「遠き雷鳴」5首抄
・わが涙乾かんほどに風つよく形定まらぬ雲動きをり・(以下「短歌」9月号より)
雲の形が変わっていくのを見るのには飽きません。
・限りあるものの命をまざまざと見せて倒れし公孫樹の古木(こぼく)・
鶴が岡八幡宮のイチョウが倒れたのは記憶に新しいところです。
・あら草が夕日を受けて揺れゐたり積まれし建設残土の上に
王禅寺という古刹の近くに「建設残土受入」の場所がありますが、なぜか印象的なのです。
・公園の遊具取り払われし夜水銀灯の光つめたし・
上の句、リズムを少し崩して不安感のようなものが出たでしょうか。
・わが内の何かが変わりゆく思ひ抑えて遠き雷鳴を聞く。
これが一連の表題「遠き雷鳴」のもととなった作品です。屋外で聞く遠き雷鳴は何か暗示的です。本当は危険なことだそうですが。
これらの作品は、来年上梓する第二歌集「オリオンの剣(つるぎ)」に収録します。