岩田亨の短歌工房 -斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・短歌・日本語-

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佐藤佐太郎46歳:空の光の渦を詠う:飛行機の窓より

2010年09月25日 23時59分59秒 | 佐藤佐太郎の短歌を読む
・おぼおぼと空にうかべる白き雲光の渦となりて近づく・

 「地表」所収。1955年(昭和30年)作。


 いわゆる「機上詠」である。飛行機に乗りながら雲をみている。下の句の「光の渦となりて近づく」が一首の中心だろう。


 「おぼおぼとした雲」が「光の渦」となるまで時間の経過があり、変化のさまが劇的である。それは、下の句の印象鮮明な表現があるからである。


 この変化が「序・破・急」の「破」であり、「起・承・転・結」の「転」である。

 こういう独特の技法が、岡井隆をして「あれ、そうなるの?」と言わしめたのであり、下の句の重さが一首の重量感を出している。


 その重量感に透明感があるのが、佐太郎短歌の特徴のひとつであり、斎藤茂吉との違いのひとつ。


 それはまた「おぼおぼと」という「虚語」による静かな詠い起こしと、下の句で景を的確に捉えているところから来ている。



 余談になるが、紹介済みの「河口のしずけさ」「北上の山塊」「都市の延長」の歌も機上詠」である。





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