『ウディ・ガスリー わが心のふるさと』(76)(1982.7.2.) ウディの妻メアリー
フォークの父、あるいはアメリカ最大の吟遊詩人とも称えられるウディ・ガスリー。1930年代の大恐慌下、各地を放浪しながらギターの弾き語りを披露し、生活苦にあえぐ人々の心に希望と勇気を与え続けた彼の姿を、ハル・アシュビー監督が彼の自伝を基に映画化した。
まず、デビッド・キャラダインが見事にウディ・ガスリーを演じている。今まで自分が見てきた彼の出演映画とは比べものにならないほど、素晴らしかった。
ところで、歌手や俳優は、初めは自分の内面から湧き上がってくるものを、歌なり演技なりで表現してみたいという思いから活動を始めるのだろう。ところが、多くの者は、売れたら売れたでマスコミやスポンサーに踊らされたり流されたりして、自分を見失う。最初の高尚な目標なんてすっかり忘れてしまう。
けれども、人間なんて所詮は弱いもの。誰も彼らの生き方を否定できはしないのだ。そんな中で、このウディ・ガスリーは異彩を放つ。マスコミ、スポンサーは一切お構いなし。自分が歌いたい歌、貧しい者を力づけるような歌しか歌わない。妻子に逃げられようが、スポンサーに見放されようが、終始この姿勢を崩さない。
ボブ・ディランらも、初めはこのガスリーの流れをくんでいたはずだが、今の彼らのどこにガスリーの影を見つけることができよう。皆、時代に流されて変わってしまったのだが、だからといって彼らを責めることもできない。なぜなら、このウディ・ガスリーのような生き方ができるのは、ごく希なことなのだから。
ほこりっぽい米南部の田舎町の風景、温かさを感じさせる人物撮りなど、ハスケル・ウェクスラーのカメラワークが素晴らしい。
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