この施設で「お誕生会」があるそうで、お誘い頂いた。聞けばケーキが振るまわれ誕生祝の歌が歌われるという。オソマツ君はチョットためらった。第一ケーキが好きではないし、誕生祝の詩と聞いただけで落ち着かない。うちの子どもたちが通っていた幼稚園でよくやっていたが、オソマツ君が子どものときお誕生日祝いと云うものは家でやってもらったことがない。
年齢が一つ大きくなるのはお正月で、お正月の朝は、下着から靴下や運動靴まで少し大きめの真新しい新品を身に着けていた。途中から満年齢こそが、本当の年齢だそうだということになって、お誕生日に新しい下着を着るようになったが、ケーキを食べて歌を歌うなどと云うことなど幼稚園でやることと信じていた。
僕は折角此処の施設が誕生会をしてくれるのだそうだから喜んで参加すべきであることは100も承知していたが、「祝杯はシャンペンか、冷酒か」と聞いたらアルコール類は無いとのこと。僕は急に敷居が高く感じられた。丁重にお断りしたら、何と僕の写真とケーキを持って女子事務員の人が僕の部屋まで来て大きな声で「はぴーバーすデ―ツーユー」と歌まで歌って、写真とケーキを置いて行って呉れました。僕は唯ドギマギしていて、大声でお礼だけ言いました。明らかに老人にはついていけない文化でした。79歳は充分時代遅れでした。失礼しました。(T)
晩秋の散歩道で。