鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

山葵図笄 古美濃 Komino Kogai

2014-09-08 | 鍔の歴史
山葵図笄 古美濃



山葵図笄 古美濃

 室町時代の笄。山銅地を極端に深く彫り込んで図柄を高く浮き出させている。題材は樋定規と呼ばれる直線構造と、薬種とされていた山葵の花葉。山葵を唐草状に構成している。高彫部分に古風な金色絵を施している。
装剣小道具における色絵の手法はいくつかある。古くは、大仏などにも採られていたように、水銀に金を解かし込んだアマルガムを金属の表面に塗り、後に加熱して水銀を蒸発させることによって表面に金の薄層を残すという手法である。最も多いのは、高彫した表面に、薄い金の板を銀鑞などで焼き付け接着する手法。やはり高彫した表面に、金の薄板を被せ、銀鑞で接着することなく、図像の端部に埋め込むようにして固定させるうっとり色絵もある。現代では電気メッキがあるも、それらよりはるかに厚手の処理とされている。
 さてこの笄だがどのような手法だろうか。色絵は高彫された上部のみであることから、うっとり色絵ではない。擦れている部分の観察では、金板を焼き付ける手法よりもかなり薄手であるが、金層に厚みが感じられる。アマルガムを利用した技法とは思われず、焼き付けの古法と推考したい。