硝子戸の外へ。

優しい世界になるようにと、のんびり書き綴っています。

はつこい、なんです。 3

2016-05-18 18:34:17 | 日記
今日は、寝坊しちゃった、携帯のタイマー入れるの忘れて。お母さんも、今日は、ゆっくりでいいのかしら、と思ってただって。

いつもより、二本遅れの電車に乗り込む。すると、そこには、折原先輩。

「あれっ、堀越さん。おはよー」

「あっ、先輩! おはようございます」

「堀越さんて、この電車だったの」

「はい」

「電車で会うのって、初めてだよね」

「あぁ、そうですね。私、いつも、20分前の電車に乗ってゆくんです。でも、今日は寝坊しちゃって」

「そうなんだ。もっと早く聞いておけばよかったね」

先輩と、同じ電車に乗って通学できるなんて、寝坊してラッキーだわ。

「そうだ、line交換しない」

「えっ! いいんですか」

「うん、部活の事も、lineで教えられるしね」

「ああっ、そうですね。はい。よろしくお願いします」

 携帯、カバンから取り出して、先輩とID交換。男子とID交換するの初めてで、どきどきしちゃった。
 

次の朝、lineが来る、先輩からだ。

「おはよう。起きてる」

「おはようございます。もう起きてますよ」 

「今日も、昨日と同じ電車に乗る? 」

「はい。そのつもりです」

「じゃあ、待ってるね」

「はい。乗り遅れないように、行きますね」

交わす言葉は、少ないけれど、他愛のないlineのやり取りが、すごくうれしくて、落ち込んだ朝でも、元気が出てくるんです。

いつもより20分後の電車を、プラットフォームで待つ。私、時間、変えちゃった。

前から三両目の前の入り口。

窓越しに手を挙げている。

「おはよう」

「おはようございます」

ドアが閉まると、クーラーの冷たい風で、汗ばんだシャツが、少しひんやりした。

下着、透けてないかな。先輩、気づいてないかな。

「期末試験、どうだった」

「……それがぁ、余りできなくて。先輩は? 」

「そうだなぁ、まあまあかな。でも、自力じゃないからなぁ」

「塾とか? 」

「ううん。加藤が優秀だから、たまに教えてもらってる。それがなけりゃ、駄目かも」

胸がチクってした、こんな気持ち知られたくないな。気にしないふり、気にしないふり。

「でも、まあまあなんて、さすがですねぇ。私、夜更かしできなくて、どうしても寝ちゃうんですよね」

先輩、「フフフッ、それ、僕も」って、笑ってる。笑顔、可愛い。

「文化祭の出展作品はどう? 」

「順調ですって言いたいところなんですが、私、遅筆なので、遅れてます」

「そうかぁ。でも、一年目だから、そんなもんだよ。部長の芳川さんなんか、一年生の時、未完のまま出展して、先輩から、こっぴどく注意されたって聞いてる。」

「そうなんですか」

「うん。あの人のマイペースぶりは、天才的だからね」

「なんだか、わかる気がします」

先輩との雑談も、自然にできるようになって、私、少し成長したみたい。

電車が駅に近づき、減速、私、体のバランスを崩して、先輩の胸に、よりかかったんです。
「大丈夫? 」

先輩、私を優しく抱きとめた。

「あっ、ありがとう。ふらふらしてすいません」

「いいよ」

あれっ、先輩、耳が赤い。照れているのかしら。