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1940年代日本映画ベストテン その9『晩春』

2021-12-05 07:29:16 | 俺の映画友だち

『晩春』(49)(1985.6.2.)

 ビデオの普及のおかげで、ようやく『東京物語』(53)以外の小津安二郎の映画を見ることができた。代表作の一つとされる『晩春』である。

 ストーリーは、北鎌倉に住む大学教授の曽宮周吉(笠智衆)が、婚期を逃しかけている一人娘の紀子(原節子)を、寂しさをこらえながら嫁に出すまでを描き、戦後の小津作品に共通する独特のスタイルの嚆矢的な意味合いを持つ。

 そうした情報を踏まえつつ、見たのだが、正直なところあまりピンとこなかったし、退屈ですらあった。よく言えば、優雅だが、戦後の混乱や貧困とは全く無関係の作風に、違和感を抱かされた。そうした感慨は、同時代に作られた黒澤明の諸作を先に見てしまったことも大きく影響していると思われる。

 ダイナミズムあふれる黒澤映画に親しんでしまった後で、この浮世離れした小津映画を見るのは正直なところつらいものがあった。年下の友人は、独特のテンポに面食らい、思わず早送りをしてしまいたくなったと言っていた。

 うーん、ここまで心に響かなかったのは、自分の感性の鈍さ故なのか、それとも若さ故の無理解のせいなのか…。分からない。 

【今の一言】この後、何回か見直してみて、確かに年を取るごとに感慨深く見られるようにはなったのだが、いまだにあまり好きにはなれない。今回10本を選ぶ中で、最後に多少の見栄もあってこの映画を入れたが、木下惠介の『お嬢さん乾杯』(49)にすべきだったかと後悔している。

『絢爛たる影絵―小津安二郎』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/6dbfba86015a548432a269516e1ca263

(2008.3.21.)
 WOWOWで市川崑追悼番組として放送されたドラマ「娘の結婚」。小津安二郎の『晩春』のリメークだが、こういう題材に“崑タッチ”と呼ばれる独特のこだわりは合わない気がした。ちょっと鼻に付く時があるんだよなあ“崑タッチ”。

 


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