硝子戸の外へ。

優しい世界になるようにと、のんびり書き綴っています。

はつこい、なんです。 5

2016-05-20 20:28:12 | 日記
「あいかわらずだなぁ」

「よく懲りないわねぇ」

そういって、入ってきたのは、折原先輩と、加藤先輩。

加藤先輩といえば、同級生の男子を通して、伝わってきた噂があるんです。

ほんとかどうかは分からないけれど、学校中の男子の憧れの的で、1年間で10人以上の男性から告白されて、みんな、断ったって言うんです。

それだけなら、いいんだけれど、加藤先輩、折原先輩と付き合ってるんじゃないかって、噂を聞いたとき、すごく落ちこんだ。

「堀越だけじゃないか、まじめにやってんの」

「祥子ちゃんを見習いなさいよ」

南先輩、それを聴いて、まだ機嫌が悪かったのか、

「いつもイチャイチャしている、あなた達に言われたくありません」

って、言い放ったけれど、私の胸は、やっぱり、キュッと、痛くなった。

「ああっ。やっぱり、そうなんスね、二人は付き合ってるんスね。ファンクラブの人達、がっかりしますよ」

小菅君は、やっぱり、空気を読まない人。私、加藤先輩に、ファンクラブがあることでさえ驚いたのに。

それでも、加藤先輩、余裕で、言うんです。

「ふふっ。いいのよ。私、十分、リア充だから」

「いやぁ、加藤先輩、ヤバいっすね」

「かとぉ~。火に油を注ぐようなこというんじゃないよ」

折原先輩、困ってる。でも、本人はまったく、気にしていなくて、

「あら、そうかしら」

って、あっさり。

南先輩、余裕の加藤先輩が悔しいみたいで、すぐかみついた。

「まぁ、イチャイチャするのはいいけど、外でやってね」

「あら、南さん、人の恋路を邪魔するつもり、馬に蹴られるわよ」

「なんですって、じゃあ、馬、連れてきなさいよ」

「まぁ、都都逸なのに、本気にしちゃって」

「平成生まれの私達が、都都逸なんて、知るわけないじゃない」

「私、知ってたも~ん」

「うううっ、なんだかくやしいわ。作品制作では、ぜったい、負けないから」

折原先輩、二人に挟まれて、すごく困ってる。

それまでの成り行きを、静かに眺めていた、芳川部長、満を持して、

「まあ、まあ、二人とも、いがみ合っちゃあ、その美貌が、もったいない」

って、いうんだけれど、南先輩と加藤先輩、

「部長はだまってて! 」

って、思わずシンクロ。

部長、二人が怒ってるのに、にやにやしながら首をすくめて、

「おおっ、このままでは石にされてしまう」

って、いうんです。折原先輩、横で、苦笑いしてる。

美術部は、部員が集まると、いつもこんな感じ。

でも、どこまでが冗談なのか、未だにわからないわ。