岩田亨の短歌工房 -斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・短歌・日本語-

短歌・日本語・斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・社会・歴史について考える

禽獣の死の歌:尾崎左永子の短歌

2022年08月27日 01時37分16秒 | 尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む
・禽獣の死は悼(いた)たまるることなくて岩のあひだに骨片乾く
「彩紅帖」所収。

 禽獣は「鳥や獣の類」。獣の死はだれも悼まずに「骨片」が野ざらしになる。「岩のあひだ」だから、かなり強い語調の作品である。尾崎左永子の作品の特長のひとつは、この強さ、鋭さにある。

 かつて僕は、斎藤茂吉の作品を「黒糖」に例え、佐藤佐太郎の作品を「グラニュー糖」に例えたことがある。尾崎左永子の作品は「鋭さ」に特長がある。佐藤佐太郎門下の「新」である。

 サバンナの動物の白骨、街で見かける犬猫の轢死体。真にいたましいがそれを強い語調で作品化した。「アララギ系」としては素材も新しい。また「乾いた美しさ」がある。

 かつて僕はこの歌を「鳥の骨片」と勘違いして反発を感じた。そして詠んだ歌。

・幾百の鳥の飛び交うこの森にいまだみぬものそのはかどころ「夜の林檎」
 「確かにそうだと手を打った」と批評したのは「運河」の堀山庄次氏。

 だがこの反発は僕の短見だった。この歌は尾崎左永子の代表作のひとつだ。



この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 目に見えぬ不安の歌:尾崎左... | トップ | 僕が国葬に反対する理由(7つ... »
最新の画像もっと見る

尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む」カテゴリの最新記事