田中雄二の「映画の王様」

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『男はつらいよ 寅次郎サラダ記念日』

2019-10-01 10:04:58 | 男はつらいよ
『男はつらいよ 寅次郎サラダ記念日』(88)(1989.1.14.松竹セントラル2 併映は『釣りバカ日誌』)
 
 
 久々に寅さんが大人の恋愛をするという前宣伝と、はやりのサラダ記念日を組み合わせた企画ということで、新味があるかもしれないと期待したが、やはり古き良き?山田洋次の世界であり、これでいいのだという気持ちと、果たしてこのままでいいのだろうか、という思いが相半ばするという、複雑な心境を抱かされた。
 
 もはや寅さんに新しいものを求めても仕方ないとは思いつつも、やはり見続けていくには何かプラスアルファがほしい。そして、渥美清はじめ、レギュラー陣の老いが目立つだけに、それに代わる存在として浮上きたのが、さくらの息子、満男である。
 
 満男役が吉岡秀隆に代わってから、山田洋次はかなり満男を意識しながら作っている気がするし、今回も、本筋の三田佳子演じる女医と寅さんとの恋愛と並行して、満男の将来を予感させるような、大学生たちの学生生活の様子を描くことにかなりのウエートがしめられていた。くるまやの面々が老いていく中で、一人大人へと成長していく満男と寅さんとの絡みが、今後のシリーズを支えていくことになるのかもしれない。そんな気がした。
 
 今回のもう一人の主役ともいうべき老婆を演じた鈴木光枝が抜群。北林谷栄と並んで、若い頃から老け役をやってきた人だから、その蓄積と実年齢が重なった今は、もううまい下手では片づけられない境地に達していると言っても過言ではない。役者もここまでくれば無敵だ。

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