鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

鉄線花図鐔 古美濃 Komino Tsuba

2014-09-24 | 鍔の歴史
鉄線花図鐔 古美濃


鉄線花図鐔 古美濃

 古美濃の高彫様式になる作。極端な深彫の下地として魚子地を打ち施し、鉄線の枝と花は際端を削ぐように仕立てており、文様がこれによって一層高く浮かび上がって見える。その高彫された花の部分に金の色絵が施されている。表面が擦れて剥離しており、うっとり色絵のように比較的厚手の金板が処方されていることが判る。だが焼き付けは完全には施されていないのであろう、わずかだが接着している用に見える部分と完全に剥がれている部分がある。ではうっとり色絵と断定してよいのだろうか。端部の処理を見ると、うっとり色絵の特長でもある金板を食い込ませた様子が強くもない。実はこのように、どちらとも判断できない技法による色絵が多く存在するのである。考えてみれば、金工作品とは、技法を展覧する場ではなく、金の装飾が効果的に為されれば良いというだけで、良い方法が見つかればその技法を採り入れてみようと考える職人もいるだろう。高彫色絵の一部が接着しているだけでも、うっとりより剥がれにくくなり、それで充分であったのだろう。