・かの人は風に形があると言う街路樹の葉の騒ぐ真昼間・ 「運河」
「作品批評」でとりあげられた。風を巧みに表現した油彩画を思い出しつつ詠んだ一首。
・テーブルに朝の光の差すところ折れた鉛筆さむざむとあれ・ 「星座」
「朝の光のあたたかさ」と「折れた鉛筆のさむざむとしたようす」の対比を詠んでみた。
・逆光に透明感を増す水の流れに沿いて河原を歩く・ 「運河」
透明感と冷たさを詠み込んでみた。「河原を歩く」というのは高校時代の記憶にもとづいている。
・天の川冬の夜空を貫いてオリオンの背は冷たからんに・ 「運河」
天空を大きく捉えていると好意的にとってくれる方もいたが、僕としてはいま一つ何かが足りないと思っている。
・遠近の感覚なしに見る不思議星宿は徐々に位置を変えゆく・ 「運河」
星宿は星座の雅語。佐太郎の歌集にも同名の歌集がある。季節に関係なく夜空を見上げるのは、高校時代に地学部の同級生にさそわれて天体望遠鏡を覗き込んだのがきっかけだった。