吉田喜重監督作でメモが残っていたものを。吉田は岡田茉莉子、大島渚は小山明子、篠田正浩は岩下志麻と、それぞれ結婚し、自分の監督作に妻を出演させた。松竹ヌーベルバーグと呼ばれた人たちが、皆同じようなことをするのはなぜだったのだろう。
『水で書かれた物語』(65)(1979.1.21.TVK)
石坂洋次郎の同名小説が原作で、近親相姦と異母兄妹がテーマ。だいたい、岡田茉莉子と入川保則が親子役というところからして納得できない。
『血は乾いている』(60)(2005.6.7.NHk BS)
東洋毛織で社員の解雇通告があり、木口(佐田啓二)は、同僚を救おうとして拳銃自殺を図るが、老社員・金井(織田政雄)の機転で一命を取り止めた。
この事件は、解雇争議と自殺という社会問題として報道された。昭和生命の宣伝広報課に勤める野中ユキ(芳村真理)は、木口を生命保険の宣伝に利用しようと考える。
NHk BSの深夜に放送された、吉田喜重、岡田茉莉子夫妻を囲んでの対談を何となく眺めていた。その後、初期の吉田作品『血は乾いている』が始まり、最後まで見てしまった。松竹ヌーベルバーグの一人とされ、観念的で難解な映画を作る吉田だが、この映画は分かりやすくてなかなか面白かった。
とは言え、この“マスコミによって創られた偶像”をめぐるドラマは、大昔にフランク・キャプラが『群衆』(41)で取り上げており、ヌーベルバーグ=新しい波と言われた彼らも結構焼き直しをしていた、というと意地悪っぽく聞こえるが、結局人間の営みは時代が変わっても大差はないということなのだろう。自分が生まれた頃の東京の風景が映されるのも一興だ。
『秋津温泉』(62)(2012.7.16.)
岡山県の山奥の温泉場「秋津荘」で出会った男と女の17年間を、美しい映像でつづった情念のドラマ。
原作は藤原審爾。岡田茉莉子が企画し、後に夫となる吉田喜重が監督。相手役の長門裕之の役は、途中まで芥川比呂志が演じていたらしい。四季を美しく捉えた成島東一郎のカメラワークと林光の音楽が印象に残るが、吉田の演出は冗漫。
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