鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

宇治川先陣図目貫 後藤程乗 Teijo-Goto

2014-09-01 | 鍔の歴史
宇治川先陣図目貫 後藤程乗



宇治川先陣図目貫 後藤程乗

 後藤宗家九代程乗の作と極められた、源平合戦に取材した図の目貫。裏からの打ち出しは目貫製作の基本だが、桃山時代以前の作に比較して地造りが厚手になってきているのが判る。古式に則った製作より、彫刻する上において、表現の幅を広くするため、即ち、表面からの鏨の打ち込みや切り込みなど、多くの彫刻手法を駆使するため、薄手の地から厚手の地へと変えざるを得なくなったのであろうか。やはり、薄手の地では工作には軟らかすぎると考えて良いのだろう。


古い目貫で、裏面に力金と呼ばれる小さな金属片が接着されている場合がある。特に地金が細い部分を補強するため、あるいは地が割れてしまった部分を修復するために合着させたものである。下に参考で紹介する目貫が、蟹の足の先端に力金が備わっている例。表からは全く見えない。裏面の観察で漸く判る程度のもの。それが故に、作品というより、実用のものとしての面白さが一層強まっている。赤銅地片容彫、古金工。□