「九条歌人の会」作品集「憲法を詠む」から。
・事あらば先ずは兵戈と愚かにもホルムズ海峡血に染める気か(奈良達夫)
兵戈は(へいか)と読む。兵は軍隊、戈は武器の一種である。軍隊に頼った安全保障を「へいか」と断ずる。下の句に臨場感がある。
・あの時なら止められたんだ この次の元号の世の子らが言わんか(石本一美)
ここ十数年は「歴史の転換点」だったと・のちの世に言われるだろう。戦前の十数年のように。歴史の審判に耐えうる、言動や行動が必要だろう。
・ゆるぎない事実をつきつけたっている原爆ドームは世紀をこえて(大川史香)
「ゆるぎない事実」とは、戦争による被ばくである。サラリとした表現だが、重いテーマの作品化に成功している。
・手を引かれ火の粉くぐりし空襲の記憶あたらし夏がまた来る(長勝昭)
空襲体験の歌である。70年以上前だが、忘れ得ぬ体験なのであろう。「夏がまた来る」と言う表現は何気ないものだが、切実感がある。
・戦争になだれゆく日が目に浮かぶ憲法九条壊れたるのち(北川泰三)
日本はどこへ行くのか。考えねばならぬことだろう。