鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

栗図笄 古金工 Kokinko Kougai

2014-09-27 | 鍔の歴史
栗図笄 古金工



栗図笄 古金工

 赤銅魚子地高彫金うっとり色絵による表現。高彫部分のうっとりが擦れている。栗のイガは針状に高彫できないことからこのような表現とされる。それ故に突起が針ほどではないものの鋭く突き出し、その根元は深い。この深部で金の板が留まっている。すり減りによって妙なる景色が生じており面白い。この金うっとりの下地にも丁寧な彫刻が加えられている。やはりうっとり色絵が落ちることを想定しているのであろうか。
 栗や団栗は秋の実りを意味する素材として好まれたようだ。栗鼠も描かれることがある。太古の時代、我が国の各地に自然の実りが存在した。それが故に縄文文化と呼ばれている繁栄の時代があった。もちろんこの笄を製作した人はその環境を知るものではないが、少なくとも、現代よりは遥かに多くの自然の恵みを、ごく自然に受けていた。そんなことを想わせる作品である。象嵌に脱落はあるが名品である。このような作例は多い、色々な面で作品をもっと楽しんでほしい。