・禽獣の死は悼(いた)たまるることなくて岩のあひだに骨片乾く
「彩紅帖」所収。
禽獣は「鳥や獣の類」。獣の死はだれも悼まずに「骨片」が野ざらしになる。「岩のあひだ」だから、かなり強い語調の作品である。尾崎左永子の作品の特長のひとつは、この強さ、鋭さにある。
かつて僕は、斎藤茂吉の作品を「黒糖」に例え、佐藤佐太郎の作品を「グラニュー糖」に例えたことがある。尾崎左永子の作品は「鋭さ」に特長がある。佐藤佐太郎門下の「新」である。
サバンナの動物の白骨、街で見かける犬猫の轢死体。真にいたましいがそれを強い語調で作品化した。「アララギ系」としては素材も新しい。また「乾いた美しさ」がある。
かつて僕はこの歌を「鳥の骨片」と勘違いして反発を感じた。そして詠んだ歌。
・幾百の鳥の飛び交うこの森にいまだみぬものそのはかどころ「夜の林檎」
「確かにそうだと手を打った」と批評したのは「運河」の堀山庄次氏。
だがこの反発は僕の短見だった。この歌は尾崎左永子の代表作のひとつだ。