。青々と晴れほとほりたる中空(なかぞら)に夕かげり顕つときは寂しも
「アンソロジー海雲」所収。『群丘』
この作品には自註がある。
「冬の晴れた夕空に影のやうなもの見えることがある。底もなく晴れた青空に見えるのを私ははじめて注意して一首にした。森鷗外の『大発見』といふ小説があるが私にとってかういうものも発見であった」
短歌は抒情詩だが「発見」が必要と「運河の会」でよくいわれた。年を重ねても発見はたえずある。逆に言えば「発見」が短歌作品の素材となる。「小さな発見」「小さな感動」がまず必要なのだ。石川啄木は「命の一秒」と呼んだ。
また「個別具体的」な「場所」が「捨象」されている。
佐藤佐太郎の言う「表現の限定」だ。