岩田亨の短歌工房 -斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・短歌・日本語-

短歌・日本語・斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・社会・歴史について考える

佐藤佐太郎の斬新さ:角川「短歌」10月号に寄稿

2013年09月23日 23時59分59秒 | 総合誌・雑誌の記事や特集から
佐太郎短歌の斬新さ(5首鑑賞)

1、鋪道には何も通らぬひとときが折々ありぬ硝子戸のそと「歩道」

2、戦はそこにあるかと思うまで悲し曇のはての夕焼「帰潮」

3、氷塊のせめぐ隆起は限りなしそこはかとなく青のたつまで「冬木」

4、冬の日の目に満つる海あるときは一つの波に海はかくるる「開冬」

5、杖ひきて日々遊歩道ゆきし人このごろ見ずと何時人は言ふ「星宿」

 この5首で「佐太郎短歌の斬新さ」が語り尽くせると思う。佐太郎の青年時代は産業革命を経た時期だった。そこで佐太郎は、積極的に都市を詠った。1、がそれである。しかも見えない時間を切り取っている。当時の「アララギ」では非常に珍しかった。

 佐太郎の短歌は、戦後の一時期「思想性、社会性の欠如」を指摘された。しかし2、のように「中国内戦の激化」をきっかけとした作品も残している。

 また「音楽性の高さ」も、佐太郎短歌の特徴の一つだ。3、の歌のように「虚語」が「音楽性」を担保している。

 また「写実派」では、土屋文明とは大きく違う。フィクションを許容している。4の作品がそうだ。季節は春から秋、それも複数の記憶に基づいている。

 そして最後に、愚痴やボヤキのない「老境の歌」なんと自らを厳しいまでに直視しているのだろうか。

 言葉遣いも「象徴詩」のそれに近い。いわば「写実派らしからぬ写実派」なのだ。

    歌書「斎藤茂吉と佐藤佐太郎ー20世紀の抒情詩人ー」は、
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