長屋茶房・天真庵

「押上」にある築60年の長屋を改装して
「長屋茶房・天真庵」を建築。
一階がカフェ、2階がギャラリー。

満月の雨夜(うや)に「biwa tabi」(琵琶旅)を聴きながら休符が旅立った

2013-06-24 07:38:27 | Weblog
昨日はスーパームーン、満月。
鶴田流琵琶の奏者・榎本百香さん、ももちゃんが、
「biwa tabi」というテーマで薩摩琵琶を奏ででくれた。
琵琶が伝わってきた時代がそうだったように、雨夜の明かり
をろうそくの灯りで照らしながら、幽玄世界にまるで、雨の水
の一滴にうずくまっていくようなそんな雰囲気につつまれた。

「水の旅」の演奏が終わったところで、かみさんが厨房に
入ってきて、「休符が車にはねられた」と耳打ちしてくれた。
十間橋をはさんだ前の道路に、休符がうずくまっている。
演奏中なので、雰囲気をこわさぬように、静かに黙祷。

エンディングの「東風」。悠久の河の流れ
のように、昔から人が旅をし、めぐる土地土地で、恋をしたり、酒を飲んだり、
帰し方を思い出したり、夢を抱いたりしながら、いろんな居場所や死に場所を
選んできた。そこには音楽があり、楽器もあり、ギターや太鼓などとおなじように
琵琶も二本に伝えられた。そんな清風のような静かで涼やかな曲だ。内心は
穏やではないところもあるが、琵琶の悲しい調べが「鎮魂」させてくれているようにも
思えた。

静かに演奏が終わり、満席のお客さんたちが、帰路につかれ、ももちゃんが
二階に帰り仕度にあがった時に、おそるおそる白黒の猫の屍のところへ渡る。
しっぽの形も白黒の模様も休符だ。1月の雪の日に旅立った「チビ」といっしょに
寝ていた毛布をとりにかえり、抱きかかえて、お店の前の「休符椅子」(道ゆく
人が休憩できるようにプランターのところにつくった椅子」の下に置き、
焼き締めのたぬきに花を手向け、珈琲豆のカスをいれた灰皿に線香を焚き、
久保さんの黄瀬戸の「つぼつぼ」という器に酒を注ぎ、ぼくらと同じように、
親のようにかわいがってくれた大家さんにきてもらい、弔いをした。
ウォンさんの「ムーントーク」を聴きながら涙雨の満月に旅立った家族を偲ぶ。

いけない、「卵かけごはん」の時間だ。
いかなくちゃ。