岩田亨の短歌工房 -斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・短歌・日本語-

短歌・日本語・斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・社会・歴史について考える

芋の葉の露の歌:長塚節の短歌

2010年06月04日 23時59分59秒 | 私が選んだ近現代の短歌
・芋の葉にこぼるる玉のこぼれこぼれ小芋は白く凝りつつあらん・

 「長塚節歌集」所収。「凝る」は「かたまる」の意で、この場合は「育っているだろう」ということ。

 上の句で実景を表現し、下の句で作者の連想を表現している。この下の句に作者の感受の独自性がある。透明感とさわやかさがある。目に見えたものだけでなく、その奥にあるものをズバリとつかみ取ったようなところがある。

 そこに伊藤左千夫との差異と、斎藤茂吉との共通点を僕は見るのである。

 長塚節の「写生論」は、「客観的描写を主観表現の方便とせず、客観的描写を中心に据えながら、新を求めて工夫すべきである。」というものであるが、上の句(実景)が中心となり、下の句の連想で新を求めているといえよう。

 「生命の急所に踏み込んで捉える」と子規の写生論を引用した斎藤茂吉との継続性がみられる。

 「選歌の師:伊藤左千夫・本来的な師:長塚節」と呼んだ斎藤茂吉の言葉の意味が、よく分かる作品である。





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