『ゴースト/ニューヨークの幻』(90)(1990.10.16.日本劇場)
暴漢に命を奪われたた銀行員のサム(パトリック・スウェイジ)は、最愛の恋人モリー(デミ・ムーア)の身に危険が迫っていることを知り、霊として地上にとどまり、霊媒師オダ・メイ(ウーピー・ゴールドバーグ)の力を借りてモリーを守ろうとする。
何だか知らないが、霊界ブームのようである。それは現実の世の中に夢がなくなり、映画もそれを反映して、もはや普通の話では夢が語れなくなっているということなのかもしれない。
とはいえ、もともとこうしたファンタジックな話が嫌いではない自分にしてみれば、これまではジャック・フィニイやレイ・ブラッドベリ、リチャード・マシスンといった作家の小説で楽しんできたものが、映画として見られる喜びもある。
ただ、この映画の場合は、先に作られたスピルバーグの『オールウェイズ』(89)との類似点があまりにも多いので、評判の割には、何だスピルバーグの二番煎じじゃないかと思った。
というのも、『オールウェイズ』はコケたのに、こちらは超満員だったので何か理不尽なものを感じたし、霊媒師を出しちゃずるいよとも思ったのだ。
驚いたのは、この映画の監督が、『フライングハイ』(80)をはじめとする、数々のおふざけパロディ映画で鳴らすジェリー・ザッカーだった点である。確かに『殺したい女』(86)あたりから、おふざけ映画からの脱皮を試みていたようだが、まさかここまで真面目な?ラブロマンスを撮るとは思ってもみなかったからだ。
これで映画監督としての幅が広がったわけだが、彼のパロディ映画も嫌いではない自分としては、こうした真面目な映画で成功した後も、『裸の銃を持つ男』(88)などの路線も捨てないでほしいと思う。
ところで、「この映画はデミ・ムーアがきれいだからいい」という感想をよく目にするが、実際に盛り上げているのは、怪しい霊媒師を演じたウーピーの方だろう。で、彼女の出世作はスピルバーグの『カラーパープル』(85)だった。『オールウェイズ』との類似といい、どうもこの映画とスピルバーグとの因縁を感じずにはいられないのだ。
もひとつおまけに、『オールウェイズ』が「煙が目にしみる」(J・D・サウザー)を使ったら、こちらは「アンチェインド・メロディ」(ライチャス・ブラザース)だ。
などと言いながら、この映画の印象がいま一つだったのは、満員だったもので、首も目も疲れる最前列の席で見たことも作用しているのかもしれないというお粗末。
【今の一言】と、30数年前の自分は書いているが、そもそもスピルバーグの『オールウェイズ』も『A Guy Named Joe』(43)という映画のリメークだったのだから、何をかいわんやだ。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます