岩田亨の短歌工房 -斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・短歌・日本語-

短歌・日本語・斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・社会・歴史について考える

東日本大震災の漁師の歌(現代歌人協会編)『東日本害震災歌集』より(1)

2021年11月12日 10時58分21秒 | 私が選んだ近現代の短歌
・結界はいずこぞ妻子奪いたる青澄む海に漁師頭(ず)を垂る
                    青木陽子作(国民文学)
 2011年3月11日の東日本大震災は12都道府県で18.425人の死者、行方不明者を出した。

 掲出の一首は死者を悼む作品だ。結界とは「ある特定の場所へ災いを招かないために作られる宗教的な線引き」(注連縄や葬儀の幕がそれにあたる)。

 震災に妻子を奪われた漁師。男性だがその漁師が、青く澄んだ海に向かって、頭を下げている。祈りか落胆かはわからない。

 作者はそれを目撃して作品化した。「結界はいずこ」とあるからには、作者は祈りを捧げているのだろう。

 これ以上の説明は無用である。静かな祈りを捧げたい。

 『東日本大震災歌集』でひときわ目を引く作品だ

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