『ドライブ・イン・マンハッタン』(2025.2.11.オンライン試写)
深夜、ニューヨークのジョン・F・ケネディ空港に降り立った若い女性(ダコタ・ジョンソン)が、マンハッタンの自宅に戻るため、タクシーに乗り込む。中年の運転手(ショーン・ペン)はシニカルなジョークを交えた世間話で女性を和ませ、2人は会話を弾ませる。
運転手は2度の結婚を経験し、酸いも甘いもかみ分けながら生きてきた。一方、プログラマーとしてキャリアを築いてきた女性は、不倫をしていることを運転手に見抜かれる。
2度と会うことのない関係だからこそ、2人は赤裸々に本音を語り合う。そして会話はいつしか予想もしなかった方向へと発展し、女性は誰にも打ち明けられなかった秘密を告白し始める。
真夜中のタクシー内を舞台に2人だけの芝居で見せるワンシチュエーションの会話劇。『ふたりで終わらせる IT ENDS WITH US』(24)のクリスティ・ホールが執筆した脚本を基に、自ら長編映画を初監督。『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』(13)などのフェドン・パパマイケルが撮影を担当した。
この映画の原題は「Daddio」。そのためか、女性が年上の愛人を「ダディ」と呼ぶようなファザーコンプレックスの持ち主であることが明かされたり、運転手が女性に対して娘のように接する場面があるのも印象に残る。
また、宣伝文句に「人生観が変わる100分間のドライブ」とあるが、実際にJ・F・K空港からマンハッタンまではタクシーで1時間弱かかるという。この映画では、途中、事故による渋滞に巻き込まれるので、実際とほぼ同時間で進行していることになる。これは劇中の時間と上映時間を同じにしたリアルタイム形式と呼ばれるものだが、回想が一切入らないところにこの映画の会話劇としての真骨頂がある。
運転手が「女の浮気は愛されたいから。男は新しいおもちゃが欲しいだけ。愛はいらない」と語るなど、秀逸なせりふが多いし、会話の中から徐々に女性の心情が明らかになるミステリー的な要素があるのも面白い。
舞台劇を思わせるワンシチュエーションものだが、舞台劇との違いは、会話中の2人のカットの切り返し、時折映る夜のニューヨークの風景やそこを走るタクシーの動きなどがある。
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