もうすぐ、夏が終わる。西の空には、大きな入道雲が、きらきら輝いてる。
二学期に入ると、美術部は、先輩の言った通り、ポスター作りに追われた。
部長、人がいいから、断らない。しかも、なぜか、クオリティーにこだわるから、なかなかこなせなくて、困っちゃう。
でも、南先輩、部長とは、対照的に、計画を立て、進度を予定表にして、部員に作業を割り振り、確実に、進めているから、一安心。
それでも、来週まで、個人の作品に、手を付けられない感じなんです。
「きょうは、ここまでにしようか」
南先輩の、一声で、手が止まる。
「うううっ、背中が痛い」
「毎年の事だけれど、これって、なんとかならないの」
皆、思わず愚痴をこぼす。部長、にわかに立ちあがり、
「諸君、よく聞いてくれ。我々美術部が、脚光を浴びるのは、この季節だけである。ここで、頑張っておけば、美術部の評価は上がり、しいては良い画材が手に入るのである。これは、我々美術部にとって、死守せねばならない、働きであり、また、我々の一存では、変えぬことのできない、伝統なのである」
誇らしげに言う部長、片付けながら、あきれたように、南さん、
「なにいってんの。私が計画を立てなければ、とうに頓挫してたでしょ」
「むむっ、南さん。なにをおっしゃいますやら、これはでん……」
「はいはい、分かったから、早く片付けなさい」
南さん、皆まで言わせない。部長、寂しげに片付け作業を始めた。
窓の外を見ていた、小菅君、
「あれっ、雨が降り出した」
いつの間にか、雲が広がっていて、あっという間に大雨になった。
遠くで、雷が鳴っている。
部員全員で、慌てて窓を閉めると、加藤先輩、残念そうに、
「今日、雨降らないって言ってたのに」
って呟いた。加藤先輩と、同じポスター制作を進めていた折原先輩、やっぱり、優しいんです。
「なんだ、加藤、傘持ってないのか」
「うん。だって、降らないっていってたもの。折原君は」
「おきっぱの傘があるから、大丈夫だぜ」
「じゃあ、いっしょに、傘に入れて行って」
「……まぁ、しょうがないかぁ」
「しょうがないじゃないでしょ。わ・た・しが、頼んでいるのよ」
そういうと、小菅君は、かならず、余計な事を言う。
「相合傘っスか、折原先輩、いいなぁ~。そんな無下にしたら、加藤先輩のファンから、石、投げられますよ」
「そんな、ぶっそうな」
「あら、ほんとよ」
突然、空に稲妻が走り、大地を切り裂くような大音響に、皆、耳をふさいだ。
「こわいよぉ~」
加藤先輩、それまで、無邪気に微笑んでたけれど、児童のように、半べそかいて、折原先輩の腕にしがみついる。
それを横目で見ていた、南先輩、あきれて、ため息ついてる。
私も、雷が怖いし、傘も持ってこなかったけれど、加藤先輩みたいに、上手に甘えられない。
折原先輩の事、誰にも負けないくらい好きなのに、意気地が無くて、何も、できないのが、悔しいな。
二学期に入ると、美術部は、先輩の言った通り、ポスター作りに追われた。
部長、人がいいから、断らない。しかも、なぜか、クオリティーにこだわるから、なかなかこなせなくて、困っちゃう。
でも、南先輩、部長とは、対照的に、計画を立て、進度を予定表にして、部員に作業を割り振り、確実に、進めているから、一安心。
それでも、来週まで、個人の作品に、手を付けられない感じなんです。
「きょうは、ここまでにしようか」
南先輩の、一声で、手が止まる。
「うううっ、背中が痛い」
「毎年の事だけれど、これって、なんとかならないの」
皆、思わず愚痴をこぼす。部長、にわかに立ちあがり、
「諸君、よく聞いてくれ。我々美術部が、脚光を浴びるのは、この季節だけである。ここで、頑張っておけば、美術部の評価は上がり、しいては良い画材が手に入るのである。これは、我々美術部にとって、死守せねばならない、働きであり、また、我々の一存では、変えぬことのできない、伝統なのである」
誇らしげに言う部長、片付けながら、あきれたように、南さん、
「なにいってんの。私が計画を立てなければ、とうに頓挫してたでしょ」
「むむっ、南さん。なにをおっしゃいますやら、これはでん……」
「はいはい、分かったから、早く片付けなさい」
南さん、皆まで言わせない。部長、寂しげに片付け作業を始めた。
窓の外を見ていた、小菅君、
「あれっ、雨が降り出した」
いつの間にか、雲が広がっていて、あっという間に大雨になった。
遠くで、雷が鳴っている。
部員全員で、慌てて窓を閉めると、加藤先輩、残念そうに、
「今日、雨降らないって言ってたのに」
って呟いた。加藤先輩と、同じポスター制作を進めていた折原先輩、やっぱり、優しいんです。
「なんだ、加藤、傘持ってないのか」
「うん。だって、降らないっていってたもの。折原君は」
「おきっぱの傘があるから、大丈夫だぜ」
「じゃあ、いっしょに、傘に入れて行って」
「……まぁ、しょうがないかぁ」
「しょうがないじゃないでしょ。わ・た・しが、頼んでいるのよ」
そういうと、小菅君は、かならず、余計な事を言う。
「相合傘っスか、折原先輩、いいなぁ~。そんな無下にしたら、加藤先輩のファンから、石、投げられますよ」
「そんな、ぶっそうな」
「あら、ほんとよ」
突然、空に稲妻が走り、大地を切り裂くような大音響に、皆、耳をふさいだ。
「こわいよぉ~」
加藤先輩、それまで、無邪気に微笑んでたけれど、児童のように、半べそかいて、折原先輩の腕にしがみついる。
それを横目で見ていた、南先輩、あきれて、ため息ついてる。
私も、雷が怖いし、傘も持ってこなかったけれど、加藤先輩みたいに、上手に甘えられない。
折原先輩の事、誰にも負けないくらい好きなのに、意気地が無くて、何も、できないのが、悔しいな。